Vol.71
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左から2人目が創設パートナーの川村俊雄弁護士。弁護士法人堂島法律事務所(東京)および客員弁護士2名を合わせて25名の陣容

左から2人目が創設パートナーの川村俊雄弁護士。弁護士法人堂島法律事務所(東京)および客員弁護士2名を合わせて25名の陣容

STYLE OF WORK

#131

堂島法律事務所

“市民派”を出発点に歴史を重ねた法律事務所。個人の悩みにも企業間紛争にも“総合力”で挑む

大阪空港訴訟など市民側で事件に関与

大阪近圏の他事務所に先駆けて、約半世紀前より〝パートナー型共同〞スタイルで事務所運営をしてきた堂島法律事務所。

「各弁護士が得意分野で腕を磨き、知識や経験を事務所で共有、承継する」「各自の力を結集して事務所としての総合力を高め、迅速かつ機動的に、より適切な法的サービスを提供する」を基本的な理念として、法律家としてのプロフェッショナリズムを追求してきた。

同事務所の特色について、奥津周弁護士が教えてくれた。

「事務所を設立したのは、木村保男弁護士(故人)、的場悠起弁護士と川村俊雄弁護士。木村が堺の商家出身であったことから、最初は主に地場の個人商店主などを顧客とした仕事が多かったようです。いわば当事務所の出発点は、一般民事や市民事件にありました」

それを象徴するのが、伊丹空港の騒音問題として知られる「大阪空港訴訟」だ。

「市民側で、集団訴訟の弁護団長を務めたのが木村でした。行政判例百選、環境判例百選などにも載る著名な訴訟で、人格権、環境権に基づく民事上の請求が認められるかが争点となったもの。環境権の創設に当時、その裁判が非常に大きな役割を果たしたといわれています。また、元裁判官で、創設パートナーの一人である川村弁護士も、1973年に『環境権』という有名な論文を発表するなど、まさに市民の権利の一つである環境権の提唱、理論的深化に、当事務所が大きく寄与したと自負しています」(奥津弁護士)

堂島法律事務所
弁護士のデスクスペースはかなり広くとられている。なおアソシエイトの席は、一定期間で席替えを行い、全パートナーとまんべんなく近くの席で仕事をする機会を設けている

第2世代が打ち建てた柱

そのように〝市民派の事務所〞として歴史を重ねてきた同事務所に、30期代の中井康之弁護士や福田健次弁護士など〝第2世代〞が参画。徐々に企業法務や事業再生などのビジネス案件も増えていった。全国倒産処理弁護士ネットワーク理事長や事業再生研究機構理事なども務める中井弁護士は、大阪ワールドトレードセンタービルディング、家電量販店ニノミヤをはじめとする多くの企業の更生管財人、量販店マイカルや足袋靴下製造販売の福助などの民事再生申立代理人を務めてきた人物だ。松尾洋輔弁護士は言う。

「2020年春から改正民法が施行されますが、中井はその法制審議会の弁護士委員2名のうちの一人。中井が会議に出るためのバックアップを大阪弁護士会のほか、我々も行ってきました。所内で勉強会を開き、次回法制審議会の論点をメンバー間で揉むなどしていたので、おそらく他事務所よりもいち早く改正民法に関する勉強ができています。ひいては、それがお客さまの役にも立っているのではないでしょうか。事業再生、倒産処理についてもトップランナーとなる弁護士から、多くのことを学ぶ機会に恵まれた環境にあると考えます」

近年は上場企業などの顧問先からの相談、事業再生、М&A、金商法関連の案件など企業法務の比重が高まっている。同事務所の「大阪空港訴訟」における環境への姿勢、知見の深さが評価され、公害関連事件におけるメーカー側代理人を務めるなど、企業法務分野の知見に加え、事務所の特色も生かした業務分野を手がけている。

業務範囲がシフトしても、「市民派の事務所である」という原点、弁護士としての在り様は、脈々と受け継がれている。

「各パートナーの顧客には個人や中小企業オーナーもたくさんいます。他事務所の弁護士と協働して弁護団活動に注力する者もいます。もちろん、パートナーによって、そうした一般民事と企業法務の案件の割合は異なりますが、それぞれが〝市民の事件〞を非常に大切に考えています。〝一通りのことができてこそ弁護士である〞というのが、我々の共通の姿勢です」(松尾弁護士)

