Vol.81
HOMEスペシャルレポートLGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
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#20

前列左より、河野理子弁護士/LLAN理事(45期/ホワイト&ケース法律事務所パートナー)、森倫洋弁護士/LLAN理事(47期/AI-EI法律事務所代表)、藤田直介弁護士/LLAN代表理事(39期/年金積立金管理運用独立行政法人法務室長)、アレキサンダー・ドミトレンコ/LLAN代表理事(イングランドおよびウェールズ、ニューヨーク州、ロシア弁護士資格。
外国法事務弁護士/アシャースト法律事務所外国法共同事業東京オフィスパートナー)、杉本文秀弁護士/LLAN理事(41期/長島・大野・常松法律事務所マネージング・パートナー)、高山寧/LLAN理事(ニューヨーク州弁護士/野村不動産ホールディングス株式会社取締役監査等委員)。後列左より、金原明彦(LLAN事務局)、藤田元康弁護士/LLAN監事(54期/外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ パートナー)、稲場弘樹/LLAN理事(ゴールドマン・サックス証券株式会社シニア・カウンセル、ヴァイス・プレジデント)、別府理佳子/LLAN理事(イングランドおよびウェールズ弁護士資格。外国法事務弁護士/スクワイヤ外国法共同事業法律事務所パートナー)、梅津立弁護士/LLAN理事(43期/アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、大島葉子弁護士/LLAN理事(51期/日本マイクロソフト株式会社執行役員政策渉外・法務本部長)、菅野百合弁護士/LLAN理事(56期/西村あさひ法律事務所パートナー)、ピーター・フロスト/LLAN理事(イングランドおよびウェールズ法ソリシター。外国法事務弁護士/外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ パートナー)

前列左より、河野理子弁護士/LLAN理事(45期/ホワイト&ケース法律事務所パートナー)、森倫洋弁護士/LLAN理事(47期/AI-EI法律事務所代表)、藤田直介弁護士/LLAN代表理事(39期/年金積立金管理運用独立行政法人法務室長)、アレキサンダー・ドミトレンコ/LLAN代表理事(イングランドおよびウェールズ、ニューヨーク州、ロシア弁護士資格。
外国法事務弁護士/アシャースト法律事務所外国法共同事業東京オフィスパートナー)、杉本文秀弁護士/LLAN理事(41期/長島・大野・常松法律事務所マネージング・パートナー)、高山寧/LLAN理事(ニューヨーク州弁護士/野村不動産ホールディングス株式会社取締役監査等委員)。後列左より、金原明彦(LLAN事務局)、藤田元康弁護士/LLAN監事(54期/外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ パートナー)、稲場弘樹/LLAN理事(ゴールドマン・サックス証券株式会社シニア・カウンセル、ヴァイス・プレジデント)、別府理佳子/LLAN理事(イングランドおよびウェールズ弁護士資格。外国法事務弁護士/スクワイヤ外国法共同事業法律事務所パートナー)、梅津立弁護士/LLAN理事(43期/アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、大島葉子弁護士/LLAN理事(51期/日本マイクロソフト株式会社執行役員政策渉外・法務本部長)、菅野百合弁護士/LLAN理事(56期/西村あさひ法律事務所パートナー)、ピーター・フロスト/LLAN理事(イングランドおよびウェールズ法ソリシター。外国法事務弁護士/外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ パートナー)

SPECIAL REPORT

#20

平等かつインクルーシブな社会の実現を目指して。実務法律家を中心に組織された特定非営利活動法人

LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)

団体について

内外の法律実務家のネットワーク

――設立の経緯を教えてください。

藤田:私の場合は、部下の職場でのカミングアウトが大きなきっかけとなりました。当時、私はゴールドマン・サックス証券の法務部長を務めていたのですが、2015年5月に部下の稲場弘樹さん(現LLAN理事)がカミングアウトされました。カミングアウト後、稲場さんの真の思いに初めて触れ、稲場さんが職場で直面していた困難のみならず、LGBTQに対する偏見のない社会を、特に若い世代のために実現したいことや、そのために日本で同性婚を実現したいと考えていることを知りました。稲場さんの話を聞くうちに、稲場さんが安心して活躍できる職場を実現することのみならず、より広く法律実務家としてできることもあるのではないかという思いを強めていきました。当初は手探り状態だったのですが、15年6月、米国連邦最高裁判決により、米国全州で同性婚が実現するという画期的な出来事があり、その実現に30年以上尽力してきた米国弁護士エヴァン・ウォルフソン氏が、翌年初めに来日しました。同氏の米国大使館での講演会、また同性婚人権救済弁護団とウォルフソン氏との会合でのボランティア通訳などを通じて、同じ思いを持つアレキサンダー・ドミトレンコ外国法事務弁護士と出会うことができ、この出会いがLLAN発足のきっかけとなりました。取り組むべき課題は大きく、個別に活動していても限界がある。何を具体的にすべきか当時はわかりませんでしたが、共に取り組みながら仲間を増やし、知恵を絞れば、何かが達成できるはずだと考え、アレキサンダーに声をかけました。16年2月、ほかに賛同いただいた数名の法律実務家を加えて、LGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)が発足しました。

