Vol.91
  • ▼弁護士のブランディング支援サービス

    Business Lawyer's Marketing Service
  • ▼弁護士向け求人検索サービス

    想いを仕事にかえていく 弁護士転職.JP
  • ▼弁護士のキャリア形成支援サービス

    弁護士キャリアコンシェルジュ
  • 当社サービス・ビジネス全般に関するお問い合わせ

#27

高野氏と、経営法友会事務局のメンバー。「率直な意見交換や知見の共有でお互いを補完し合う“互助会”のような団体です。会員が“自発的に貢献し合う”という風土が根底にあります」(高野氏)

高野氏と、経営法友会事務局のメンバー。「率直な意見交換や知見の共有でお互いを補完し合う“互助会”のような団体です。会員が“自発的に貢献し合う”という風土が根底にあります」(高野氏)

SPECIAL REPORT

#27

“法務部門の充実・強化”を追求する、日本最大の企業法務会員組織

経営法友会

「企業法務実務担当者の情報交換の場」として1971年に発足した、経営法友会。法務部門の組織運営などに関する意見交換や、法務部員のスキルアップ支援などを通じて、企業経営の健全な発展に資する法務部門の在り方を追求する組織だ。代表幹事の高野雄市氏に、活動状況などをうかがった。

――まず、経営法友会の基本姿勢について教えていただけますか。

高野:〝経営〟法友会という名称自体が当会の姿勢を表していると思います。2018年に経済産業省が「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」を立ち上げ、「より経営に貢献できる法務を目指すべき」といった議論が進んでいますが、当会は発足当時からすでに〝経営〟を意識した法務の在り方を議論してきました。ちなみに経産省が先の研究会を立ち上げる際に参考にしたのは、当会が16年に発表した「第11次法務部門実態調査」の分析報告でした。また、当会の会員は、個人ではなく、法務機能を有する企業という組織単位での参加であることも特徴の一つです。企業の法務部門そのものを強化していくこと、ひいては経営をしっかりと健全なかたちで強化していくことを目指し、互助的かつ自発的な活動を行っています。

――会員数は1400社超(24年10月時点)、上場企業と非上場企業の割合は6対4ですね。

高野:実感として会員の規模は本当に様々で、〝一人法務〟の企業も多数参加しています。また、首都圏に限らず地方企業の参加も多いですね。「他社のプラクティスを参考にしたい」という会員が大変多いと感じています。

――同業他社とも交流しますね。

高野:私の所属先は商社で、競合他社の法務部長ともよく顔を合わせます。最近の会合でも「ライバル企業同士が、法務部門強化という共通の課題のもと、法務の在り姿を議論し合うのは面白い」と語り合いました。会員の方々からよく聞くのは「法務という共通軸をベースに、様々な企業が交流できる場があることが心強い」ということ。各々が情報管理のマインドをしっかりと持ちながら、自社の法務の組織運営や人材育成の問題について、ざっくばらんに意見・情報交換できる素晴らしい会であると自負しています。

経営法友会
「日本企業の法務部門強化に向けた活動・サポートに加え、今後は海外の企業法務団体とのネットワーク強化も考えたいです」(高野氏)。写真は、代表幹事と各部会主査による代表幹事会の様子(24年8月開催。交通事情により1名はWEB参加)

――総務部会、月例部会、研究部会、研修部会、大阪部会という5つの部会があります。具体的な活動内容を教えてください。

高野:「総務部会」は、当会の戦略企画を担当。会報誌『経営法友会レポート』の発行、会員懇談会の開催、学会・法曹界、企業法務関係団体などとの意見交換、「法務部門実態調査」などを行います。最も重要な役割は、会の戦略的取り組み部分の検討・実行、渉外、事業計画立案になります。
「月例部会」は、立法動向、実務動向、企業を取り巻く法的問題、時事トピックスを踏まえ、立案担当者、専門家、会員の法務担当者を講師に迎えたセミナーを企画・実施します。セミナーのトピック選びと、同トピックで最先端の知見を有する講師選びなどを行っています。
「研究部会」は、企業法務の実務上の課題からテーマを選定し、会員からメンバーを募って組織される研究会を企画・運営します。研究会は、研究成果を会員にフィードバックし、書籍として研究成果を発表することもあります。また、研究部会は、政策、立法などのパブリックコメント対応も担当します。
「研修部会」は文字どおり、会員の法務パーソン向け研修の企画・実施を担当します。伝統的な新任法務担当者向け研修のほか、新任法務部長研修といった新たな研修も試行的に実施しています。
「大阪部会」は当会発足の2年後に設置され、関西地区をはじめとする首都圏以外のエリアの会員サービスを検討・展開しています。総務部会、月例部会、研究部会、研修部会の機能を少しずつコンパクトにしたかたちで包括し、活動しています。大阪部会は非常に熱い組織で、独自の切り口での月例会を実施するなどしています。

