Vol.31
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案件のスタートからアフターケアまで、多彩な事業を強力にサポートする気鋭の法務部メンバー(中心が沢山部長)

案件のスタートからアフターケアまで、多彩な事業を強力にサポートする気鋭の法務部メンバー(中心が沢山部長)

THE LEGAL DEPARTMENT

#33

旭化成株式会社 法務部

長く培われた現場との信頼関係をベースに、多角化する事業の法律問題に対して、的確な解決策を提案する

事業部の案件に積極的に飛び込む

「法務部の前身である総務部法務室が発足したのは、国内で化学工業が花開き始めた1975年。事業部が抱える案件に積極的にかかわっていく気風は、当時からあったと聞いています」

同社法務部の特徴を、上席執行役員総務部長兼法務部長の沢山博史氏は、そう話す。

「例えば合弁を模索する相手と最初に会いに行く段階で、我々にも同行するように声がかかります。ちなみに、法務部は海外渡航費の枠を持っていないので、海外出張の場合は事業部負担で行くわけです。社内でもちょっと珍しい慣習だと思いますよ」

同社は、ケミカル・繊維、住宅・建材、エレクトロニクス、ヘルスケアの〝4本柱〞を主な事業としており、持株会社の下に合わせて9つの事業会社(1社は米国子会社)を持っている。

法務部は総勢14名の体制。2つのグループがあり、それぞれに事業会社と持株会社の案件が振り分けられている。

沢山氏は折に触れ、部員に対して「我々は、法務部の仕事をして給料をもらっているけれど、その前に一人のビジネスマンであるべき。現場では法律的にダメと言うだけではなくて、どのように変えれば適法になるのかという提案をしてほしい」と強調する。そうした重要な意見交換の場が、月に2回開かれるグループ法務全体会議である。

「各事業会社にも、専任ではありませんが法務担当者がいます。従来は部内だけで会議をやっていたのですが、今はグループの法務担当も含めた総勢30名ほどで、組織の垣根を越えた様々な案件に対するアイデアを出し合っているのです」

旭化成株式会社 法務部
法務部と事業会社法務担当が一堂に会するグループ法務全体会議では、活発な意見交換が行われる

また、30年前に、業界でもいち早く、法務部独自の海外留学制度をスタートさせている。1年半ロースクールに通い、その後半年間、現地のローファームで仕事をして帰国するという、2年間のコースが基本だ。

「これまでに、のべ15人ほどがこの制度を利用し、大半が米国に留学しました。現在も留学中の法務部員が1名います。当然ですが、帰国後は全員、例外なく英語の上達ぶりに目を見張ります。また、米国の法制度は現在世界の法制度に強い影響を与えていますから、その理解が深まる点においても、大変意義深い制度だと実感しています」

実は同社は昨年、医薬品のライセンス契約に関連しスイスの企業を訴えていた米国での裁判で、日本円にして約400億円の支払いが命じられるという第一審勝訴判決を得た。

「陪審で日本企業に対する多額の賠償が認められたのは画期的。部を挙げての粘り強い努力に加え、先を見越した人材育成も大いに寄与しました」

キャリア採用を活発化する理由

そんな同社は、このところ法律事務所や他社法務セクション経験者などのキャリア採用に積極的だ。現在、部内には社員弁護士が2名いる。11年入社の前田絵理氏と、12年入社の五十嵐佳奈子氏だ。ともに東京都内の法律事務所で働いていた経験がある。前田氏の転職のきっかけのひとつは、結婚して子どもを産んだこと。「子育て、家庭とのバランスを考えると企業のほうが働きやすい。また、企業法務の仕事をするなかで、直接ビジネスの現場で働いてみたいという思いが強くなった」。

旭化成株式会社 法務部
「法律事務所での経験を、十分生かすことができています」と語る、インハウスロイヤーの前田氏(左)と五十嵐氏

五十嵐氏は、「法律事務所勤務を通じて、企業のビジネスに近い場所で働きたい」と考えるようになり、同社のインハウスロイヤーへの道を選んだ。

「案件の最初から関与して、アフターケアまでかかわれる充実感は、法律事務所で経験できなかったものです」(前田氏)、「事業部の人たちに頼りにされ、それに応えるために知恵を出すという仕事に、大きなやりがいを感じます」(五十嵐氏)と、新天地の感想を語る。

沢山氏は、「専門家に入ってもらったことで、間違いなく議論のレベルが上がりました。法律事務所で経験を積んだ二人のような人材が来てくれたのは、非常にありがたい」と語る。

最後に、法科大学院生へのメッセージを聞いた。

「企業の法務で働くことを希望するのであれば、弁護士資格の有無はそれほど重要ではありません。会社員になるという強い決意を持って挑戦してほしいですね」と沢山氏。

そして、企業内弁護士を目指している方に対し、弁護士の二人は、「何年か法律事務所で経験を積んでからのほうが、企業の生え抜きの人材とは違った視点で意見が言えるため、付加価値が高まると思います」(前田氏)、「法務部も外部の法律事務所と連携して仕事をすることがあります。その際に、弁護士の働き方や考え方を理解しているからこそ、貢献できることが多いのです」(五十嵐氏)と、弁護士が企業に転職するメリットを語ってくれた。