ドミトレンコ:私たちのミッションは、「実務法律家としての知見を生かして、性的マイノリティに関する理解と対話を促し、平等かつインクルーシブな社会」の実現に貢献することです。しかしながら、当時のLGBTQに関する日本の状況を反映してか、発足当時の参加者は、外資系法律事務所や外資系企業の法務担当者に偏っていました。日本の法曹をもっと巻き込む必要がありました。アメリカ、カナダ、イギリスなど当初参加者の母国においては、LGBTQの権利実現に、法律や法律家が、試行錯誤を経ながらも、大きな役割を果たしてきました。そうした経験や知見を日本の活動にも生かしていくことができるのではないか、そうした経験・知見を共有すれば、日本の法律実務家とともに、私たちのミッションを実現できるのではないかと考えました。

LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
LLANのWebサイトでは、「LGBT情報」として、海外の動向、差別について、いじめ、職場、同性婚といったトピックで、調査資料やニュースレターを公開し、情報提供を行っている
http://llanjapan.org/

思いがけず返ってきたいくつもの熱い反応

藤田:日本の法律事務所の巻き込みは、稲場さんと一緒に、法務部の取引先である法律事務所から始めました。きっかけは法務部業務の大切なパートナーである法律事務所にカミングアウトをきちんとしたいという稲場さんの想いでした。最初は慎重な反応が多かったのも事実ですが、稲場さんとともに「何か一緒にできませんか」とお願いをしたところ、まずは研修からということに。最初のLGBTQ研修は長島・大野・常松法律事務所でした。研修終了後、同事務所の杉本文秀弁護士から「今までわかっていなかったけれども、話を聞いて今は何かしたいと思っている。ぜひ手伝いたい」と、とても情熱的な申し出をいただきました。同じ経緯を、西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、森・濱田松本法律事務所などでもたどり、研修後間もなく、LLANにも参画していただくことになりました。企業法務部の参加も必須と考え、当時LGBTQに対する取り組みが進んでいた野村ホールディングスに、つてを頼ってお声がけしたところ、ありがたいことに快諾いただきました。

ドミトレンコ:野村ホールディングスの執行役員チーフ・リーガル・オフィサー(当時)の高山寧さんは非常に熱心な方で、時差の関係で朝4時開催になるにもかかわらず、出張先のインドから私たちの会合に参加してくれました。それは、本当に嬉しかったですね。

LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
「私自身この活動を通して、あまり接点がなかったファッション業界の方など、様々な方との出会いがあります。新たな出会いは、多くの気づきをもたらしてくれる。それが結果的に実務に生きてくると、振り返って感じますね」(藤田弁護士)

――なぜみなさんそこまで熱心だったのでしょうか?

藤田:それぞれの人にそれぞれの考え・想いがあると思います。ただ、共通しているのは、LGBTQの問題が、研修など何らかの取り組みをきっかけとして、「他人事から、自分事になった」のではないかと考えています。電通がLGBTQに関する調査で興味深い分析※1をしています。性的マイノリティに対するストレート層の考え方をみると、両端には批判アンチ層(5.7%)とアクティブサポーター層(29.4%)がいて、その間に知識ある他人事層(無関心層34.1%)がいる。無関心層は割合として一番大きく、その理由は「LGBTQが“自分事”になっていないから」ということが分析からわかります。知識はあったとしても、LGBTQの人が身近にいないと思い込んでいるため、「他人事」になってしまっているというわけです。研修等でお会いした会社などに、「うちにはいない」と思い込んでいる方は少なからずいらっしゃいました。そういった会社でも、その後、社員がカミングアウトをしたために慌てて施策を整備したり、気づきが遅きに失したため、人材流出につながった事例も実際に見てきました。報道・ドラマなどを通じてLGBTQについてまったく知らないわけではない、ただ「他人事」である(と思い込んでいる)ため、課題意識・配慮意識が生まれない。そういった無関心層も、ひとたび「自分事」になると、関心層に移行し、行動の必要性を認識して行動するという事例は多くあります。

  • LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
    企業、大学、法律事務所などでLGBT研修、講演、公開講座など、「対話の場」を設ける。2018年には国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)共催で「LGBTIの人々に対する差別への取組み-企業のための行動基準」の、日本におけるローンチイベントを国連大学本部で開催。企業向け研修の様子
  • LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
    米国から講師を招聘しセミナーを開催することも
  • LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
    法律事務所向け研修の様子

2つの柱

気づきを得るための機会を提供する

――主な活動を教えてください。

藤田:大きく2つあります。一つは主に私が担当している研修などの活動。もう一つは、アレキサンダーが担っている同性婚の実現を含むアドボカシー活動です。研修のきっかけとなったのは17年に、ソニーとLLANが共催、野村證券、ゴールドマン・サックスが後援した大規模イベントでした。パネリストとして参加したのですが、イベント後、おどろくほど多くの参加者から「LGBTQの問題に取り組みたいが、何から、どのように、始めたらよいか悩んでいる」というご相談があり、大きな潜在需要があることがわかって、LLANとしてぜひ取り組もうということになりました。企業に限らず官公庁・自治体での研修の機会もあり、稲場さんをはじめとしてLLANの有志と取り組んでいます。企業が研修という一歩を踏み出すうえでのハードルを少しでも下げたいと願っています。

ドミトレンコ:私が今、主として担っているのは、日本における同性婚実現への支援です。私は20年前、カナダとアメリカで同性婚を実現する活動に弁護士として参加していました。レズビアンとゲイにとって結婚は非常に重要なものです。というのも、結婚は社会における二人の関係の究極的な認知の象徴だからです。17年当時、20の国ですでに同性婚が認められていましたが、日本ではまだ認められていない。人々の考えに大きなギャップがあり、社会はおろか当事者コミュニティにとってさえ、同性婚の実現はまだ遠いものです。しかし、“時は来ている”と私たちは判断し、LLANとしてこの問題に取り組むことにしました。私自身の経験から、同性婚実現のプロセスには、法律家が重要な役割を果たすことを深く認識していたからです。

ネットワークを生かしたリアルな報告書の作成

ドミトレンコ:当時、同性婚人権救済弁護団が日本弁護士連合会(日弁連)に同性婚の法制化を求める人権救済申し立てを行っていました。私は海外での同性婚実現の実績を報告書にまとめることによりこの申し立てを支援できるのではないかと考えました。LLANのグローバルな法律事務所とのネットワークを生かし、15の法律事務所から50人の弁護士が参加して、諸外国ではどのような過程でどのような反対論を乗り越え同性婚が実現したのか、約300ページの「婚姻の平等に関する外国法調査報告書」にまとめて提出したのです。また、その課程で日弁連にも4回プレゼンテーションを行い、19年7月、日弁連が同性婚の法制化を求める意見書※2を出した時には、私たちの報告書の内容も盛り込まれました。今日に続くムーブメントをつくり出すことに、早い段階から貢献してきたと、密かに自負しています。

同性婚と企業活動

抵抗への懸念と意外な結果

藤田:LLANが同性婚実現を支援することについて、当初は、メンバー内に慎重論もありました。実は私もその一人でした。というのも、今でこそ同性婚を認めないことを違憲とする札幌地方裁判所の判決など、同性婚への理解も進んできましたが、当時は企業などに「同性婚アレルギー」があるのではないか、したがってその活動家のように見られると企業がLLANを敬遠して研修等の活動に影響するのではないかという心配がありました。

――その心配はどうやって乗り越えたのでしょうか。

藤田:LLANの理事たちと議論しました。同性婚の実現は人権・平等の問題であり、当事者のみならず社会にとっても大切な、法律実務家として当然に取り組むべきこと。仮に抵抗論があるとしても理解いただけるような進め方が我々にはできるはずだという結論に至りました。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ということわざがありますが、活動への影響は全くの杞憂に終わりました。同性婚については、諸外国でも、同性婚が実現したら異性カップルの婚姻率が下がるのではないかとか、企業が同性婚を支援したら取引を打ち切られるのではないかとか、いろいろな反対論・慎重論が展開されてきましたが、同性婚が実現した国で懸念されていたことが起きた事例はないんですよね。

