Vol.57
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PIONEERS

このフィールドには、未開拓の業務が多々ある。“自治体内弁護士”として第一人者になれるのは今

海老原 佐江子

葛飾区総務部副参事(法規担当)
弁護士

#30

The One Revolution 新・開拓者たち~ある弁護士の挑戦~

葛飾区役所で任期付職員として勤務する海老原佐江子弁護士。現在、東京23区にいる法曹有資格者の常勤職員は4名(2017年3月時点)、全国で見れば、その数は徐々に増加傾向にある。しかし、弁護士の職域として〝ブルーオーシャン〞である自治体内弁護士は、自治体法務において、競争原理に寄らない、弁護士自身の手による新たな需要の掘り起こしと、価値の創造が期待される。

全国で需要が増加する自治体内弁護士

私が葛飾区の任期付職員となったのは16年4月からです。それまでは非常勤職員でありながら、週4日フルタイムで区役所で働くという、あまり例のない勤務形態でした。現在、全国の自治体で常勤職員として勤務している法曹有資格者は99団体140名います(17年2月時点。日弁連調べ。最初から弁護士登録をしていない人や取り消した人も含まれる)。一方で、行政不服審査法の改正により審査請求の審理手続を行う審理員の需要が増えたことなどから、かつての私のように、弁護士業務と両立して働く非常勤職員も増えてきているようです。

適切な住民対応を法的見地から支援

法規担当係は、私のほかに係長1名、係員4名の6名体制となっています。法務面の一層の充実を図るため、平成29年度から非常勤の弁護士が新たに1人増える予定です。

自治体内弁護士の業務内容として、一つは区が当事者となる訴訟や民事調停の指定代理人です。これは普通の弁護士業務と、同様ですね。

二つめは、先に述べた行政不服審査法上の審査請求の対応。審理員として審理手続を主宰し、意見書を起案したり、答弁書にあたる弁明書の起案をするなど、所管課の支援を行ったりします。場合によっては口頭意見陳述もあり、審査請求をした住民の方と処分を行った所管課の職員を集め、審理員として双方の意見を聞くこともあります。16年4月の法改正によって、この業務が葛飾区役所でも増えてきています。審理員に資格は不要ですが、意見書などの作成があるため、やはり弁護士である私が適任のようです。

三つめは業務執行上生じる法律問題についての、各課からの相談対応です。ほかに契約書、協定書、通知書などの法律文書の作成とチェック、いじめ調査委員会事務局(委員や外部機関などとの調整)、条例・規則・要綱などの制定や改正時の審査なども行います。

年々、自治体に求められる役割が増大しており、特に学校現場や区役所の窓口での苦情やトラブルに悩む職員や教員も多いのです。苦情に対応する職員は、どこまでが法的根拠に基づく義務なのか判断できなかったり、「謝罪したら過失を認めることになる」と思い込み、苦しい立場に置かれることも。窓口対応で大事なのは、苦情をすぐに法律問題として捉えるのではなく、相手の状況に応じて親切に対応することだと思います。しかし、法的な根拠や制度の仕組みを理解して、見通しを持つことで、リスクを防止しながら、より適切な対応ができるはず。その一助になればと思います。

道を拓き、第一人者になれるチャンスがある

弁護士 海老原 佐江子
海老原弁護士が勤める葛飾区役所は、政策経営部、総務部、地域振興部、産業観光部、環境部、福祉部などで構成される。職員数は2974人(2016年4月1日時点)

自治体法務における弁護士の業務は、とてもクリエイティブです。法律や条例を用いて、住民の方々の生活が多様化するに伴い持ち上がる様々な課題を解決し、ひいては社会を変革し得る仕事だと思っています。様々な法の執行の段階からかかわることで、例えば「このような行政指導は違法を問われる可能性がある」と担当の職員に対して助言できるなど、早い段階でしかも効率的に、基本的人権を擁護しつつ、社会正義を実現することもできるでしょう。

しかし、まだ自治体内弁護士の数は少なく、今は各自治体に弁護士が、1人から多くても数名という状況です。

社会をよくしたいという同じ志を持った自治体職員や弁護士などが集う「政策法務研究会」で勉強し、それぞれが所属する組織に持ち帰るという活動もしていますが、政策法務というところまでは、まだなかなか手がつけられていないのが現状なのです。ですが、それは裏を返せば、開拓しがいのある手つかずのフィールドが目の前に広がっているということ。すべきことはたくさんありますし、この分野・領域で〝自分の前に道をつくっていく〞というチャレンジングな経験ができることは間違いなく、今なら自治体内弁護士の第一人者になれるチャンスもあります。

さらにいえば、〝自治体の構造〞に関する知見や、そこで積み上げた経験とノウハウは、ほかの自治体でも十分活用できるでしょう。全国にいったいいくつ自治体があるか……そう考えると、活躍の場は無限です。私も弁護士として、自治体法務に軸足を置き続けたことで、「どの地域でも、どんな環境でも、力になれる!」という自信がつきました。

ぜひ、一人でも多くの弁護士に、自治体内弁護士の業務と魅力を知っていただき、この〝未開拓の門〞を叩いてくれる同志が増えていくことを願っています。