今年、創立25周年となるニフティ株式会社は、設立当初のパソコン通信※1サービスから、いち早く事業軸をインターネットに移行した。同社法務部にはどのような歴史と特徴があるのか。丸橋透法務部長に取材した。
「ニフティはパソコン通信の時代からビジネスはもちろん、適用されるべき法律やルールの前例がない環境下で事業を進めてきました。つまり当社法務部は多数の〝日本初の事案〞に対処しています。『ニフティサーブ・現代思想フォーラム事件』※2は〝電子掲示板上の書き込みが名誉毀損(きそん)となるか〞〝管理者に削除すべき管理責任があるか〞を問われた日本初の裁判。二審で勝訴しました。また『ニフティサーブ・本と雑誌フォーラム事件』※3は、〝名誉毀損を受けた〞とする会員から、発言者の住所・氏名の開示を求められた裁判で、一審・二審ともに私たちの主張が受け入れられました。被害者の救済の必要性と被害を与えたとされるユーザーの表現の自由の双方をバランスよく尊重すべきとし、それが認められたのです。これらの判例はIT社会における情報発信の基本ルール『プロバイダ責任制限法』制定に大きな影響を与えています。SPAMメール仮処分、ドメインネームの裁判や仲裁にも早期より関与しています。このようにフロンティア企業として業界内の法的整備に貢献してきたこと、またサイバー刑事事件などで警察からの照会・捜査への協力実績も多数あることから、業界内外から注目され、省庁の審議会はじめOECD(経済協力開発機構)やG8など国際会議にも参加しています。先日、プロバイダ事業者が一斉に実施した『児童ポルノブロッキング』に関しても、3年前の警察庁の総合セキュリティー対策会議での議論の当初から参加。早期実現を希望するユニセフをはじめとした団体との話し合いや、業界内の協議で中心的役割を果たしました」
※ 1 世界中のネットワークを結ぶインターネットに対し、特定のサーバーとそのメンバー間だけを対象としている。1980年代後半から1990年代前半までが全盛期で、インターネットの普及にともない衰退。現在はほとんどのサービスが終了しているが、パソコン通信上のネットコミュニティの法的性質は、現在全盛のSNSと同じである。
※ 2 ユーザーによる名誉毀損は一部認められたが、ニフティの管理責任は否定された
※ 3 ユーザーの不法行為は認められず、ニフティには情報開示の責任なしとされた。