同社では「スクラム」というチームビルディング手法を採用している。これはソフトウエアの開発手法の一種で「コミュニケーションを特に重視し、少人数で協力し合いながら、短期間で最大限の成果を達成する」というもの。もちろん法務も業務遂行時にフル活用している。
「例えば年に1回のビッグプロジェクトである株主総会業務は、総務、IR、財務などの管理部門と、事業部門の社員が複数かかわります。私たち法務だけが主旨やタスクを理解するのではなく、プロジェクトメンバー全員がタスクの進捗などを共有することで、プロジェクトの動きを鈍らせることなく、スムーズに株主総会当日を迎えることができています。そのための基本は、ボードに付箋を貼ってタスクを見える化し、チーム全員で管理していくこと。ただしこれは、〝管理者〞が〝管理〞をするために行うのではなく、各人が課題に気づき、チーム全体の改善を促すためのツールです。ですので各人が進捗状況をチェックしながら、タスクを書いた付箋を自発的に貼り替えて進めています。スクラムのおかげでタスクに振り回されることなく、より専門性の高い業務にパワーを使える。ちなみに、日常業務でもスクラムを活用しており、残業時間が減るという二次的効果もあり、全体の生産性も高まりました」
同社法務グループの業務の特徴として、契約についていえば、「締結するまでと、その後どうやって契約に則った業務を行っていくか、そのためにどんな仕組みをつくるべきか」という、〝運用ルールの策定〞が求められる。日常的な法律相談のほかに事業をスムーズに推進するためのブレーン的な役割も要求されているわけだ。
最後に、今後どんな法務組織をかたちづくっていきたいかを聞いた。
「法務だけではなく、様々な周辺分野にかかわるようになってきました。従来の法務業務に固執せず、柔軟に、しかし法律に携わる専門家としてのプロ意識を大事に、〝会社を一緒につくっていく〞という意気込みで取り組んでくれる仲間と働きたい。私はそう思っています。一人ひとりの専門スキルの向上はもちろん、関連部門を巻き込むようなプロジェクトを自ら回し、さらには社外に対しても影響をおよぼせるような人材が集う――そんなプロフェッショナル集団にしていきたいですね」