――経産省をはじめ様々な機関から意見を求められていますね。

高野:例えば、裁判所(裁判官)や東京三弁護士会とも、定期的に意見交換会を行っています。裁判所との意見交換では、企業法務の実情を知ってもらい、企業法務におけるプラクティスを正確に理解してもらうことで的確な判断につなげてもらうことを目指しています。弁護士会とは、法曹人口を増やす、法務パーソンのすそ野を広げるという共通課題のもと、先日も「法科大学院修了生の就職」というテーマで意見交換会をしました。また、企業と弁護士(法律事務所)は若手法曹人材の獲得面で競合関係にありますが、法律に興味を持つ学生を増やしていきたい思いは同じで、引き続き様々な場面で連携できるでしょう。規制強化、国内市場の活発化とグローバル化、IT化の進展といった経営環境、法的環境の変化に対応していくには、企業の法務機能強化は避けられません。今後も必要に応じ、様々な団体との協働を積極的に推進していく計画です。

経営法友会
発足時から会報誌を通じて、企業法務のプレゼンス向上につながる活動内容報告や提言などを発信してきた。「経営に資する法務を目指し、“発信力”をさらに高めていきたいと思います」(高野氏)

――発足から54年ですが、会の役割や活動に変化はありますか。

高野:その時々の新たな実務的課題の検討・対応のみならず、部門運営や人材育成など法務組織をめぐる様々な課題、経営貢献の深化をいかにして行っていくべきかといった事項の検討機会が増えています。「会員相互の交流を通じて、他社法務部門・法務パーソンがどうしているのかを知りたい」といった声も高まっています。特に若手・中堅社員に顕著で、研究部会が「若手法務交流会」を開催したところ、すぐ定員に達しました。
私もオブザーバーとして参加しましたが、スモールグループによるディスカッションは大変活発でした。皆さん、上司に促されたわけではなく自発的に参加したとのこと。参加者は「職務を効率的かつ自社のニーズに合うように進めていくにはどうしたらよいか。各社どのように対応しているのか」など、日々の職務を〝自分事〟として捉え、〝現実解〟を見つけにきており、頼もしく感じました。

――先に話題にあがった「新任法務部長向けの研修」とは。

高野:文字どおり新任法務部長が対象の研修です。私も発案メンバーの一人で、21年から試行的に実施しています。当会には多彩なメンバーが集まっていますので、各人がノウハウを持ち寄り、「日本企業の法務機能を強化する取り組みの一つとして、まずやってみよう」と始めました。具体的には、会社における法務機能の在り方、法務部としての守備範囲の考え方、人材育成・人材活用をどのように行っていくかなどについて、〝先輩法務部長〟を講師に迎えお話しいただきます。その後、参加メンバー間で様々な課題につき意見交換いたします。企業によって事情は異なりますが、営業部など他部署からの異動で法務部に配属されたり、いきなり法務部長に任命されたりといったケースも増えています。
時代とともに人材の流動化は激しさを増し、そうした環境下で、いかにして法務機能・専門性を維持し、法務人材を育成していくのかが、大きな課題となっています。
同じ課題を持つ人と悩みを共有し、各社のやり方を参考にしながら自社の取り組みにつなげていく――当会の存在意義が一層高まっていると感じています。

――今後の運営に関する展望などをお聞かせください。

高野:変化が激しい経済環境のもと、法務に対する経営からの期待は、より一層高まっています。例えば経済安全保障、経済制裁、投資規制、ESGなどにおける課題は不確実性が高く、事業投資への影響を読むのが本当に難しい時代です。経営者がかじ取りをしていくにあたり、必要なのはジェネラル・カウンセル機能でしょう。そのベースであり、非財務系のコーポレート課題をハンドルできるのは、まさに法務部門。法務部門は、経営課題に対してもう一歩踏み込んで、いかに貢献していくかが問われています。そのように法務機能の重要性が高まるなか、幅広く多彩な会員と、業界を超えた広いネットワークに参加できる機会は大変貴重で、これほど力強い会員組織はないと思います。会内で行われる意見・情報の交換は、企業法務の〝今〟を映すものであり、その活動を通じて、現在および今後の法務部門運営を考えるうえで、多くの示唆が得られることは間違いありません。人材を含めた多様なリソースの不足といった悩みや課題を共有しながらベストプラクティスを導き出し、日本企業全体が法務機能をしっかりと高めていけるよう我々も尽力します。ぜひ、多くの企業の参加をお待ちしています。