Vol.57
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研究員15名を含めて、財団の職員数は22名。自然エネルギー分野、国際的な団体での経験を有する役員、研究員が揃う

研究員15名を含めて、財団の職員数は22名。自然エネルギー分野、国際的な団体での経験を有する役員、研究員が揃う

THE LEGAL DEPARTMENT

#72

公益財団法人 自然エネルギー財団

自然エネルギーを基盤とする社会構築への政策提言、調査研究を法的観点から支援

政策提言まで行う新たなシンクタンク

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を受けて、ソフトバンクグループの孫正義氏が2011年8月に設立した自然エネルギー財団。国内外の企業・自治体などとネットワークを構築し、自然エネルギー政策の調査研究や提言、情報発信を行うシンクタンクだ。常務理事の大野輝之氏に、同財団が今、力を入れている活動を尋ねた。

公益財団法人 自然エネルギー財団
設立趣旨・目的は「自然エネルギーを基盤とする社会の構築」「自然エネルギー普及のための市場や社会の力を活かした政策、制度/金融・ビジネスモデルの研究、構築、および提言」「自然エネルギー普及に関する国内および国際的な活動組織との連携と自然エネルギーに関する認知向上のための広報活動と支援」

「COP21で合意されたパリ協定により、自然エネルギーへの注目が年々高まり、化石燃料産業への投資撤退が急速に広がりました。そうした時流を報告書にまとめ、国内の関係省庁・企業・団体に向けた提言を積極的に行っています。また当財団は、設立時より日本、韓国、中国、モンゴル、ロシアを結ぶ国際送電網をつくる『アジアスーパーグリッド(以下ASG)』構想を掲げています。昨年3月、中国の送電最大手・国家電網公司の劉振亜氏が会長を務める『GEIDCО』という国際的非営利団体が設立され、当財団も理事会メンバーとして加わりました。海外では国際送電網拡大への動きが加速していますが、国内では、電力会社の地域間連系議論が始まったばかりで、国際送電網の是非については議論すら起こっていません。そこで我々は現在、日本でも本件に関する議論の場をつくり、できるだけ早く合意形成を図るためのアクションをしていきたいと考えています」

  • 公益財団法人 自然エネルギー財団
    経済産業省や環境省にもほど近い、西新橋(東京都港区)のビルに移転したばかり。木の温もりと清潔感に溢れたオフィスだ。
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    会議室や職員の休憩室には、それぞれ「WIND」「GEO」「HYDRO」など、自然エネルギーにちなんだ名前が付けられている

電力制度改革の一端を担う研究職

現在、同財団所属の研究員は15名で、それぞれが「ASG」「自然エネルギー政策」「自然エネルギービジネス」「気候変動対策」という4つのグループに分かれて活動している。昨年9月に採用された弁護士の工藤美香氏は、ASGグループに所属し、国内外の電気事業関連法や国際的な送電事業・電力取引に関する法制度を調査研究している。

一般的な〝法務〞業務との相違点とやりがいを工藤氏本人に聞いてみた。

「自然エネルギー事業関連のプロジェクト・ファイナンスに関与する弁護士はかなりいると思います。しかし私は、そのビジネスを実際に進める制度を考えることが仕事。ゆえに、政策的な発想で物事を見極めなければなりません。特にASGはビッグプロジェクトで、調査すべき範囲が広い分、試行錯誤しながら要点を探究していく作業が、とても面白いと感じています」

弁護士資格を持った研究員として、本分野における調査研究や政策提言に携わる工藤氏は、まさに国内のパイオニア的存在といえる。大野氏は、工藤氏への期待を次のように語る。

「ASG構想が急速に動き出したものの、電気事業法や先行する海外の国際送電網の制度的な仕組みなど、詳細を調査研究できる専門人材がおらず、準備万全のスタートとはいえませんでした。しかし工藤さんが加わり、複数国をつなぐ場合の法的課題を抽出した報告書を作成することができました。この報告書を素材に、様々なステークホルダーとのミーティングを開催しますが、その場には彼女にも入ってもらう予定です」

「国内外で人的ネットワークを広げ、より深い調査や情報収集をし、アウトプットの機会を増やしていきたい」と工藤氏も意欲的だ。大野氏は言う。

「電力ビジネスも、それに伴う法制度もどんどん変化していきます。我々が説得力と実効性のある提案をしていくために、様々な知識・経験を持つ人材がさらに必要になります。工藤さんのような優れた研究員が数多く集結した、日本を代表する新たなエネルギー政策を提言できるシンクタンクとして発展していくことが目標です」

工藤氏から、若手法曹人材に向けたメッセージをもらった。

「自然エネルギー分野は、海外では環境政策のNGOなどでも、たくさんの弁護士が活躍しています。日本ではまだ小さな領域ですが、これから拡大していくことは間違いありません。つまり、今始めれば、日本でのパイオニアになれるのです。既存の〝弁護士の仕事〞だけにとらわれず、時代がどこに向かおうとしているのか一歩先を見る、流れを読むことを意識して、自分らしいオリジナルのキャリアをつくっていってください」

  • 公益財団法人 自然エネルギー財団
    休憩室で打ち合わせや議論を行うことも多々
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    集中しやすい環境のデスクスペース。「英語の文献を読む作業は職場での時間が最も集中できます。ですから仕事はあまり持ち帰りませんね。裁量労働制なので自分で時間も調整しやすい」と工藤氏。パーティションに貼られたかわいい絵は、工藤氏の愛息・愛娘作