来年15年を迎える日本組織内弁護士協会(JILA)関西支部
──関西支部ならでは、所属会員に特徴はありますか。
中室:製造業関連企業に勤務するインハウスローヤーが多いのが特徴でしょうか。もちろん、製造業以外にも、多種多様な企業の法務部員が会員となっており、有意義な交流が持てると思っています。
上米良:1企業から1名登録(会員)というケースがほとんどですが、大手は少し異なります。
中室:例えば、パナソニック12名、シャープ8名、住友電気工業、GSユアサと任天堂が各6名、京セラ5名といった状況です。大手企業の弁護士採用ニーズの高さがわかりますね。
──勤務先法務部に弁護士は自分だけ。そうした方にとっても、働き方やキャリアパスを考えるよい機会になりますね。
中室:そうですね。やはり、法務部内に弁護士が一人だけだと、社内での立ち位置や役割について悩むことも少なくないでしょう。JILAで同じ立場の方々と意見交換したり相談し合ったりすることで、業務などを見つめ直し、新たな役割に気づく機会を提供できていると思っています。
──関西支部独自の活動について教えてください。
中室:私たち執行部が中心となって企画を立案し、支部独自の勉強会、交流会などを随時開催しています。例えば、所属会員の勤める企業に希望者数名で訪問し、自社以外の法務の役割・業務などを学ぶ“企業訪問”は非常に好評でした。「他社の法務を肌感覚で知ることができ、自社の法務運営を改善するためのヒントがもらえた」など、効果もしっかり出ているようです。また、60期台後半から70期台くらいの会員を対象とした「英文契約の勉強会」を、上米良さんが講師となって今年度からスタートしています。この勉強会もかなり人気が高いですね。
上米良:英文契約の勉強会のニーズは高く、予想より参加人数が多くなりました。現在の参加者は21名で、全8回のゼミ形式です。在宅勤務が増えている時期なので、オンラインでの開催をメインとしています。主として会社員時代の知見を生かしてお伝えしていますが、私が法律事務所に転職したこともあり、企業の法務部から相談を受ける側となって気づいたことや、解決策を企業内でどう落とし込むとよいかなど、実務的な学びが提供できていると自負しています。このほかに、コンプライアンスに関する定例会も企画し、運営しています。
南:このコンプライアンスに関する定例会も非常に好評です。参加者でチームをつくり、各チーム内で内部通報や贈収賄などテーマに応じて意見や悩みを共有する。このように、一方的な講義形式ではなく、ゼミ形式やワークショップ形式で会員間の交流を図れるのは、“参加者の顔が見える規模感”の、関西支部ならではだと思います。
中室:昨年度、関西支部に期待すること、どのような取り組み・活動を行ってほしいかなど、支部会員を対象としたアンケート調査を実施しました。その回答を参考にして企画したのが、「英文契約の勉強会」でした。今後も会員一人ひとりの意見やニーズをしっかり汲み取り、きめ細やかに対応する運営スタイルを継続していきます。
──関西支部が今後、注力していきたい活動などを教えてください。
竹本:私を含めて執行部のメンバーには、自社・自組織内にとって“初のインハウスローヤー”となった人が多いのです。組織内でどのような役割を果たしていくべきか試行錯誤するなかで、JILAの存在を知り、ここで様々なことを学んできました。関西支部は、60期以降のメンバーがほとんどです。ただ、60期台後半から70期台の参加が少ないということに危機感を抱いています。インハウスローヤーの存在感を高め、能力を継続的に向上させていくには、やはり若手の参加が不可欠。そこで、若手が参加しやすいよう、先ほどのゼミ形式やワークショップ形式の定例会などを開催しているわけです。やはり一方的な講義よりも、自己紹介などを交えて人となりを知れるスタイルのほうが、参加者同士親密になれますので。
南:会員の中には、司法試験に合格後、登録せずに就職し、法務部員となる人もいます。
岸本:登録して弁護士会に入れば最初に、新人弁護士向けの会合や研修会などがありますよね。
南:そうした機会がない方のサポートを行っていきたいという思いもあります。
中室:社内での立ち回り方や、社内他部署あるいは上司・部下とどのように関係性を築き、どのように仕事を進めていくのかなど、“インハウスローヤー特有の悩み”というものがありますからね。JILAは、社内では打ち明けにくい悩みも、会社を離れて、利害関係のない先輩に話を聞いてもらったり、アドバイスをもらったりできる場でもあるのです。
上米良:私自身、キャリアパスを検討する際に役立ちました。弁護士という資格を有するからこそ、社内限定ではない、異なる視点からのキャリアプランを検討することも必要だと思っているので、JILAでそのヒントをいろいろいただきました。
岸本:私も小規模な法律事務所から企業に就職してインハウスローヤーとなりましたが、最初の頃はこの働き方の先例が少なく、“もがいていた感”があります。でもJILAに入ったところ、法律事務所からインハウスローヤーになった人、逆にインハウスローヤーから法律事務所に移った人、最初の就職からインハウスローヤーを続けている人など、様々なキャリアを経ている先輩方がいて、自分なりのキャリアプランを立てる際、大変参考になりました。
中室:JILAおよび関西支部は、多様なインハウスローヤーが参加するネットワークであることが最大の価値ですね。特に若手の方にとっては、大変有意義な場になると確信しています。
──関西支部は来年で15周年です。今後の展望を教えてください。
中室:関西圏のインハウスローヤーは2019年6月現在243名で、そのうち約200名がJILA関西支部に入会されています。この高い入会率を今後も維持していきたい。しかし一方で、支部の活動への参加者数の伸び悩みが気がかりです。最近、定例会などに参加する方は20~30名と顔触れが決まってきているように感じます。入会後、活動に参加される人を増やしていくために、ニーズに合った企画を増やしていく予定です。
また新型コロナの影響で、定例会や勉強会は半ば強制的にオンライン開催となりました。ただ、例えば、関西支部の定例会に東海支部のメンバーにも参加いただくなど、コロナ禍のおかげで地理的・時間的制約がなくなり、他支部との交流が促進できています。今後も他支部と協力関係を深め、支部間のネットワーク強化を図ります。
南:従前、子育て中の会員などからオンライン開催の要望がありました。リアル開催が可能になってもオンラインを並走させ、多様な立場の会員の声に応えていきます。
竹本:大阪ではインハウスローヤーはまだまだ少数派。ゆえに、関西支部の会員が多く所属する大阪弁護士会に働きかけを行い、インハウスローヤーに関する弁護士会の理解を深めていただくための活動を促進していきます。それも含めて、より会員のニーズに応じた企画を模索していきたい。関西支部やJILAを通じてインハウスローヤーに必要な知見を獲得し、業務に還元し、自分と自社・自組織との“WIN・WINの関係”を築く。関西支部が、その架け橋のような役割を担っていけることを目標とします。
岸本:関西支部は、“顔が見える組織”が最大の利点。定例会などに参加すると、一度きりではなく会員同士息の長い付き合いができます。法務部の弁護士が自分一人だったりすると、うまく仕事が進められず、諦めて転職してしまうという人もいるかもしれません。インハウスローヤーの仕事の面白さを知らずに、そうなってしまうのはもったいない。自身のキャリアを考える際、常にプラスの発想を提供できる組織でありたいです。
南:支部会員の“今のニーズ”を汲み取り、それにしっかり応えることが第一。そのためにも、執行部がフラットな雰囲気を維持しながら、会員の皆さんの悩みや願いに寄り添える関西支部であり続けたいと思います。
※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。