表参道総合法律事務所は、川添丈弁護士、石村善哉弁護士、故・河野憲壯弁護士が中心となって2010年に設立した事務所だ。その特徴を、川添弁護士、余頃桂介弁護士、金川征司弁護士に聞いた。
「専門性を持った各パートナーが、日頃は各自独立して仕事を進め、機会に応じて協業することでクライアントに質の高いサービスを提供できることが私たちの特徴です」
全弁護士が企業法務を基本の取り扱い分野としているが、例えば川添弁護士は企業法務を軸として、各種訴訟、不動産取引、損害賠償、および個人向け事件も数多く手がける。なお同弁護士は、古田敦也氏、藤井秀悟氏、馬原孝浩氏、丸佳浩氏といったプロ野球選手の代理人を務めることでも知られる。
「ほかに公益財団法人日本スポーツ仲裁機構の仲裁人として、7件の仲裁案件に関与しています。スポーツ関連は、設立当初から、河野憲壯弁護士と『やってみたいね』ということで始めたもの。以来、プロ野球選手の代理人は金川弁護士や余頃弁護士も務めてくれていますし、恒石直和弁護士はプロ野球選手の代理人だけでなく、日本スポーツ法学会や第一東京弁護士会のスポーツ法研究部会などに所属し、スポーツ団体のガバナンスに関する講演や、スポーツ団体ガバナンスコードの制定について、スポーツ庁にパブリックコメントの提出を行ったり、スポーツ庁の技術審査委員会のメンバーを務めたりもしています。そのように、元々は自分が好きで始めた分野、ご縁があって尽力してきた分野ですが、事務所の仲間が引き継ぎ、広げていってくれているのは嬉しい限りです」(川添弁護士)
また石村弁護士は、渉外案件やエンターテインメント関連、知的財産関連の訴訟やライセンシング、プライベートエクイティなど、金川弁護士は、M&A、事業再生・事業承継、倒産事件などが得意。近年は、再生エネルギー関連企業の案件に関与する機会も多いそうだ。余頃弁護士は、日弁連や東京弁護士会の民事介入暴力対策に関する委員会に所属し、他事務所の弁護士と弁護団を組み、被害者の救済にあたっている。
「私が入所したのは、河野憲壯弁護士に誘っていただいたことがきっかけです。河野弁護士は、日弁連民暴委員会において委員長を務めるなど、民暴対策分野の最前線で問題解決に尽力された方です。独立開業して軌道に乗り始めた時期でしたが、尊敬する弁護士からのお声がけだったので、迷わず飛びこみました。弁護士登録以来、民暴対策への取り組みは、私の大事な軸の一つとして持ち続けています。なかでも特殊詐欺は、年間被害額が300億~400億円で推移していた時期もあり、被害救済に力を入れています。指定暴力団の関与が疑われるケースが多いため、組長の責任追及を行い、被害回復を図るといった活動をしています。当事務所では、稗田さやか弁護士も東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会の委員として同じ活動をしています」(余頃弁護士)
そのように、同事務所の弁護士の得意分野や活動内容を聞くと、企業法務という共通項以外は一見バラバラに思える。川添弁護士は、「お互いの売り上げをつまびらかにしたこともないですね」と笑う。しかし、それぞれの得意・専門分野がそのまま事務所の“柱”であり、協働を通して知恵と技術を出し合うことで、各“柱”を一層太くしていく――それが同事務所のプレゼンスにつながっているようだ。