ビジネス法務部では、その忙しい業務に対し、ある強い『こだわり』を持って取り組んでいる。
「社内には、事業分野ごとに事業部門があるほか、海外ビジネスや管理部門等の多数の組織があります。ビジネス法務部では、部を複数のチームに分け、おのおのにサポートする組織を割り振っています。業務の特徴を一つ挙げるとすれば、現場と事実に対する強いこだわりです。日々の業務を通じての法的サポートも非常に重要ですが、ビジネス部門とのコミュニケーションから入手できるさまざまな情報に法的観点を加えて、社内で問題提起をし、経営改善に生かしていくことも法務のミッションです。そのためには正確な事実認識が必要となりますので、現場主義を貫き、事実に徹底的にこだわることを指針としています。特にトラブル対応の際は、この点が顕著に現れ、臨床的な対処にとどまらず、将来の再発防止、経営改善につなげることを強く意識します。一例ですが、システムトラブル対応で法務の視点から技術部門と異なる問題整理ができることがあります。『いつ誰から誰にどんな連絡が行われたか』など事実にこだわって突きつめていくと、その過程において『所定の手順を踏んだか』『作業環境に問題がなかったか』など、ときに技術以前の課題が顕在化します。これらの課題を再発防止策に生かし、経営改善につなげていくのです」
そんなビジネス法務部において、あえて課題や今後の問題点を挙げるとすれば、どのような点になるだろうか。
「グローバルに会社の活動範囲が拡大しており、技術的な進歩も激しい業界なので、未知の法的な問題に遭遇することが増えていると思います。事前のリスク回避のためにも、もっと視野を広くもって、積極的に外に出て、情報収集を図っていきたいと考えています。自主的な情報収集が重要であることは言うまでもありませんし、同業他社との情報交換も強化していく必要があると感じています。もう一点挙げれば内部での人的交流も課題ですね。法務部員の海外派遣やグループ企業からの研修生の受け入れを行っていますが、もっとこれらの機会を活用し、人的交流を積極的に推進したいところです。他部門を知る、経営の一端を見ることは個人のスキルアップと同時に組織のボトムアップにつながりますし、リーガルネットワークを充実させていくことにもなると思います」