このように、〝一通りのことができる〞ことに期待して入所したのが、3年目のアソシエイト、王宣麟弁護士だ。

「入所まだ間もない頃、山本淳弁護士に声をかけていただき、発達障がいとクレプトマニア(窃盗症)に悩む方の、執行猶予中の裁判に関与しました。数年前に山本弁護士が国選で弁護をしたことをきっかけに、現在まで縁が続いている方でした。彼は病を自覚していて非常に苦しんでおり、私も彼をその苦しみから解放してあげたいと強く思いました。窃盗症を治療できる機関を探し、保釈して入院させ、自立訓練施設を紹介。一審で実刑判決、控訴審で戦い、執行猶予を狙ったものの控訴棄却。窃盗症は入院治療で治せていたので、彼も我々も悔しい思いをしましたが、控訴審での判決が下りた日、『自分の病(発達障がい)と向き合えるよう、刑務所で頑張ってみる。そう思えたのは先生たちのおかげ』と言ってくれました。彼がそのように、前向きに人生を捉えてくれたことが本当にうれしかったです」

「うちは〝M&Aから刑事まで〞幅広く対応できることが誇りです」と微笑む、奥津弁護士。なお、その奥津弁護士は「The Best Lawyers in Japan(刑事弁護分野)」に、14年から6年連続で選出されているつわものだ。

王弁護士は言う。

「私は大阪弁護士会で子供の権利委員会に所属しており、児童虐待の問題に取り組んでいきたいと思っています。一方で、中国語が話せるので、中国法や中国語を用いて日本法を処理するといった分野も、自分の強みとしていきたい。パートナーのそばで、刑事事件もビジネス案件もできる限り経験させてもらい、弁護士としての高みを目指していきたいです」

大阪・東京の2拠点で永続的な事務所運営

  • 堂島法律事務所
    隔年で開催している事務所旅行。2019年の行き先は金沢
  • 堂島法律事務所
    エントランスには、創設パートナーの木村弁護士が、クライアントからいただいて大切にしていた兵馬俑のレプリカが飾られる

現在、同事務所の運営は中堅となる40期代後半から50期代の〝第3世代〞に移行しつつある。

そうしたなか山本弁護士は、弁護士法人堂島法律事務所(東京)の立ち上げに携わった。

「東京事務所は当初こそ、大阪に拠点がある顧客の、東京での拠点の相談対応などからスタートしていますが、現在は東京事務所独自の顧客が増え、大阪とは関係のない業務も拡大しています。基本的に、従来顧客からの紹介で案件が増えていますが、セミナーなどの開催を通じて、そこから仕事につながるケースも出てきました。東京事務所のメンバーも、当事務所の精神と仕事の進め方――各弁護士が得意分野を持ち、総合力でサポートする――を、東京でより一層広めていくことを目標としています」(山本弁護士)

なおアソシエイトの採用についても、〝第3世代〞から下の弁護士が中心となって行っている。

「10〜20年後、この事務所を運営するのは若手・中堅であるという考えから、ベテラン弁護士はあえて採用にタッチしない方針で進めています。ですからアソシエイトの採用面接には、例えば王弁護士にも入ってもらっています」と、奥津弁護士。

奥津弁護士に、事務所を今後どう発展させていきたいかを尋ねた。

「我々は、創設パートナーも、〝第2世代〞も、常に先を見て事務所を運営してきました。これからは40〜50期代が中心となって事務所を切り盛りしていくことになります。いかにして従来の顧客を維持し、かつ発展させていくかを、中堅、若手パートナーが中心となって、議論を重ねています。それにあたっては、我々自身の弁護士としての研鑽はもちろんですが、60期代の若手について、留学や企業出向など、外部経験の機会を多く提供し、それぞれが得意分野を見つけ、磨いてもらうことが大切だと考えています。我々は、そのための投資、支援、場づくりへの尽力は惜しまず行うことを共通認識として持っています。そうして若手を育成しながら、上手に世代交代を行い、先見の明ある堂島法律事務所を一層発展させていきたいというのが、全員の共通の思いなのです」

堂島法律事務所
インタビューに参加いただいた5名。左から山本淳弁護士(51期)、松尾洋輔弁護士(59期)、富山聡子弁護士(57期)、王宣麟弁護士(70期)、奥津周弁護士(57期)

Editor's Focus!

同事務所オリジナルの訴訟事件用資料封筒。事件名、保全、一審、二審、期日などが記載できるようになっており、状況が即座に確認できる。執務スペースに入ると、パンパンに膨らんだ同封筒が所狭しと置かれていたのが印象的

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