Vol.4
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PIONEERS

法的アドバイスにとどまらずトータルな経営判断力が求められる

竹山 智穂

株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
経営企画部 経営企画グループ 調査役
弁護士(54期)

#5

新時代のWork Front 開拓者たち

入社後、プロジェクトのスピードが加速したと評価

2007年4月、福岡銀行(本社・福岡市)と熊本ファミリー銀行(本社・熊本市)が経営統合し設立されたふくおかフィナンシャルグループ。同年10月には親和銀行(本社・佐世保市)も加わり、3銀行を傘下に収める地域金融機関初の銀行持株会社が誕生するという大規模な再編劇となった。この3行はそれぞれ同様の事務部門を抱えており、目下その整理統合作業が進められている。そのプロジェクトチームの一員として、また同行初の組織内弁護士として活躍しているのが竹山智穂氏だ。

「銀行特有の複雑な規制をクリアしながら進める必要があります。やろうとしていることの何が問題になるのかという論点を抽出するところから始めなければなりません。そのうえで、想定されるリスクやベネフィットを整理し、方向性を誤らないように優先順位づけをして経営判断を仰ぐといった作業を行っています」

竹山氏は、もっぱらプロジェクトメンバーから持ち込まれる法的な相談への対応を担当。「弁護士というより、ベテランの法務スタッフ」と自身の仕事内容を表現する。判断すべき事項にはグレーゾーンもあり、営業上の意向や人事の問題なども複雑に絡み合う。組織内のコンセンサスがスムーズに得られるとは限らないが、そこをどのように調整、交渉しながら進めていくかが腕の見せどころだ。

「状況が漠然としている段階で論点を抽出・整理するのは、一般の社員には難しく、弁護士としてのリテラシーが生かせていると思います。論点が見えた時に、結論はこうだろうといった鼻も利きますし。私が入社して、業務のスピードが加速したと評価していただいています。それ以外にも、各分野の弁護士の紹介を頼まれるなど、何かと重宝されているのではないでしょうか(笑)」

企業倒産事案を担当その面白さに目覚める

竹山氏は、東京の大手法律事務所でそのキャリアをスタート。その直後に発生した大型の破産管財事件や会社更生手続開始申立事件を、先輩弁護士を補佐する形で担当した。債権者である銀行側の代理人を務めたが、会社更生手続開始決定が出るまでの紆余曲折を経験する。

「裁判所や監督委員、債務者側・債権者側の代理人といった役者がそろうなか、時の経済情勢や金融政策などが書面に色濃く反映される。不謹慎かもしれませんが、企業倒産の事案はすごく面白い、と思いました」

2年後、結婚とともに福岡に転居。主に企業倒産を手がける法律事務所に転じる。その事務所が、産業再生機構(IRCJ)の支援先となったある企業の子会社整理を依頼された。この事案に参加した竹山氏は、その間にも同時並行的にほかの再建型倒産事件にも関与。経営者は民事再生を主張し、会社の再建にこだわっていた。従業員のことを考えれば再生すべきとも考えたが、経営状況からその見込みは乏しく、破産処理して債権者に少しでも返済するしかない状況だったのだ。

「このとき、自分にもっと経営や財務会計の知識があればさらに力になれたかもしれない、と思ったのです。弁護士だからといって法的な手続きだけやっていればいいのではない、経営者に説得力のあるアドバイスができなければならないと」

こうしてIRCJの支援を受ける側の立場を経験した竹山氏は、IRCJの業務の密度の濃さを実感。「ここに入れば鍛えられるだろう」と考えた。IRCJは時限的組織、存続期間が限られていたこともあり、夫の応援も得て単身赴任でIRCJへ転職した。そこでダイエーやカネボウなど注目を集めた事案を含め、6、7件を担当する。

「周囲には、弁護士のほかに会計士、証券会社出身のアナリストやコンサルタントなどのさまざまなプロフェッショナルがいて、お互いに知恵を出し合い、吸収し合っていました。まさにオン・ザ・ジョブで深く学ぶことができたのです」

最初から最後まで一貫して携われるやりがい

IRCJの解散とともに福岡に戻り、ふくおかフィナンシャルグループに入社を志願、採用された。

「IRCJでは、債権者である複数の銀行の間に立ち、債権放棄などの要請や調整を行いました。その際、銀行側の立場をもっと知りたいと思ったことがきっかけになりました」

時あたかも経営統合の直後。さらに続きそうな再編において、これまで培った経験をもとに、何か手伝うことができるのではないかと考えた。

「福岡銀行には、ユニークな担保設定を行うなど新しいことに積極的に挑戦するイメージがありました。弁護士が面白いと思うようなことをやっている。いろいろやれそうだと」

入社して1年。法律事務所と組織内との大きな違いを実感する日々。

「組織内では最初の論点整理から事後のモニタリングまで、一貫して携わります。依頼された事案に限定的に対応する法律事務所での業務とは、そこが一番の違いであり、やりがいを感じるところでしょうか」

ふくおかフィナンシャルグループ経営企画グループの一員としての竹山氏の目線の先には、金融行政や規制のあり方がどうあれば、九州という地で自社がより発展していけるかという問題意識がある。

「弁護士として法的な相談に応えることも重要ですが、それ以上にトータルな経営的判断を踏まえたアドバイスができるようになりたい。そのためにも、より広い視野を持てるようになりたいと思っています」