ドミトレンコ:私たちが活動への影響を心配したように、企業の側にも同性婚支援にかかわることへのためらいはあると思います。人事部や法務部はもともとLGBTQ問題への課題意識は高いのですが、自分の会社に当事者はいないと思っているため、具体的な取り組みを行いにくいという現実があるのかもしれません。性的マイノリティは人口の5~10%いるといわれています。実際私がある企業を3回訪問したところ、3回ともその後にカミングアウトする社員がいました。そういうことがあると、性的マイノリティの社員をどう処遇するかはまさに自分たちの問題だと企業自身が気づき、具体的な取り組みにつながる。まず、身近に当事者がいる・いる可能性があると知ってLGBTQや同性婚問題が「自分事」になり、さらに、心配していたことは現実にはまったく起きないということも知る。多くの企業は本来課題意識が高く、私たちが支援するまでもなく、気づきさえ得ていただければ皆さんが自ら乗り越えていくと感じています。

在日米国商工会議所への働きかけにも注力

ドミトレンコ:企業活動との関連でいうと、私たちの同性婚支援の活動のなかで最もインパクトがあったのは、在日米国商工会議所が公表した同性婚の法制化を求める意見書※3です。

ヒントとなったのは、15年米国最高裁判所が全米で同性婚実現を認めるか否かが大きな社会的争点となっていたとき、379社の企業が米国最高裁に提出した上申書でした。署名企業の多くは日本にも拠点を持つグローバル企業であり、また日本の事情を考慮すると、私たちが直接各企業に働きかけるより、政策提言の仕組みをもっていた米国商工会議所の提言として企業に働きかけることがより効果的だと判断しました。慎重に議論を重ねた結果提言まで約1年かかりましたが、最終的にはアメリカをはじめ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、デンマークの各商工会議所がすべて賛同した意見書が18年9月に公表されました。

LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
「LLANの理事は法律家として、『平等の原理原則』実現に向けて、社会に対する働きかけや貢献のため、尽力してくれています。そうした方々の持つ原動力が、この活動においてはとても重要なのです」(ドミトレンコ外国法事務弁護士)

法的な認知がなければ人材が流出する

ドミトレンコ:意見書のポイントは3つあります。1つ目は、同性婚が制度として実現しないと、個々の社員がその能力をフルに発揮して企業に貢献できないという点です。2つ目は、ほかの国々で同性婚が実現する一方、日本がそれを実現しなければ、日本企業はグローバルな人材獲得競争に負けるということを強調しました。3つ目は、日本からの人材流出についてです。安心して家族として暮らすことができるよう結婚を必要とする当事者が日本にはいます。日本で安心して暮らすことができないため、日本を離れ、結婚して家族を守ることができる国に移住した人が少なからずいます。いつ実現するともわからない権利の実現を待つよりは、すでに結婚ができる国に移住したほうがいいと判断した人たちです。

逆の場合もあり、本国においては法的に家族なのに、配偶者(同性パートナー)・家族にビザが下りないため、多くの優秀な人材が日本で働くことを選択しない・できないという現実もあります。高度外国人材の受け入れを含めこれは日本の競争力を確実に損なっています。婚姻の平等の実現は、日本で活動するすべての企業の利益になります。

藤田:人材流出は実際に起きています。以前、外資系企業人事の方とお話しした時、海外の上級役員を日本に配属しようとしたところ、配偶者である同性パートナーの方の在留資格取得が容易でなかったことから配属を断念したことがあるとお聞きしました。

OECDの2020年報告書※4によると、LGBTQに関する法整備状況について、日本は35カ国のうち最下位から2番目と評価されています。LGBTQの包摂性について、国際的に見ると日本は経済先進国の中で遅れていると評価されているのが残念ながら現実です。この状況を見たら、法制度が整備されている国にいるLGBTQの優秀な人材は誰も進んで日本に行きたいとは思わないのではないかと深く憂慮します。ましてや自分の大切なパートナーや子どもが家族としてきちんと処遇され保護されるという確信がなければなおさらです。

ドミトレンコ:そんななかで、私たちが米国商工会議所の意見書において重要なポイントとしたのは、日本は同性婚を実現する準備がすでにできている、ということです。この5年間で同性婚支持の世論は確実に高まり、NHKや電通の調査でも約6~8割の人が賛成しています。私たちは当事者とアライ(味方・支援者)をつなぐプラットフォームとして、この変化に貢献できたことを誇りに思っています。

