Vol.95
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前列左から、綿引万里子弁護士、北尾哲郎弁護士(30期)、長﨑俊樹弁護士(36期)。後列左から、村松裕介弁護士(74期)、近藤直也弁護士(70期)、三好貴子弁護士(54期)、澤田孝悠弁護士(64期)、小原 啓弁護士(68期)、内田清人弁護士(51期)、笹野 司弁護士(59期)、中村竜一弁護士

前列左から、綿引万里子弁護士、北尾哲郎弁護士(30期)、長﨑俊樹弁護士(36期)。後列左から、村松裕介弁護士(74期)、近藤直也弁護士(70期)、三好貴子弁護士(54期)、澤田孝悠弁護士(64期)、小原 啓弁護士(68期)、内田清人弁護士(51期)、笹野 司弁護士(59期)、中村竜一弁護士

STYLE OF WORK

#198

岡村綜合法律事務所

依頼者に寄り添う――真摯な弁護士としての“姿勢”と“人間力”を、後進につなぐ

所内に浸透する〝岡村イズム〟

1960年代前半の日本は高度経済成長期に入り、企業法務という分野が確立され始めた時期でもある。岡村綜合法律事務所は、岡村勲弁護士(11期)が1963年に創設した岡村勲法律事務所を前身とし、〝企業法務の黎明期〟から国内企業の活動を支えるべく法的サポートを提供してきた。顧問先を含めた依頼企業は、メーカー、通信、IT、金融、保険、商社、物流、不動産など多岐にわたり、契約、労務、ガバナンスといった相談対応、訴訟など幅広い案件に携わる。一方で、相続、親族などの家事事件や、経済法事案のほか、社会的耳目を集める刑事事件にも対応する。なお、岡村弁護士は、犯罪被害者の権利実現に尽力したことでも知られた弁護士であり、「全国犯罪被害者の会」の代表を務めていた。犯罪被害者弁護も大切な業務の一つであり、同会の後身である新全国犯罪被害者の会の活動に携わる弁護士もいる。

2026年1月現在、30期台から70期台まで、幅広い世代の弁護士16名が所属している。全員に共通する〝仕事の姿勢〟について、中村竜一弁護士に聞いた。

「私たちが心がけているのは、丁寧かつ誠実に、依頼者を第一に思って仕事をすること。〝心の重荷〟を下ろし、『岡村綜合法律事務所に相談してよかった』と思っていただくことです。そう感じていただくための方法は多々ありますが、単純な例でいえば、〝相手にわかりやすく伝える〟ことです。例えば、遺言は〝いごん〟ではなく〝ゆいごん〟、競売は〝けいばい〟ではなく〝きょうばい〟と、法的な用語をできるだけ依頼者に馴染みやすい言葉に言い換えて伝えています。また、単なる法的助言を行うにとどまらず、その先の行動指針まで提案し、依頼者が自ら納得して前に進めるよう支援する。何よりも、依頼者の気持ちに寄り添い、法律論だけでは解決できない部分にも耳を傾け、その依頼者の〝心の整理〟をお手伝いする。そうした姿勢を、大切にしています」

「弁護士が偉ぶったり、相手を煙に巻くようなことをしてはならない」というのが、岡村弁護士の教え。岡村弁護士は25年2月に逝去されたが、「〝岡村イズム〟は、事務所のカルチャーとして深く根づいています」と、中村弁護士は言葉を添えた。

個人事件受任は自由。責任感醸成のため、むしろ奨励する。働き方も在宅勤務や時短などを活用。“信頼関係”を前提に、柔軟な事務所運営を推進

風通しの良さによる〝一体感〟が強み

新人は、デスクの両隣に席を置いた先輩から丁寧な指導を受ける。

「事務所の方針としても、各弁護士の仕事の取り組み姿勢としても、幅広い分野に挑み、それら一つひとつを高いレベルで実践していくことを目指す」と中村弁護士。とはいえ、あえて強みを聞いてみた。

「北尾哲郎弁護士は大手プラントエンジニアリング企業出身で、業界特有の契約構造や取引慣行に精通しており、海外を含めた大規模プラントエンジニアリングの事件を多く手がけています。また、内田清人弁護士は公正取引委員会で特定任期付職員の経験があり、独占禁止法に詳しいので、これを中心とした事件を相当数取り扱っています。さらには、犯罪被害者等基本法成立のきっかけとなった、岡村弁護士が始めた犯罪被害者の権利確立のための活動は、米田龍玄弁護士を中心に引き継ぎ、今も注力しています。その米田弁護士と加藤公司弁護士は民事介入暴力対策委員会に所属しており、弁護団が結成される事件や、民暴関連の調査案件も得意分野の一つといえます」(中村弁護士)

