インターネット領域でアドテクノロジー事業、メディア事業を軸に約15の子会社を持つ同社。ベンチャー的気風を大切に、新事業・新サービスを次々と世に送り出す東証一部上場企業だ。法務本部7名で、その全事業を担当する。渡部俊英本部長に、業務について聞いた。
「国内、海外契約審査、事業リスク管理、コンプライアンス業務、および訴訟対応、М&A・事業提携などが主な業務です。コーポレート部分はもちろん、アドテクノロジー事業、メディア事業など事業領域ごとに各自複数の担当案件を持ちます。インターネット技術は日進月歩、しかし法律はそのスピードに追いついていないのが実情。ガバナンスやコンプライアンスに照らし、〝法律はないが、企業としてどうあるべきか〞〝事業を進めるために法務として何をすべきか〞について、自ら判断し行動することが常に求められます」
具体例を、松本泰典氏は次のように語る。
「当社はアドテクノロジー事業のビッグデータ活用において、2014年より産学連携事業を行っています。そこでパーソナルデータを収集する必要があるものの、現在の個人情報保護法ではグレーゾーンに入ってしまう内容が多々ある。法律がカバーしきれていない分野で、企業としてどうすべきか知恵を絞らなくてはなりません。〝事業開発会社〞である当社では、新たな分野への挑戦、事業創出の過程で様々な法律問題に直面しますが、それをいかに乗り越えるかが醍醐味です」
いかなる難題にもスピード感を持って対処しなくてはならないことも特徴の一つ。小・中規模のМ&Aや出資に際して「来週の取締役会で決めるからそれまでにデューデリを」という案件もあった。М&A・出資についていえば数百万から数千万円規模の案件が、検討ベースで月に10件程度あり、質のみならず量の対応力も問われる。日々の仕事について松本氏は言う。
「企業法務は法律に軸足を置きながらも、レピュテーションリスク、財務・税務面も視野に入れ、法律判断とビジネス上の判断を同時に行います。一緒に事業をつくっているという実感が得られることが楽しいですね」
松本氏は入社間もない頃、〝VOYAGE LAB〞という新規プロダクト創出の場で、5人の若手が各自新たに開発したアプリの適法性をその場で検討、利用規約やプライバシーポリシーを〝すぐつくる〞という経験をした。「すごい会社だなと思いました」と笑う松本氏。同社の営業担当や技術者にとって法務部は特別な存在ではなく、一緒に事業をつくっていく身近な仲間であることを示す例だろう。