「企業法務のなかでも、人に関する労働分野は面白く、やりがいがある」と考えて同事務所に入所した60~70期台の若手弁護士は多い。彼らが入所した後は、先輩弁護士と2名体制か、多くても3名体制で各事案に携わる。それは訴訟でも団交事案でも同様だ。
また、同事務所では個人事件の受任が自由で、経費納入も不要。留学や任期付き公務員への応募といったキャリアプランの描き方も、本人の意思と決断を尊重する。
「そもそも労働分野はコンフリクトが起きにくいので、若手弁護士も自由に仕事を受けやすいのです。“自分のお客さまを持つことは大事”という考え方が浸透していて、それぞれが忙しいなかでも、仕事の幅を広げるための活動を積極的に行っているようです。例えば、社会保険労務士など他の士業との勉強会や交流会に出かけて人脈を広げ、そこから紹介される案件も多々。労働事件をきっかけに家事事件の相談を受け、仕事の幅を広げている若手弁護士もたくさんいます」(木下弁護士)
“世代をつなぐ”の理念どおり、「事務所開設以来30年以上のお付き合い」という顧客割合は高い。
「今、当事務所の一番若い弁護士は30代前半。その弁護士が60歳を超えるまで、この事務所が継続していることを願っています。そのためには、今あるお客さまとの信頼関係は当然大切ですが、ベンチャー・スタートアップ企業の仕事も積極的に進めていきたい。新たなビジネスや世の中の動きを学び、そこで起こり得る労働問題と問題解決のノウハウを、どこよりも早く深く積み上げられる事務所でありたいですね」(木下弁護士・浅井弁護士)
最後に、両弁護士に、これから法曹界を目指す方や若手弁護士へのアドバイスをいただいた。
「“判例の勉強の仕方”について、事実に興味を持つ、事実を読み取ることを大切にしてほしい。例えば、就業規則の不利益変更の判決を読む時、規範との当てはめだけで判断しないことです。どんな会社でどんな人間関係で何が起きたのかを頭に入れて初めて、その判決の意味がわかる。事実は光の当て方でいくらでも変わっていくものですから、誰かが要約したものだけ見て納得するのではなく“事実の読み方”をぜひ学んでほしい。効率よく勉強しようとせず、本質に迫る勉強をする。そして、書く力を鍛えること。他人が書いたもの、他人がまとめたものを信用せず、基本書を一から体系立てて読み、そこから自分で表現できることを求める。そのような勉強の仕方で、弁護士に本当に必要な基礎力を磨いてほしいと思います」
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。