法務部では、各グループの担当業務に加えて、「検討依頼」と呼んでいる法律相談や契約書検討などが数千件も寄せられる。「頼まれた相談は全部受ける」が信条で、駐車場の契約など小さなものまで対応しているそうだ。この担当割り振りを行う深栖氏に、特徴的な検討依頼をうかがった。
「先に述べたとおり、当社では2015年より『スマートコンストラクション』というソリューションを提供しています。これは、ICT建機やドローンなど新たな技術を活用し、建設現場のあらゆるモノをデータでつなぎ施工を見える化することでお客さまの現場の安全性や生産性の向上を実現するソリューションであり、スピーディなビジネス展開のため、オープンイノベーションの手法を採用。そのため、本件にかかわる他社との契約がかなり増加しています」
また近年、コマツの名前がメディアを賑わせたのは米国鉱山機械メーカー「ジョイ・グローバル社(現コマツマイニング㈱)」の買収だ。PMIは順調で、ビジネス補完やシナジー効果の期待が高まっている。
「旧ジョイ・グローバル社は売上高3300億円(当時)と企業規模が大きく、全世界でオペレーションを展開する企業でした。この会社の買収プロジェクトでは法務部の多くのメンバーが奔走しました。関連する国々での独占禁止法上の届出などの諸手続きを迅速に行うため、関連する法律事務所、全世界のローカルの弁護士などと毎日やりとりをしながらクロージングにこぎつけた案件です。法務部内外での〝チームワーク〞の高まりを実感するプロジェクトでした」と、村上氏。
この時、独禁法上の届出などにかかわったのが第三グループ・グループマネジャーの高橋香緒梨氏。高橋氏は、グローバル案件へ関与する機会も多い。
「海外のプロジェクトなどでは、事業部門と力を合わせて交渉も行うわけですが、法務部としては法的な問題点を交渉により合意に持ち込むことはもとより、案件をまとめるために経営陣が意思決定をするために必要な問題を整理することも要求されます。この仕事のなかで、法務の枠を超えたアドバイスを要求される場面も多くあり、非常に貴重な経験になっています」(高橋氏)
「毎月、誰かが必ず海外に出張している」と村上氏。こうしたグローバル案件への対応強化も見据えて、留学も積極的に支援している。「入社後一定の期間を経て、コマツの事業や法務の業務を理解した後、本人意向も踏まえ、留学を支援。現地の大学院修了後は、現地法律事務所や当社現地法人で実務研修も可能。中国、ブラジル、チリやオーストラリアなどで研修したメンバーもいます。留学中にニューヨーク州司法試験に合格した者も5名います」と、高橋氏が説明してくれた。