〝同社ならでは〞の案件を例に、現体制の効果を藤原氏に尋ねた。
「現在、三菱レイヨンは海外売上高比率が約7割で、MMAでは世界トップ。中東でのジョイントベンチャーや米国での新規投資など、海外案件のウエートが高くなっており、その事業展開を国際法務の2グループがそれぞれ地域ごとにサポートしています。中国では、MMAを対象にしたアンチダンピングが提訴されており、いわば〝守りの法務〞、中東や米国での案件は〝攻めの法務〞と性質は異なりますが、所属会社を越えて地域で担当を分けることで、それぞれの国の法律・事情に精通したメンバーが担当し、若手の育成にもつながります」
また、三菱レイヨンのPAN系炭素繊維と三菱樹脂のピッチ系炭素繊維は、用途的に重なる面が多く相互補完できるため、国際競争力を高める目的でグループ内での事業統合を実施。
「三菱樹脂が事業譲渡を行ったかたちですが、以前なら同じグループとはいえ2社間で契約交渉しなければならないところ、事業価値の最大化を図るということで我々の目的は一つであり、全体最適を考え、大きな利害の対立もなく効率的に契約を進められました。この事業統合はグループ内の話ですが、現法務体制の効果という点で、象徴的なエピソードです」
採用計画については、「今は年齢・キャリアのバランスがちょうどいい。今後は自社で採用・育成できる体制を整えることも考えていきます。また米国、中国、ドイツにも直接出資のシェアードスタッフカンパニーがあるので、各拠点と日本の人材ローテーションも行いたい。国籍を問わず、グループのカルチャーや法務戦略を日本で体験した人が、現地でマネジャー的な役割を担ってくれるのが理想。グローバルなネットワークの中でそのローテーションに叶う即戦力が今後必要になる」そうだ。
「法務は専門家であるがゆえに、経営からも意見を求められるし、もの申すこともできる。経営にかかわるプロジェクトにも早い段階から参加できる。つまり〝経営に近い〞ことが、法務の面白さ。有資格者でなくても別業界でもいい、事業会社でグローバルな法務経験を持つ優秀な人材に、ぜひ当社へ来ていただきたいです」