読者へのメッセージ

法律家として気づきを得る絶好の機会

――弁護士や、企業法務の皆さんへメッセージをお願いします。

ドミトレンコ:私たちは、すべての方々の、LLANの活動への参加を歓迎します。LLANでは毎月、活動報告会を行っていて、活動内容を共有したり、ゲストスピーカーを招いて最近の動向に関して情報交換をしたりしています。過去には「結婚の自由をすべての人に」訴訟東京弁護団の寺原真希子弁護士、アメリカやイギリスのLGBTQの国会議員、台湾の活動家などが登場してくれました。ほかにも年に一度、多くの法律事務所・企業・活動家が集まって現状について著名なスピーカーの話を聞いたり、意見交換などを行う「Equality Gala」というイベントも開催しています。堅い話だけではなく楽しいエンターテインメントもある、私が最も力を入れている年次イベントです。LLANでは広く法律に携わる人たちが相互につながり、活動へのヒントを得ることができる様々な素晴らしい機会を用意しています。

藤田:LGBTQ問題に関わりたいと思ったとき、関心はあっても、どう関わればよいのかわからないというのが最初のハードルではないかと思います。そこを越えるきっかけを、我々はご提供できると思います。ですから、皆さん、まずはメーリングリストに参加するだけでもよいので、ぜひ気軽に参加していただきたいと思います。

イベント以外にも、様々なワーキンググループの活動もあります。直近では、東京都がパートナーシップ宣誓制度の制度構築について意見募集を行っていた時にも、LLANで有志を募り、パートナーシップ制度についての調査・研究と議論を踏まえて、東京都の仕組みづくりに提言を行い、公表しました。また、日本では外国人向けのLGBTQの情報が非常に不足しているとの認識に基づき、渋谷区ダイバーシティセンターとLGBTQの最新の法情報を英語で発信するイベントも開催しました。これもLLANならではの取り組みで、メンバー有志で実現にこぎつけました。こうしていったん小さな一歩を踏み出すことができると、いろいろな縁が生まれ、それぞれの気づきがあり、問題が自分ごとになり、所属事務所・企業で、またより広く、活動を展開したりするようになっていく。これは私自身の強い実感ですが、LGBTQの課題は、かかわってみると非常に奥が深い。決して大げさではなく“人類の平等史”にまで踏み込むような話につながっていく。掘り下げれば堀り下げるほど、性的指向・性自認という切り口だけではなく、男女、人種など、あらゆる不平等と絡んでくるということが、おぼろげながら実感として、わかってくる。さらには根本的な問いとして、差別や偏見はどうして生まれるのだろうという考察も、生まれてきます。そういった気づきは、日々の実務にも生きてくることは間違いありません。

ドミトレンコ:日本では今、確実に変化が起こっています。婚姻の平等は、遠くない将来、日本でも必ず実現するでしょう。この歴史的な変化(ムーブメント)を後押しする一員に、ぜひ皆さんも加わってほしいと思います。そして、できるだけ多くの人に、このムーブメントを知ってほしい。LGBTQの平等は決して当事者だけのものではなく、社会のすべての人々にかかわるものだからです。

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

※1 LGBTQ+に対するストレート層のクラスター分析(電通報)
https://dentsu-ho.com/articles/7812

※2 同性の当事者による婚姻に関する意見書(日弁連)
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2019/190718_2.html

※3 同性婚の法制化を求める意見書(在日米国商工会議所公表)
https://static1.squarespace.com/static/5eb491d611335c743fef24ce/t/61a5dc3665f99c7761ec0b86/1638259767828/211130-Marriage-Equality-Viewpoint.pdf

※4 2020年の報告書(OECD)
https://www.oecd.org/social/over-the-rainbow-the-road-to-lgbti-inclusion-8d2fd1a8-en.htm

  • LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
    設立以来毎年開催する「Equality Gala」。第2回に、在職中よりゲイであることを公表したマイケル・カービー元オーストラリア連邦最高裁判事も出席。会場の様子(第4回)
    撮影/間野真由美
  • LGBTとアライのための法律家ネットワーク Lawyers for LGBT & Allies Network(LLAN)
    男声・女声を歌い分ける歌手マリアセレン氏も出席(第3回)
    撮影/間野真由美