アリエール、パンパース、SK-Ⅱ、ジレットなど身の回りにあるブランド製品を販売するプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)。世界中の消費者が日々の暮らしの中でP&G製品に接する回数は1日40億回といわれている。洗剤、紙製品、化粧品、電化製品、ペットフードなど多様な製品群の多彩なブランド製品を日本で展開している企業で、幅広く同社の法務業務を担当しているリーガルチームを取材した。
「当社はマーケティングに強みがあり、リーガルでも強くそのサポートをしています。例を挙げれば、TV-CMやパッケージなどのマーケティングマテリアルやプロモーションプランの審査、流通戦略への法的アドバイスなどがあります。そのほか訴訟などの紛争解決、M&A、組織再編、多様な契約業務、独禁法、個人情報保護、会社法や労働法、PL、倒産対応などの一般的な法務業務もカバー。複数の製品群に対し、それぞれの業法や規約など幅広い法分野も見ています」
業務内容を端的に説明してくれたのはアソシエート・ディレクターの古山氏。体制についてはこう語る。
「組織が国をまたがって複雑に絡み合っていて、『リーガル担当がどこに何人いる』と表現しにくい会社です。現在、ジャパンリーガルのメンバーの一人はシンガポールの法人に出向していますし、どこまでが『日本の組織か』という線引きが難しいですね」
その複雑な組織の中で、いかに役割を分担し業務を行っているのだろうか。
「業務担当は製品カテゴリー・法律分野・社内クライアント(部署)で決めています。基本的にはファブリック&ホームケア、ヘアケア、スキンケアなどの製品カテゴリーと、営業、購買などの社内クライアントベースで自分の担当を持ち、そのほか各人の得意分野を考慮して、いくつかの法律分野で担当を分けています。組織が国をまたいでおり、海外のロイヤーと連携を取って仕事を進めることも多々あります。特に最近ではアジアでの連携を強めているため、アジア他国のロイヤーと協議して仕事を進めるケースが増えています。また、外資系企業なのでワールドワイドな取り組みは本国がリードすることが多いですが、ローカルへの責任移譲が進んでいて、ほとんどの業務は現地に一任されています」
他国との連携やチーム内分担について、野坂氏が補足説明してくれた。
「例えば日本とヨーロッパの一部で新製品を先行発売する場合は、当該国のリーガル同士で意見を交換し合うなど、案件によっていろいろなメンバーと連携を取って業務を進めます。個々のメンバーの主業務は年初のアクションプランで決めますが、案件の大きさや必要な法律分野などによって『一人でやる・チームで取り組む』など、フレキシブルに業務を分担。アクションプランは、『何をやりたいか』を問われ、上司と一緒に作ります。ちなみに私は、一時期希望して業務の約80%を会社法関連のプロジェクトにあてていましたが、このように個人の希望や自主性が重んじられることが特徴です」
海外とのやりとりや担当業務も多いなか、仕事を円滑に進める秘訣(ひけつ)は。
「全社的に業務のシンプリフィケーション(簡素化)に努めており、リーガルの業務内容の見直しも常に行っています。また、日々、案件のプライオリティー付けを行って、選択と集中に取り組んでいます」(渡部氏)
「効率化、シンプリフィケーションという観点では、リーガルレビューの基準や観点をまとめてアジア他国のリーガルに発信し、知識共有を図っています。先行するものが他地域であれば積極的に取り入れています」(太田氏)