國吉氏は、「会社目線に立つということは、ビジネスの仕込みの段階から、営業と一体になって動かねばならない。我々はコンサルタントではありませんから」と言う。
「例えば、インドのある取引先で15億円という巨額の売掛債権の滞留が発生、回収のために現地へ飛び、ムンバイにある当社拠点の営業所長と2人で取引先との交渉に臨んだことがあります。1年がかりで、インドの外為法のレギュレーションを利用して新たな回収の仕組みを生み出し、全額取り戻しました。また、営業から持ち込まれた海外での企業買収案件については、『会社目線で見ればすぐに買うべきではない』と判断して、営業をいったん説き伏せ、会社にとってプラスになるかたちでディールクローズした案件もありました。そんな時は、電話会議で拠点の担当者を懸命に鼓舞し、あるいは机をこぶしで叩きながら営業と大ゲンカするといったこともしばしばでした(笑)」(國吉氏)
法務第一でシニアマネジャーを務める志賀口暢之氏も、「商社の人間は我々法務担当も含め、そうやって当事者意識を持って自ら考え行動することで人や会社を動かしていかなければならない。ただし〝上から目線〞で強制することはない。法務パーソンとしての高い専門性とスキルを発揮しつつ、相手と対等に力を出し合いながら業務を進めるインターアクションも、商社法務の醍醐味のひとつですから」と語る。
同社法務部の仕事では、国内はもとより海外出張も多い。当然、海外との電話会議なども頻繁に行われているそうだ。國吉氏は付け加える。
「全世界に広がったネットワークを駆使して情報収集、市場動向を把握し、取引をイメージしながら弁護士や現地の人材を動かす――リーガル面から事業全体の最適化を果たすために、それらすべてをマニピュレートするということも、商社における法務の仕事のやりがいではないでしょうか」
当然、英語力は必須となるが、それは仕事をするうち否が応でも身についていくそうだ。同社の場合、株主である三菱商事の海外法務部局で研修を受けたり、海外のロースクールへ留学できる可能性もある。
「商社の法務に限らず、どんな仕事でも英語が使えれば、もっと面白くなるはずです。それに、そもそも法律を学んでいる方は、『法律という世界共通言語を持っている』と私は考えます。徹底的な事実分析のもと、権利と義務を軸に、取引関係や種々の問題を整理・構築・解決する思考方法は、実は全世界共通だと思うのです。若い人たちには仕事を通じて、そうした〝法律家共通のパラダイム〞を学ぶ喜び、そして自分の能力が向上する喜びを体感してほしい。そうしたモチベーションのもと、会社目線で自分の仕事を捉え、プロアクティブに日々の仕事に取り組める方が、メタルワンの仲間に加わってくれることを願っています」(國吉氏)