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右から、胡 健介弁護士(60期)、藤原裕子弁護士(70期)、堂下陽平弁護士(75期)

右から、胡 健介弁護士(60期)、藤原裕子弁護士(70期)、堂下陽平弁護士(75期)

STYLE OF WORK KANSAI

KANSAI
#3

胡(えびす)法律事務所

安心して診療にあたってもらうよう、医師の盾となり、地域医療にも貢献する

専門性が高い医療・介護だからこそ差別化できる

胡健介弁護士は、医療・介護の案件を扱う事務所で修業を積み、専門性の確立を目指して独立し、この分野に特化した胡法律事務所を設立した。しかし意外にも、若手の頃は医療・介護分野を苦手に感じていたという。
「弁護士登録して3年ほど経った頃から、“弁護士間の競争”が激化していくことを感じ、『何か一つ、強みを持っておくべき』と考えるようになりました。医療・介護分野を多く扱っていた事務所に移籍し、弟子入りしたのです。昔から文系の道をひたすら歩いてきたので、理系かつ高度な専門知識が要求される医療・介護分野は、最初はとっつきにくかったのですが、実務に携わるうち、徐々に知識を身につけていくことができました」と、胡弁護士は当時を振り返る。

一方の藤原弁護士は、胡弁護士が胡法律事務所を設立する前に共同経営していた、前事務所の出身。その時代から、胡弁護士の仕事ぶりをアソシエイトとして間近で見てきた。胡法律事務所の設立に伴い移籍した理由を、「専門性を身につけたかったから」と言う。
「いわゆる“マチ弁”として、『何でもやります』も一つの仕事の仕方ではありますが、何か強みになるものがないと、将来的に埋もれてしまうのではないかという危機感がありました。医療・介護分野であれば参入障壁が高いので、自分の強みとなる専門性を身につけていけるのではないかと考えたことが、今ここにいる理由です」(藤原弁護士)

同事務所が扱うのは紹介案件が主で、保険会社をはじめ医療機関とのつながりが強い税理士や社会保険労務士からの紹介案件に多数携わってきた。事務所のホームページを作成した際に「医療・介護の専門事務所であること」を打ち出したところ、新たな医療機関等からの相談・依頼が増えてきた。
「医療には多くの専門診療科目がありますし、医師も法律事務所に対して専門性を求めているはず。それらの声に応え、一つずつ丁寧に向き合っていきたい」(胡弁護士)
他方、古くからの顧問先には、薬局や不動産会社、Web制作会社、飲食店、コンサルティング会社、市場の卸売業者といった他業種もある。「現在の取り扱い案件のおおまかな割合は、医療・介護6割、一般民事事件2割、家事事件1割、残り1割が破産管財や交通事故です。顧問先は約70、医療機関が7割で、介護関連業者が1割程度。そのほか、医療・介護以外の業種です」(胡弁護士)

胡(えびす)法律事務所
代表の胡弁護士を、前事務所から知る藤原弁護士。「依頼者への対応や、弁護士としての事件処理・スタンスを見ていて、『胡弁護士のようになりたい』という目標ができました」(藤原弁護士)

医療の知識を武器に医師の盾となる

同事務所の顧問先には、クリニックと呼ばれる小規模な医療機関が多い。例えば歯科は、その代表例。ちなみに大阪府下の歯科クリニックは、およそ5000軒といわれている。その多くが、院長の下に勤務医が1名から数名、歯科衛生士や歯科助手、受付などのスタッフ数名といった規模だ。そうした小規模クリニックで起こる労働問題や、患者とのトラブルによる経営へのダメージは計り知れない。「そうした町の小さなクリニックにこそ、予防法務や臨床法務といった観点で、医師やスタッフを守る顧問弁護士の存在が必要」と、胡弁護士は考えている。
「患者からクレームを受けると、その勢いに押されてつい弱腰になってしまう医師やスタッフもいます。そうなると、患者への対応により萎縮してしまい、診療活動に影響が及ぶといった懸念もあります。ほかの患者のためにも極力リスクを避け、医師やスタッフを守る盾となるのが、我々の役割です。その時に武器となるのは、何よりも医療・介護の専門的な知識。ですから、日々の勉強と自己研鑽は欠かせません」(胡弁護士)

