Vol.20
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本社のショールーム前で電気自動車『i-MiEV』と法務部員のみなさんの集合写真。まだ高額と思われがちな電気自動車の導入サポートも法務部の業務。新しい取引先と取引形態の管理をしている

本社のショールーム前で電気自動車『i-MiEV』と法務部員のみなさんの集合写真。まだ高額と思われがちな電気自動車の導入サポートも法務部の業務。新しい取引先と取引形態の管理をしている

THE LEGAL DEPARTMENT

#16

三菱自動車工業株式会社 法務部

危機から生まれた社員の高い順法意識を支え、企業価値向上に貢献する自動車メーカーの法務部

広範な業務を平均化し、確実に遂行するための3グループ体制

新世代電気自動車をいち早く世に送り出した三菱自動車工業株式会社。過去においても欧米の自動車会社と資本や技術面で密接な結び付きを持ち、今また国を超えた世界的な連携が話題になっている自動車メーカーで、法務部はどのような役割を担っているのか。法務部長の山本博章氏に取材した。

「法務部には現在24名が在籍し、なかに外国の法曹資格を持つメンバーが5名います。海外拠点にいるスタッフなど4名を除くと、国内の実働部隊は20名。幅広い仕事を経験させるため、近年まで部内のグループ分けはありませんでしたが、部員の実力も向上し、業務分担を見直す時期と考え、昨年7月にグループ制を導入しました。現在は部長・担当部長の下に3グループ体制を取り、国内・海外の地理的・法体系的区分で業務を分担しています。まず第1グループは、北米地域と管理的業務を担当。当部でチェックされるすべての新規契約のまとめと係争関係全体を所管しています。第2グループは欧州地域を受け持ち、そのほか国内外で進める各種ジョイントベンチャーの検討、さらに部品材料の調達契約やIT関連契約なども所管します。第3グループはアジア・アセアン地域を担当し、さらに電気自動車『i-MiEV』の国内外への導入をサポートしています。電気自動車に設定した特別なリース契約や、家電量販店など新しい販路との取引も幅広く検討しています」

多岐にわたる部門支援に加え、経営判断のサポートが増加

自動車メーカーの法務業務には、どのような特徴があるのだろうか。

「自動車メーカーには、車両設計・開発、部品調達、製造、品質管理、販売、アフターサービスという業務があり、取引を行う企業も関連会社・サプライヤー・代理店など多岐にわたります。そのほか製品をお使いいただくお客さまへの対応や当社では広告媒体として貴重な浦和レッズへの支援業務もあります。これら全てをカバーするため業務は広範かつ膨大です。近年は従来の業務から一歩踏み込んだ仕事も増加しています。例えば資本提携や株式買収先企業の事業形態・経営内容を調査し、提携や買収に関する経営判断をサポートするいわゆるデューデリジェンスなど。さらに順法意識の向上・コンプライアンス強化など社内体制整備の一端を担いつつ、独禁法に沿った取引の適正化、製造物責任に起因する訴訟への対応、国際的な事業提携、合弁などあらゆる企業活動に関わります。また全体売り上げの80%を超える海外販売のサポートでは日・英文を中心とする書信類や契約書のレビューと起案、海外拠点との電話・テレビ会議を日々、行っています」

経営判断への関与が高まったのは、どのような理由からだろうか。

「2000年以降のリコール問題処理において、当社は全ステークホルダーへの責任として、過去の経営陣を訴える姿勢を取りました。それが現在の経営における順法意識の高さ、企業価値向上への強い思いにつながっており、経営陣は社会的責任・後進への責任を強く意識し、緊張感のなかでかじ取りを行っています。そういう経緯のもと、さまざまな場面において法務の助言が求められる環境ができ、私たちの存在意義が理解されるようになったのです。取締役会、常務会には必ず法務部長が臨席。また重要案件の全てが法務チェックを経るシステムができました。細かいところでは、社長や役員が外部に出す書簡も、言語問わず法務部がレビューしています」

三菱自動車工業株式会社 法務部
若手とベテランが自由闊達(かったつ)に意見交換する風土が法務部の特徴

ダイナミックかつアクティブな法務業務が魅力

法務部を率いる部長が、特に印象深い過去の事案を挙げるとしたら…

「当社は日本の自動車メーカー興隆の激動する時代を生き残り、外国企業とも各種事業提携を行ってきました。この中で、資本関係・技術提携など長く緊密な関係を持っていたクライスラー社(※)が2009年、事実上の会社更生を経て生まれ変わったことには特別な感慨があります。その際、製品の相互供給やライセンス、事業合弁などの取引関係を見直し、その多くを解消しなければなりませんでした。そして関係者全員が使命感を持って交渉に当たった結果、当社の利益と権利を確保する理想的な出口戦略が図れたのです。向かう方向と相手は変わりましたが、当社では今もさまざまな自動車メーカー、また異業種との連携が同時に進行しています。このようなダイナミックな動きはメンバーにとって刺激的でしょうし、枢要な事業検討に若手の法務担当者も入っていける、現場で事業を推進できる風土は、先輩が培ってくれた当社法務部の宝です。部としてもスキルアップのための各種施策や研修を展開。配属時研修では先輩社員と管理職が1年間かけて会社法など法務業務の基本を指導します。中堅の指導はOJT中心で、経験やスキルに応じて海外留学と法律事務所での実習も用意。米国ロースクール留学でニューヨーク州の弁護士資格を取得したメンバーもおり、アメリカ、オーストラリアの法律事務所で実習する短期研修にも多数のメンバーを送り出しています。また独禁法など法体系別の担当が主導する全体の勉強会も行っており、メンバーが自主的に始めたランチミーティングでも活発な知識共有がなされています。私がこれらの指導や自主的な活動を通じて身に付けてほしいと望むものは、法律知識や外国語を含めたコミュニケーション能力はもちろんですが、『論理的思考力』、『物事に能動的に取り組む姿勢』、常に自分を向上させたいと願う『知的好奇心』。法務部員としてのスキルアップと同時に、どこに出ても活躍できる、視野の広い社員の育成を念頭に置いて、指導をしています」

※1925年、米国に設立された自動車メーカー。ゼネラル・モーターズ(GM)、フォードとともにビッグスリーと呼ばれる巨大企業だったが、ダイムラーとの合併、同解消を経て2009年に連邦倒産法の適用を受け事実上の倒産。約1カ月でスピード再建された。三菱自動車との関連は深く1970年の三菱自動車設立は三菱重工とクライスラーの合弁による。以降、資本提携は1993年まで続いた。