現在、同財団所属の研究員は15名で、それぞれが「ASG」「自然エネルギー政策」「自然エネルギービジネス」「気候変動対策」という4つのグループに分かれて活動している。昨年9月に採用された弁護士の工藤美香氏は、ASGグループに所属し、国内外の電気事業関連法や国際的な送電事業・電力取引に関する法制度を調査研究している。
一般的な〝法務〞業務との相違点とやりがいを工藤氏本人に聞いてみた。
「自然エネルギー事業関連のプロジェクト・ファイナンスに関与する弁護士はかなりいると思います。しかし私は、そのビジネスを実際に進める制度を考えることが仕事。ゆえに、政策的な発想で物事を見極めなければなりません。特にASGはビッグプロジェクトで、調査すべき範囲が広い分、試行錯誤しながら要点を探究していく作業が、とても面白いと感じています」
弁護士資格を持った研究員として、本分野における調査研究や政策提言に携わる工藤氏は、まさに国内のパイオニア的存在といえる。大野氏は、工藤氏への期待を次のように語る。
「ASG構想が急速に動き出したものの、電気事業法や先行する海外の国際送電網の制度的な仕組みなど、詳細を調査研究できる専門人材がおらず、準備万全のスタートとはいえませんでした。しかし工藤さんが加わり、複数国をつなぐ場合の法的課題を抽出した報告書を作成することができました。この報告書を素材に、様々なステークホルダーとのミーティングを開催しますが、その場には彼女にも入ってもらう予定です」
「国内外で人的ネットワークを広げ、より深い調査や情報収集をし、アウトプットの機会を増やしていきたい」と工藤氏も意欲的だ。大野氏は言う。
「電力ビジネスも、それに伴う法制度もどんどん変化していきます。我々が説得力と実効性のある提案をしていくために、様々な知識・経験を持つ人材がさらに必要になります。工藤さんのような優れた研究員が数多く集結した、日本を代表する新たなエネルギー政策を提言できるシンクタンクとして発展していくことが目標です」
工藤氏から、若手法曹人材に向けたメッセージをもらった。
「自然エネルギー分野は、海外では環境政策のNGOなどでも、たくさんの弁護士が活躍しています。日本ではまだ小さな領域ですが、これから拡大していくことは間違いありません。つまり、今始めれば、日本でのパイオニアになれるのです。既存の〝弁護士の仕事〞だけにとらわれず、時代がどこに向かおうとしているのか一歩先を見る、流れを読むことを意識して、自分らしいオリジナルのキャリアをつくっていってください」