ただ、医師やスタッフが最善を尽くしたとしても、結果が伴わないこともあるのが医療の世界だ。患者からクレームを受けても仕方のない場面だとしても、医療・介護の知識があれば、医療機関と患者双方の言い分を踏まえつつ、すぐに最適な判断が下せる。
「患者の言い分がもっともだと考えられるケースでは、医師に寄り添いつつ、患者の心情にも配慮しながらじっくり話を聞いて対応します。一方、患者の要求を受け入れ難いケースでは、毅然とした態度を取る。そうした時、医師から『代わりに対応してもらえて安心できました』と言われると、やはり、嬉しいですね」と、胡弁護士。
藤原弁護士も、同じ思いだ。
「一番のやりがいは、依頼者に安心していただくことです。クリニックの院長は、患者に責められると、どうしても気持ちが弱くなってしまうもの。そんな院長の代わりに、自分が矢面に立ってトラブルを解決していきます。『本当に助かりました。これで落ち着いて診療ができます』と言っていただけると、間接的にではありますが、地域医療にも貢献できているのかなと感じます」(藤原弁護士)

最初は医療・介護分野以外で弁護士の基礎力を磨く

医療・介護分野に特化している同事務所だが、「入所前に、弁護士がその知識を有している必要はない」と、胡弁護士は言う。
「知識は入所後にOJTで身につけられますし、医学の基本書や看護師向けの書籍などをとおして理解を深めることができます。また、私が医療機関向けの雑誌やメディアに寄稿する際など、その原稿をアソシエイトにチェックしてもらうことも。当事務所のアソシエイトには、そのように日々の仕事の積み重ねを通じて、業務の知識や流れをイメージしてもらっています」(胡弁護士)

同事務所では、新卒も経験弁護士も、最初は一般民事事件や家事事件など、医療・介護分野以外の案件からスタートする。
「離婚や不動産、交通事故など身近なトラブルへの対処を通じて、交渉の仕方や裁判手続きなどの基礎力を身につけてもらいます。3年程度、弁護士業務をひととおり経験してから、医療・介護分野の複雑な案件を手がけるほうが、スムーズに業務を遂行できると考えているからです。もちろん本人の希望と能力次第で、もっと早い時期に医療・介護分野の仕事の一部を任せる場合もあります。それは、本人の頑張りとやる気を見て判断しています」と、胡弁護士。

個人事件の受任については、事務所業務に支障がない限り、積極的に支援する。これには、胡弁護士なりの思いがある。
「個人事件を受任する場合、当事務所が取り扱っている案件や、顧客層とは違うタイプの事件を扱うことになると思います。医療・介護分野に限らず、幅広い分野で経験を積んでほしいという思いがまず一つ。そして、弁護士本人が成長していくためには、案件獲得から事件解決に至るまで、自分なりに試行錯誤することを早くから経験する必要があると思っています。すべて自分の責任で行うといった経験は、成長の最大の糧になりますし、報酬に関するやり取りを行えば“経営感覚”も身につくでしょう。独り立ちできるようになると、独立を考える弁護士も出てくると思います。しかしその時は、気持ちよく送り出してあげたい。なぜなら、私自身がお世話になった師匠にそうしてもらったからです。私も、同じように、後進育成に貢献したいと考えています」(胡弁護士)
「当事務所は、若手弁護士を一人前に育てたいという胡弁護士の思いと風土があり、アソシエイトだけのチームに仕事を任せてもらうこともあるので、それがとても励みになっています。それぞれの弁護士が自分のやるべき職務を全うし、事務所として依頼者に感謝されるような仕事をすることで、自然と成長できると思っています」(藤原弁護士)

最後に、未来に向け、事務所をどのように運営していくのか、胡弁護士に伺った。
「私が目配りできる規模で事務所を運営していきたいので、やみくもに規模を拡大するつもりはありません。また、“町のブティック型法律事務所”として経営を継続していくためには、多くても10名程度が適正規模。最近はクリニックの医師の間で、当事務所の仕事の評判が上がってきています。『大阪で医療関係の法律事務所といえば胡法律事務所』と言われるような、存在感のある事務所になっていきたいですね」(胡弁護士)

胡(えびす)法律事務所
医事紛争、医療事故、介護事故などを得意とする胡法律事務所。顧問先は歯科クリニックが多く、高度な医療事故にも対応している