Vol.35
HOME法務最前線株式会社サカタのタネ 法務部
  • ▼弁護士のブランディング支援サービス

    Business Lawyer's Marketing Service
  • ▼弁護士向け求人検索サービス

    想いを仕事にかえていく 弁護士転職.JP
  • ▼弁護士のキャリア形成支援サービス

    弁護士キャリアコンシェルジュ
  • 当社サービス・ビジネス全般に関するお問い合わせ

本社社屋横にある、同社開発の花卉などを展示する温室「グリーンプラザ」に集合した、法務部メンバー

本社社屋横にある、同社開発の花卉などを展示する温室「グリーンプラザ」に集合した、法務部メンバー

THE LEGAL DEPARTMENT

#40

株式会社サカタのタネ 法務部

一般法務と知財管理のコラボで研究開発型企業にふさわしい法務サービスを提供する

重要な意味を持つ知財管理

株式会社サカタのタネ 法務部
グループスローガン「PASSION in Seed」をタネが囲む100周年ロゴ

ホームセンターのガーデニングコーナーなどで、「サカタのタネ」のロゴの入った種子袋を目にしたことがある人は多いはず。生産農家や一般消費者向けの野菜や花の種、苗などの生産、販売で世界有数の実績を誇る同社は、今年創業100周年を迎えた。近年、グローバル展開も加速し、海外19ヵ国に関係会社32社を持っている。

2002年に総務部法務課から改組された法務部には、現在、赤松豊和部長のほか5名の部員が在籍する。

「契約文書の作成やチェック、クレーム処理などに関する法律相談などを行う一般的な法務機能に加え、知的財産の管理、それにコンプライアンスのサポートが、仕事の3本柱です」と赤松氏は話す。

種苗ビジネスにとって、知財管理は決定的に重要な意味を持っている。

株式会社サカタのタネ 法務部
ロビーには創業100年の歩みがパネルで展示されている

「品種登録に関しては、研究本部で登録を担当しているので、法務部としてはそこと連携しつつ、ケアを行っています。仮に当社の品種の違法増殖が明らかになったりした場合には、権利侵害の拡大を防ぐために適切な手を打つのです。商標も大事ですね。一例を挙げると、当社では赤くなってから収穫しても輸送中に傷みにくいトマト品種群を『王様トマト』として登録、販売しています。それらを一つのグループにしたうえでブランド化し、管理を行っているわけです」

商標登録は国内もさることながら、途上国での権利侵害を防ぐうえでも、最大の武器になっている。

「また特許については、植物に関して専門性の高い特許事務所などと相談しながら対応しています。自らの成果物の権利化と同時に、当社のビジネスに影響を与えそうな他社の特許申請を監視し、権利化に値しないものは認めさせない、というのも我々の重要な任務なのです」

部内には、入社後に弁理士資格を取ったメンバーもいる。

株式会社サカタのタネ 法務部
一般の法務担当も知的財産管理担当も、同じ組織で学び合う。ミーティングでは、技術的な話題が飛び交うことも多々

現場をサポートするサービス業として

ところで、赤松氏はもともと研究畑出身。二十数年前には、同社の特許第1号「細胞質雄性不稔技術」を開発している。部員のうち2名も、やはり研究開発部隊からの転身だ。

「当社は典型的な研究開発型企業。加えて、植物という特殊な世界を対象にしています。知財管理をしっかりやろうと思ったら、技術に対するある程度の専門知識が、必要になるのです」

例えば同社の研究本部が大学との共同研究を行う場合などには、法的な契約を担当する部員と知財のエキスパートが協力してフォローする。

「もっと大きな企業では、知財部門が独立して置かれているところが多いと思います。ただ両者が一つの組織にいることで、現場のニーズに対して柔軟に対応できるし、何よりもお互いに学習し合えるというメリットがあります」

法務の役割を「サービス業であるべき」と赤松氏は言う。

「研究の現場が結果を出すために、あるいは営業の仕事がスムーズに進むためにお手伝いする。当然、リスクについてのマネジメントは必要ですが、頭ごなしに『それはやめろ』というスタンスでは、業務を停滞させるだけですから」

今後ますます加速が予想されるグローバル化への対応も、法務にとって重要な課題になる。

「当社の場合、日本で開発した品種や技術を海外で権利化する、というパターンが圧倒的に多い。そうした権利をしっかり守っていかなくてはいけません。同時に相手側の権利を侵害しない、という姿勢も大切です。研究開発を目的に途上国から素材を持ってこようとすると、『生物多様性条約違反』を理由に拒否されるような事例が最近聞かれるようになりました。そうした新たな動向も踏まえつつ、グローバル時代にふさわしい法務部として、いっそうのレベルアップを図りたいと考えています」

  • 株式会社サカタのタネ 法務部
    「ピッコローサニュースノー」(トルコギキョウ)、「グリーンキャノン」(ブロッコリー)(2)、「パシオ」シリーズ(パンジー)(3)。いずれも同社が100周年記念品種として発表したもの
  • 株式会社サカタのタネ 法務部
    (2)「グリーンキャノン」(ブロッコリー)
  • 株式会社サカタのタネ 法務部
    (3)「パシオ」シリーズ(パンジー)