Vol.25
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「はやぶさ」の帰還は社員だけでなく株主のみなさんにも喜んでいただけた慶事だったそう。「株主総会の檀上に、はやぶさの模型を置いたら、株主のみなさんがうれしそうに写真を撮っていました」と木下肇法務部長

「はやぶさ」の帰還は社員だけでなく株主のみなさんにも喜んでいただけた慶事だったそう。「株主総会の檀上に、はやぶさの模型を置いたら、株主のみなさんがうれしそうに写真を撮っていました」と木下肇法務部長

THE LEGAL DEPARTMENT

#22

日本電気株式会社 法務部

会社の事業の深堀り+専門性の向上。“2つの軸”を磨き上げながら、事業ラインを「提案型」法務でサポート

ローテーションで自社事業を知る

「当社では、トップの意思決定をサポートしたり、社内ルールの取りまとめをするコーポレート法務グループを法務部内に置いています。他社では同様の機能を総務部など他の部門が持っている場合が多いのではないでしょうか」

木下肇法務部長は、同社法務部の特徴をそう語る。

同グループに加え、担当するビジネスユニット別に分かれる取引法務第1から第3グループの計4グループがあり、それぞれシニアマネジャー以下12〜13名ずつが在籍する。そんな総勢50名がNEC法務部の陣容である。

実は、コーポレート法務の機能を部内に置くことは、将来の法務を支える人材を育成するうえでも大きな意味があると、木下氏は言う。

「各グループは単なる担当分けという位置づけで、ローテーションをしやすくしています。だから、トップサポートと事業サポートという、企業法務に必要な〝両輪〞を経験できるのです。また、各取引法務グループが担当する仕事内容ですが、たとえば通信キャリア向けの事業と、パソコンの販売は、まったく別世界。さらに当社には、衛星『はやぶさ』プロジェクトにかかわるような事業もあります。これまた仕事の規模も中身も、まったく違う。3、4年は、各グループの担当としてどっぷり浸かり、また新しいグループで経験を積むことで、会社が何をやっているのか、それぞれの現場で何が求められているのかが十分に理解できるというわけです」

日本電気株式会社 法務部
NECの最新機種、ドコモ「MEDIAS PP N-01D」はハイスペックなスマートフォン

企業法務としての専門性を重視

キャリアアップの〝縦糸〞がジョブローテーションならば、〝横糸〞は木下氏の発案・命名による「専門性向上プロジェクト」だ。

「例えば、事業ラインから『新興国に販路を開きたいが法律はどうなっているか』と聞かれて、『さっそく情報を収集して調べます』では、情けないでしょう。会社が事業を展開するうえで必要になりそうな課題について、法務部は組織として、要望に即応できる力を持っていなければいけない」

そうした考えを背景に3年ほど前からスタートしたプロジェクトでは、会社法、独禁法、倒産法、知財法、M&Aなどのテーマを設定し、5〜8名のグループに分かれて定期的な勉強会を継続して行っている。

「メンバーに求めるのは、まず与えられた課題に対してプロになること」。半年に1回程度、成果発表を行い、部内でその知見を共有する。

「倒産法関連を勉強したチームが、多種多様な倒産案件をまとめた事例集をつくったり、とてもいい成果が出ています。私自身、プロジェクトから教えられることが少なくありません。50人の法務部隊が〝分業〞で事業部門をサポートし、部内ローテーションで、部全体の力を高める。そして、会社のビジネスを知り、法的専門性を高める。この2つの軸をうまく回してかみ合わせていけば、相当な力を持った組織になれるはず。どこまで進化できるか楽しみです」

目指すのは「事業創造型法務」

日本電気株式会社 法務部
ショールームでスマートフォンの新商品を実際に手にしながら、議論

個人のスキルアップも、その結果としての組織のレベルアップも、会社の経営と事業をよりよくサポートするためであることは、言うまでもない。

「大きなプロジェクトほど、途中でトラブルの起こる可能性が高まります。その原因を探ってみると、契約書が不利な中身だったり、曖昧だったりということが少なくない。そうしたことが起こらぬよう、できる限りビジネスユニットが事業を検討し始めた段階から、シニアマネジャークラスが会議に参加して情報を集め、意見具申を行うよう心がけています。トラブルが起こってから動く〝臨床法務〞ではなく、トラブルを未然に防ぐ〝予防法務〞〝戦略法務〞でなければなりません」

だが木下氏の視線は、さらに先を向いている。

「私は、事業をクリエイトするところに、もっと法務が貢献できるはずだと考えています。まだ案件が見えない段階から検討チームに入って、『それをやりたいなら、こんな方法がある』と、法律という道具を活用してビジネスモデルを提案するというイメージでしょうか。まだ具体的なかたちがあるわけではないのですが、常にそういった発想で仕事をしていれば、事業ラインとわれわれとの距離がさらに縮まるのは確かです」

先進的企業法務への挑戦に、注目していきたい。