スペースマーケットは、イベントスペースや会議室など様々なスペースを時間単位で貸し借りできるプラットフォームを運営するベンチャー企業。貸し借りできるスペースには、遊園地や寺院などユニークなものもある。2014年の設立以来、1万件を超える日本全国の貸しスペースをWeb上に掲載、「スペースシェアリング・プラットフォーマー」として知られる存在だ。同社がシリーズBの資金調達をした16年に法律事務所からの〝出向〞という形で参画したのが石原遥平氏。いわゆる〝一人法務〞でのスタートだった。石原氏は、当時を次のように振り返る。
「入社当時、社員数は社長を含めて十数名。人事、財務・経理、法務などの管理業務を一人のスタッフが担当していました。そこで私が最初に行った仕事は契約書の製本(笑)。それまでは事務局にお任せしていたので、製本テープを使ったことはほとんどなく、お世辞にも貼り方がうまいとは言えませんでしたね。そんなところから〝法務〞をつくり上げていったわけですが、今でも営業や企画業務も含めて、弁護士業務の範疇を超えて、楽しみながらなんでもやります」と、笑う。
現在の社員数は約60名で、その多くはエンジニアとデザイナーだ。彼らが馴染んでいるタスク管理アプリを用いて契約書チェックを仕組み化し、ビジネスモデル検討ミーティングに参加することを慣例化。ビジネススキームが出来上がる前に法務的観点でアドバイスを行うなど、「相談しやすい環境をつくり、積極的にコミュニケーションをとるように心がけてきた」と言う。
昨年末にはシリーズCの資金調達も果たすなど、着実に成長を続けている。今後のさらなる成長を視野に入れた体制強化のため、この10月から新たに宇根駿人氏が法務担当として参画した。
「上場を含むさらなる会社の成長を目指すうえで、ガバナンスやコンプライアンス体制の強化に尽力したいと思います。また、法律事務所ではなかなかできなかった、積極的なビジネスへの関与――戦略法務的な観点で、事業を盛り立てていきたい。私は知的財産権を得意分野としていますので、その観点からも当社の事業発展に寄与したいと考えています」(宇根氏)
石原氏は言う。
「ベンチャーならではだと思いますが、〝経営陣との近さ〞には本当に驚きます。私たちが述べた意見がそのまま経営陣の意思決定につながる怖さもありますが、その分、やりがいは大きい。法律事務所の弁護士なら、『あとはビジネスジャッジです』とお客さまにバトンを渡せますが、企業法務では自分自身が当事者であり、決断をせねばなりません。それは慣れていくものだとは思いますが、いまだに責任の重さと楽しさの間でドキドキしながら仕事をしています」