こうした背景ゆえに、顧問先の業種や規模、相談内容は多種多様だ。比較的多いのは中堅どころの不動産やIT系企業だが、特定の業種や取扱分野に限らないため、弁護士としての守備範囲は自然と広くなる。守備範囲の広さを示す例を、牧弁護士が教えてくれた。
「デッドコピーを扱ったとして不正競争防止法違反で複数の会社が訴訟提起された事件があり、うち1社から訴訟対応の依頼を受けました。当時、知的財産関連の訴訟の経験は少なかったものの、関係者の協力を得ながら、多数の写真や映像を入手するなどして『デッドコピーではない』と主張できる証拠を集めるなど、徹底的に調査を行いました。結果、請求棄却の判決を勝ち取りました」
労務関係の案件も多いという。
「始業時刻前のタイムカードの打刻時刻をもって労働時間と認定できるかが争われた訴訟で被告会社側の代理人として対応し、タイムカードの打刻時間には指揮命令下に置かれていたとは認められないとして請求棄却の判決を得ています。顧問先の作業場に足を運び、タイムカード打刻機の設置場所、作業場所、休憩場所などを描き込んだ詳細な図面を作成し、裁判に勝つための証拠を収集しました」
分野を問わず、挑戦していくことが同事務所の特徴。「できないこと・経験がないことは、必要な知識を外から借りるなどしてでも、粘り強く最善の結果を目指す。弁護士全員が“顧問先を死ぬ気で守る”という気概で挑むことが我々のモットーです」と、舟木弁護士。同弁護士は続けて、顧問先とのかかわり方を教えてくれた。
「顧問先が問題社員とのトラブルに遭遇し、難しい対応を迫られた際、社長に代わって当該社員と交渉しました。労務紛争は、最初の対応を間違えると使用者側の勝算が低いので、会社のリスクを最小化し、紛争を未然に防ぐ必要がある。ゆえにアドバイスだけでなく、私自身が本人の話を聞くわけです。弁護士が前に出ることは従業員の心情を逆なでするリスクがありますし、膨大な時間と労力を要します。しかし、それで社長の悩みやストレスが早く解消され、トラブルが避けられるなら本望です」
実際、過去に舟木弁護士が担当した同様の案件は、すべて紛争に発展せずスムーズに解決。経営者からは「そこまでやってくれるのか」と喜ばれているという。
「大阪という土地柄、中小企業が多く、独立した法務組織を持つ顧問先は少ないため“相談者が社長”というケースがかなりあります。ですから我々は社長のパートナーとして、法務はもちろん経営面での相談に乗ることも多いです。弁護士の仕事の多くは“ディフェンス型”ですが、利益をどう生み出していくかなど経営に直結する“オフェンス型”のアドバイスをする機会も多々あり、そこにやりがいを感じています」(舟木弁護士)