Vol.76-77
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前列左より、河野壮志弁護士(73期)、川添 丈弁護士(43期)、石村善哉弁護士(45期)、稗田さやか弁護士(60期)。 後列左より、恒石直和弁護士(64期)、余頃桂介弁護士(60期)、金川征司弁護士(60期)、上芝直史弁護士(61期)

前列左より、河野壮志弁護士(73期)、川添 丈弁護士(43期)、石村善哉弁護士(45期)、稗田さやか弁護士(60期)。 後列左より、恒石直和弁護士(64期)、余頃桂介弁護士(60期)、金川征司弁護士(60期)、上芝直史弁護士(61期)

STYLE OF WORK

#149

表参道総合法律事務所

企業法務、M&A、知財、民暴対策など多様なスペシャリストが集結

所属弁護士の数だけ「事務所の柱」がある

表参道総合法律事務所は、川添丈弁護士、石村善哉弁護士、故・河野憲壯弁護士が中心となって2010年に設立した事務所だ。その特徴を、川添弁護士、余頃桂介弁護士、金川征司弁護士に聞いた。

「専門性を持った各パートナーが、日頃は各自独立して仕事を進め、機会に応じて協業することでクライアントに質の高いサービスを提供できることが私たちの特徴です」

全弁護士が企業法務を基本の取り扱い分野としているが、例えば川添弁護士は企業法務を軸として、各種訴訟、不動産取引、損害賠償、および個人向け事件も数多く手がける。なお同弁護士は、古田敦也氏、藤井秀悟氏、馬原孝浩氏、丸佳浩氏といったプロ野球選手の代理人を務めることでも知られる。

「ほかに公益財団法人日本スポーツ仲裁機構の仲裁人として、7件の仲裁案件に関与しています。スポーツ関連は、設立当初から、河野憲壯弁護士と『やってみたいね』ということで始めたもの。以来、プロ野球選手の代理人は金川弁護士や余頃弁護士も務めてくれていますし、恒石直和弁護士はプロ野球選手の代理人だけでなく、日本スポーツ法学会や第一東京弁護士会のスポーツ法研究部会などに所属し、スポーツ団体のガバナンスに関する講演や、スポーツ団体ガバナンスコードの制定について、スポーツ庁にパブリックコメントの提出を行ったり、スポーツ庁の技術審査委員会のメンバーを務めたりもしています。そのように、元々は自分が好きで始めた分野、ご縁があって尽力してきた分野ですが、事務所の仲間が引き継ぎ、広げていってくれているのは嬉しい限りです」(川添弁護士)

また石村弁護士は、渉外案件やエンターテインメント関連、知的財産関連の訴訟やライセンシング、プライベートエクイティなど、金川弁護士は、M&A、事業再生・事業承継、倒産事件などが得意。近年は、再生エネルギー関連企業の案件に関与する機会も多いそうだ。余頃弁護士は、日弁連や東京弁護士会の民事介入暴力対策に関する委員会に所属し、他事務所の弁護士と弁護団を組み、被害者の救済にあたっている。

「私が入所したのは、河野憲壯弁護士に誘っていただいたことがきっかけです。河野弁護士は、日弁連民暴委員会において委員長を務めるなど、民暴対策分野の最前線で問題解決に尽力された方です。独立開業して軌道に乗り始めた時期でしたが、尊敬する弁護士からのお声がけだったので、迷わず飛びこみました。弁護士登録以来、民暴対策への取り組みは、私の大事な軸の一つとして持ち続けています。なかでも特殊詐欺は、年間被害額が300億~400億円で推移していた時期もあり、被害救済に力を入れています。指定暴力団の関与が疑われるケースが多いため、組長の責任追及を行い、被害回復を図るといった活動をしています。当事務所では、稗田さやか弁護士も東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会の委員として同じ活動をしています」(余頃弁護士)

そのように、同事務所の弁護士の得意分野や活動内容を聞くと、企業法務という共通項以外は一見バラバラに思える。川添弁護士は、「お互いの売り上げをつまびらかにしたこともないですね」と笑う。しかし、それぞれの得意・専門分野がそのまま事務所の“柱”であり、協働を通して知恵と技術を出し合うことで、各“柱”を一層太くしていく――それが同事務所のプレゼンスにつながっているようだ。

表参道総合法律事務所
同事務所では、サッカーやプロ野球などスポーツ関連分野に関与する機会が多い。プロ野球選手の代理人を務めた際、記念にもらったサインボールが所内に置かれていた

