医療・介護分野に特化している同事務所だが、「入所前に、弁護士がその知識を有している必要はない」と、胡弁護士は言う。
「知識は入所後にOJTで身につけられますし、医学の基本書や看護師向けの書籍などをとおして理解を深めることができます。また、私が医療機関向けの雑誌やメディアに寄稿する際など、その原稿をアソシエイトにチェックしてもらうことも。当事務所のアソシエイトには、そのように日々の仕事の積み重ねを通じて、業務の知識や流れをイメージしてもらっています」(胡弁護士)
同事務所では、新卒も経験弁護士も、最初は一般民事事件や家事事件など、医療・介護分野以外の案件からスタートする。
「離婚や不動産、交通事故など身近なトラブルへの対処を通じて、交渉の仕方や裁判手続きなどの基礎力を身につけてもらいます。3年程度、弁護士業務をひととおり経験してから、医療・介護分野の複雑な案件を手がけるほうが、スムーズに業務を遂行できると考えているからです。もちろん本人の希望と能力次第で、もっと早い時期に医療・介護分野の仕事の一部を任せる場合もあります。それは、本人の頑張りとやる気を見て判断しています」と、胡弁護士。
個人事件の受任については、事務所業務に支障がない限り、積極的に支援する。これには、胡弁護士なりの思いがある。
「個人事件を受任する場合、当事務所が取り扱っている案件や、顧客層とは違うタイプの事件を扱うことになると思います。医療・介護分野に限らず、幅広い分野で経験を積んでほしいという思いがまず一つ。そして、弁護士本人が成長していくためには、案件獲得から事件解決に至るまで、自分なりに試行錯誤することを早くから経験する必要があると思っています。すべて自分の責任で行うといった経験は、成長の最大の糧になりますし、報酬に関するやり取りを行えば“経営感覚”も身につくでしょう。独り立ちできるようになると、独立を考える弁護士も出てくると思います。しかしその時は、気持ちよく送り出してあげたい。なぜなら、私自身がお世話になった師匠にそうしてもらったからです。私も、同じように、後進育成に貢献したいと考えています」(胡弁護士)
「当事務所は、若手弁護士を一人前に育てたいという胡弁護士の思いと風土があり、アソシエイトだけのチームに仕事を任せてもらうこともあるので、それがとても励みになっています。それぞれの弁護士が自分のやるべき職務を全うし、事務所として依頼者に感謝されるような仕事をすることで、自然と成長できると思っています」(藤原弁護士)
最後に、未来に向け、事務所をどのように運営していくのか、胡弁護士に伺った。
「私が目配りできる規模で事務所を運営していきたいので、やみくもに規模を拡大するつもりはありません。また、“町のブティック型法律事務所”として経営を継続していくためには、多くても10名程度が適正規模。最近はクリニックの医師の間で、当事務所の仕事の評判が上がってきています。『大阪で医療関係の法律事務所といえば胡法律事務所』と言われるような、存在感のある事務所になっていきたいですね」(胡弁護士)