例えば、プラントエンジニアリング企業の事件では、北尾弁護士を軸に大勢でチームを組成。緊急を要するリニエンシー(課徴金減免申請)の際には、〝事務所総がかり〟で取り組む。結局、同事務所の強みは、特定分野のプロといえる弁護士が中核となり、若手を巻き込んで〝一体感〟を持って協働できる組織体制と、若手弁護士に、初めての案件であっても食らいついていける知的体力を身に付けさせる指導体制にある。 

この〝一体感〟を支えるのは、同事務所の〝風通しの良さ〟だ。近藤直也弁護士は、「アソシエイト、パートナー関係なく、異なる意見に耳を傾ける風土がある」と話す。綿引万里子弁護士が、近藤弁護士とのエピソードを教えてくれた。

「私が、ある第三者委員会の委員長を務め、完成間近の段階まで調査報告書を練り上げていたところ、『この部分は重複しているのでは』という構成にかかわる指摘を、近藤弁護士から受けました。正直『まいったな』と思いましたが(笑)、近藤弁護士の意見を踏まえて、最終段階でその指摘を反映。あらためて全体を見直して、完成させたことがありました。事務所として質の高い仕事をするために、自分の考えをはっきり伝える、経験年数にかかわらず、どの弁護士の意見もきちんと受け止め、生かしていく――これは事務所全体に共通する文化です。当事務所ではアソシエイトであっても、〝上から言われたとおりにやるだけ〟では足りません。自分の考えを伝えるためには、自ずとしっかりとした調査や記録の読み込みが必要となる。それが知的体力の向上につながっているのではないでしょうか」

「若手であっても〝一人前の弁護士〟として扱い、しっかり議論をしてくれます。仮に、私の意見が正しくなかったとしても、パートナーは『その発想はなかった』と聞いてくれるので、議論が深まる。そして、議論を重ねることで、優れた戦略が練り上がっていく。そのように、きちんと議論できる体制が、当事務所の良さだと私は考えます」(近藤弁護士)

「弁護士16名で、スタッフを入れても30名弱。お互いの顔が見えて人柄もわかり、信頼関係があるので、皆が言いたいことを言えるのだと思います。この〝風通しの良さ〟と、円滑にコミュニケーションができる環境も、ずっと大切にしていきたい事務所の強みです」(中村弁護士)

共有スペースでの議論も盛ん。裁判官の観点からのアドバイスだけでなく、日々、叱咤激励してくれる綿引弁護士は、全員にとって“太陽”のような存在だそう

〝一人前の弁護士〟を全員で育てていく

同事務所は、クライアントのみならず、所内においても〝人を一番に大切〟にする。近藤弁護士は、「当事務所では、一次面接、二次面接、食事会………ほぼ、全パートナーが採用活動に参加していた。しっかり〝人物を見て〟選んでくれる事務所だと感じた」と話す。

その近藤弁護士は現在、民事調停官として、週1回、東京地方裁判所に通っている。

「事務所外の事件を経験してみたかったこと、一人で責任を持って判断を行う経験の機会を増やしたかったことが、民事調停官になった理由です。配属された民事22部は、建築紛争や借地非訟事件などを扱います。当事務所は建築紛争も多く、また私個人としても第一東京弁護士会の住宅紛争審査会運営委員会委員を務めていますので、民事調停官の経験は、非常に有益だと感じています。裁判所で得た知見は、積極的に所内に還元していきたいと思います」(近藤弁護士) 

同事務所の教育方法の基本は、OJT。「放置しない。日本語を大切に」を、重視する。

「電話応対、依頼者対応、ファーストドラフティングなど、新人が経験する仕事は、すべて先輩弁護士が丁寧にサポートします。最終責任はパートナーが持ちますが、〝品質の高い成果物〟を作ることを、若手のうちから徹底的に指導しています。そこで大切になるのが、やはり、相手の気持ちに常に想像力を巡らせる(寄り添う)こと。また、期日報告書や手紙の書き方にも細心の注意をはらいます。〝正しい日本語〟を使うことは当然として、『その手紙を受け取った相手方はどう感じるか。また、依頼者はその手紙を送ったことをどう感じるか』と両面から考え、事件の落としどころを念頭において作成する。これは常々、北尾弁護士が後進に伝えていることでもあります」(中村弁護士)

中村弁護士は、最後にこう話す。「そのように、創始者である岡村や先輩弁護士から引き継いできた様々な教えを大切にし、一人でも多くの〝一人前の弁護士〟を育てていく。また、その姿勢を次の世代につなげていくことが私たちパートナーの役割です」

Editor's Focus!

同事務所では、岡村弁護士とともに長年事務所を支えてきた北尾哲郎弁護士、司法研修所で刑事弁護教官を務め、刑事弁護に強い長﨑俊樹弁護士、そして定年退官後、裁判官から弁護士に転身した綿引万里子弁護士(2020年参画)が、岡村弁護士が逝去された後、所内メンバー全員にとっての“精神的な支柱”にもなっているようだ