「人を大事に」を基本として

同事務所では、月に1回のパートナー会議のあとにアソシエイトを加えた勉強会を開催している。

「勉強会のテーマは、持ち回り。それぞれの得意・専門分野における法改正などの最新情報を共有、担当事件について意見を求めることもあります。異なる視点からアドバイスをもらうことで新たな解決策の糸口が見えてきたり、自分が経験したことのない分野の知識を増やしたりと、有意義な時間になっています」(金川弁護士)

余頃弁護士は、そうした日頃の交流も含めて、同事務所を「アットホームで居心地がいい」と話す。

「加えて、表現が難しいのですが……どのパートナーも、あまり収益にこだわらないタイプで、事務所としての売り上げに目くじらを立てるところが一切ないのです。そのおかげで、いかにしてクライアントによいサービスを提供するかという点に注力できているのではないかと、自分自身の仕事を通じて感じています」

金川弁護士も「各自が独り立ちしているということを前提にしており、個々を尊重する風土がある。パートナーは固定費さえ納めれば、あとは基本的に自由。アソシエイトについても、割り振られた仕事に責任をもって臨んでもらえれば、あとは自由。自分のしたい仕事に時間を使ってもらいます。決してハードワークを強いるということも、上から命令口調で厳しく指導するということもない、極めて穏やかな職場です」と語る。

「組織の中で、さながら“修行”のごとくバリバリ経験を積んで、がっちりお金を稼ぎたいというような発想ではなく、余頃弁護士が言うようにアットホームな雰囲気の中で、自身のライフワークとして、人生の一場面をここに預けるという気持ちで働くことを選んでくれた人――そんな弁護士が集っていると思います」(川添弁護士)

ちなみに同事務所では、アソシエイトのキャリアを4段階で考えている。まず、一通りの案件の回し方とクライアントへの対応を覚えるのに約3年。そのあとは固定給との調整で歩合を決め、次に完全歩合とし、経費負担をするパートナーになるというかたちだ。川添弁護士は言う。

「アソシエイトから段階を踏んで、この事務所で仲間として長くやっていける弁護士を育てたいという思いが一番です。しかし、成長の速度は人それぞれ。実際に3年で独り立ちという期限を設けているわけでもないし、4年目からはこうしてほしいなど、一方的に押し付けることもしません。本人の生き方、働き方、弁護士として成し遂げたいことなどを話し合い、その人が一番伸びる方法で、じっくりと成長を見守っていきたい」

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今年1月に河野壮志弁護士が入所したことにより、同事務所の弁護士は8名となった。中堅・ベテラン勢全員で、教育担当を務めている

絆やご縁を大事に緩やかに発展

金川弁護士と余頃弁護士が、事務所の今後について、次のように話してくれた。

「各弁護士が大事にしてきたクライアントと、これからも大事にお付き合いを継続していくことが第一です。その延長線上で、ご縁が広がり、緩やかに発展していけたらいいですね。今の事務所の雰囲気を保ちながら、もしもこの雰囲気に合う弁護士がいれば、パートナーとして参画いただき、それでまた“柱”となる事務所の取り扱い分野が増えていくというのが理想的。いつまでに弁護士何名を増やしたいという数値目標ありきで、事務所の運営を考えているわけではないことも、当事務所の特徴かもしれません」(両弁護士)

川添弁護士から、若手弁護士にメッセージをいただいた。

「私は50年以上前からサッカーの魅力に取りつかれて、現在も東京都のシニアリーグでプレーを続けています。実のところスポーツ関連の仕事は、弁護士業務とは関係なく、利害関係もない、サッカー好きという共通項でつながっている方々からの紹介で広がりました。そのように、仕事とは直接関係がないことでも、人との絆を大事にしていくことで、自然と自分が役に立てる場が見つかっていくのではないかと考えています。人との絆を大事にするということは、それが友人であれクライアントであれ、まずきちんと相手の思いを聞けるということ。自分の考えや意見を主張するよりも、まず相手を理解しようと努め、信頼していただけることが、弁護士にとって大切なことだと思います」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

Editor's Focus!

川添弁護士の執務スペースにあるミニ書棚。自著や、スポーツ・リスクマネジメントなど、仕事に関連する書籍のほか、『オシムの言葉』『監督ジーコ、語る』といった本の背表紙も目立つのが、50年以上サッカーを続けている川添弁護士ならでは、だろうか。

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