22年6月、「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」を政府の関係閣僚会議が決定した。翌23年には点検・見直しが行われるなど、外国人雇用に関する制度・環境の変化は、非常に早い。同事務所では、そうした情報を漏らさず把握、提供することを目的に、独自で外国人雇用分野における複数のデジタルツールを開発・運用している。
「23年には『外国人雇用の法務部クラウド』をリリースしました。最新法律情報の解説動画配信、書式集配布、クライアントから寄せられたQ&Aまとめなど、関連ナレッジを蓄積し、基本的に顧問契約を結んだクライアント限定で公開しています。事件になる前に、私たちが知り得る情報をすべてクライアントに提供する“予防法務2・0”の実践です。“発信型顧問”スタイルと言えますね」
リーガルナレッジをアーカイブし、同ツール上で解決できなかった問題は、個別に相談対応して継続的な顧客深耕を狙う。そうして「単なる“代理人”を超え、クライアントに“次のステージ”に進んでいただくためのサービス提供を目指す」と、杉田弁護士。
「外国人雇用に関する問題解決と、事業発展を合わせたビジネスモデルをクライアントと一緒につくっていくことが、私自身のやりがいです。当事務所の弁護士たちには、『うちは、企業法務の特定分野に業特化したブティックファーム+ナレッジの提供機能を併せ持った事業体。法律事務所ではなく法律を扱えるコンサルティングファームだ』と説明しています」
所属弁護士は、「入管業務と企業法務のスキルが磨けて、外国人雇用分野という新しい渉外法務に携われる事務所はここしかない。この分野のフロントランナーであるという自信と誇りを持って仕事ができている」と語る。
外国人雇用という“業特化型”の法律事務所であるために、企業法務の経験を有する弁護士であっても、スキルの習得には一定の訓練期間が必要となる。同事務所でのキャリアステップを聞いた。
「入所1、2年目は、私や先輩弁護士と一緒に外国人雇用関連の訴訟を担当します。訴訟では入管法や技能実習法などの知識が必須で、それらに関する法律の仕組み、基礎的な用語を習得します。2、3年目は、入管手続きの申請、企業間取引における入管手続きなどの業務を経験します。最初は申請業務を自分で行い、許可・不許可の相場感を身につける。慣れてくれば、事務員が下書きした書類をチェックし、最終判断をする。4、5年目は、クライアントからの日々の相談に対応しつつ、プロジェクト全体をマネジメントする。6年目以降は、本人の希望に応じて、弁護士法人としての雇用か、業務委託を選び、所内で独り立ちしてもらうといったイメージです」
入所後、訴訟を担当する前には、国際人材協力機構や入管協会といった公益財団法人の法定講習を受け、体系的に外国人雇用を学ぶ。
「申請等取次研修会、派遣元責任者講習、監理責任者等講習、職業紹介責任者講習を、勤務時間内に受講してもらいます。先述した、『外国人雇用の法務部クラウド』のセミナーやQ&Aといったお客さま向けのコンテンツは、所属弁護士のeラーニング教材として活用する目的もあって私自身が制作しています。当事務所が対応する個別相談は毎日10を超え、法務部だけに限らず、経営者、人事部からも相談を持ちかけられます。ゆえに、その内容は多種多様です。それは、まさに今起きている外国人雇用における現場の声ですし、そうした問題に対応しつつ蓄積されていく知見は、当事務所の弁護士にとって最新かつ最適な教材にもなっているのです」