法務最前線:2019年10月号 Vol.70

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

※掲載記事の内容は取材当時のものです。

成長著しいベンチャー企業の法務には、経営陣の意思決定にかかわれる喜びがある

法務最前線

株式会社スペースマーケット コーポレート部 法務担当

経営に直結する判断が求められる

 スペースマーケットは、イベントスペースや会議室など様々なスペースを時間単位で貸し借りできるプラットフォームを運営するベンチャー企業。貸し借りできるスペースには、遊園地や寺院などユニークなものもある。2014年の設立以来、1万件を超える日本全国の貸しスペースをWeb上に掲載、「スペースシェアリング・プラットフォーマー」として知られる存在だ。同社がシリーズBの資金調達をした16年に法律事務所からの〝出向〞という形で参画したのが石原遥平氏。いわゆる〝一人法務〞でのスタートだった。石原氏は、当時を次のように振り返る。「入社当時、社員数は社長を含めて十数名。人事、財務・経理、法務などの管理業務を一人のスタッフが担当していました。そこで私が最初に行った仕事は契約書の製本(笑)。それまでは事務局にお任せしていたので、製本テープを使ったことはほとんどなく、お世辞にも貼り方がうまいとは言えませんでしたね。そんなところから〝法務〞をつくり上げていったわけですが、今でも営業や企画業務も含めて、弁護士業務の範疇を超えて、楽しみながらなんでもやります」と、笑う。
 現在の社員数は約60名で、その多くはエンジニアとデザイナーだ。彼らが馴染んでいるタスク管理アプリを用いて契約書チェックを仕組み化し、ビジネスモデル検討ミーティングに参加することを慣例化。ビジネススキームが出来上がる前に法務的観点でアドバイスを行うなど、「相談しやすい環境をつくり、積極的にコミュニケーションをとるように心がけてきた」と言う。
 昨年末にはシリーズCの資金調達も果たすなど、着実に成長を続けている。今後のさらなる成長を視野に入れた体制強化のため、この10月から新たに宇根駿人氏が法務担当として参画した。「上場を含むさらなる会社の成長を目指すうえで、ガバナンスやコンプライアンス体制の強化に尽力したいと思います。また、法律事務所ではなかなかできなかった、積極的なビジネスへの関与――戦略法務的な観点で、事業を盛り立てていきたい。私は知的財産権を得意分野としていますので、その観点からも当社の事業発展に寄与したいと考えています」(宇根氏)
 石原氏は言う。「ベンチャーならではだと思いますが、〝経営陣との近さ〞には本当に驚きます。私たちが述べた意見がそのまま経営陣の意思決定につながる怖さもありますが、その分、やりがいは大きい。法律事務所の弁護士なら、『あとはビジネスジャッジです』とお客さまにバトンを渡せますが、企業法務では自分自身が当事者であり、決断をせねばなりません。それは慣れていくものだとは思いますが、いまだに責任の重さと楽しさの間でドキドキしながら仕事をしています」

業界全体を盛り上げる立役者になれる

 関与する領域は「おそらく一般的な企業法務に比べるとものすごく広い」と石原氏。「契約書作成・チェック、コンプライアンスチェックのほか、取締役会や株主総会対応、労務関係対応、資金調達絡みの業務などがありますが、それ以上に多いのは広報との連携業務です。リリース書類の文案づくり、文面におけるリスクの排除のための作業が相当数あります。無事に上場できれば継続的に開示関係業務も生じるので、広報連携は今後も継続していくでしょう」
 ほかに、ストックオプションや持株会に関する事案も受け持つ。「一般的な法務の枠にとらわれず、社員がモチベーション高く、長く働いてくれる仕組みや制度をつくるといったこともしています」
 また同社では、石原氏を含む3名が一般社団法人シェアリングエコノミー協会の事務局を務め、シェアリング業界全体のルールづくりや自治体連携にも参加している。民泊新法の成立の際には、業界の意見の取りまとめやロビイング活動も行った。「法務担当の業務の一環で行っています。当社ではこの業界団体を通じて自治体との連携事業も受注。地銀や地元企業とともに地方の空きスペースの活用に取り組み、地方活性化に貢献してきました。また、内閣府官房IT総合戦略室の協力を得て、シェアリングエコノミー認証制度を策定し、その申請・審査・認証などの仕組みづくりから統括・運用業務までを継続して行っています。我々は『ロビイング2・0』と呼んでいますが、政府、民間、そして弁護士などのパブリックセクターが集まって〝平場で議論〞し、社会問題の解決を目指すもので、従来のロビイングとは少しイメージが違っていると思います。ただ、私たちビジネス側にいる人間が、そこに集まった人たちから信頼を得なければ、この活動はうまくいきません。私たちのようなインハウスローヤーの存在価値は、まさにそこにあると思っています。業界団体への関与、そうしたロビイング活動は、社会を変えるお手伝いができるという意味で面白く、弁護士としてかかわれてよかったと思う業務の一つです」

新事業を自ら開拓していく醍醐味

 シェアリングエコノミーという概念および事業は、日本国内では比較的新しいものだ。民泊新法しかり、企業が生み出すサービスに法律が追い付かず、グレーゾーンを解消しながら走らなければならない場面は、今後もたくさん生じることが予想される。「立法事実を設定して法律をつくるには、最低でも3〜5年はかかります。しかしビジネスは基本的に1年単位かそれよりも早く変化していく。インハウスローヤーは、その両方を見据えながら、最新の情報をどうキャッチアップしていくかといったセンス・能力が必要。私自身がそうでしたが、自分が新しい法律の制定や制度の策定にかかわれたということは、弁護士として非常にいい経験になりました。ぜひそうした喜びを若い世代の弁護士にも経験してほしいです」と石原氏。
 ベンチャー企業の法務業務は、まだ誰も試したことがない領域に挑戦できる。しかし、そこで活躍できるようになるには、何らかの心構えが必要なのではないか。「ベンチャーにありがちな〝一人法務〞の場合、上司は社長や取締役。いわゆる、一般的な上司はいません。だからこそ面白い!
 入社してすぐは、周りの皆さんがそもそもどのように仕事を依頼してよいかもわからないこともあって、弁護士としてすべきことは実はそれほどないことが多いのです。弁護士としての仕事ではないと思うことでも、自分ができること、気づいたことはなんでもやりながら、〝自分で仕事の種を蒔き、刈り取り、そうして自分の仕事を増やしていく〞というかかわり方になるでしょう」
 最後に、石原氏がベンチャー企業のインハウスローヤーとして働く魅力について教えてくれた。「よく言われる話ではありますが、私が実感しているのは、インハウスローヤーはビジネスの最初から最後まで当事者としてかかわれるということでしょうか。そして、ベンチャーであるがゆえに、なんでもやらねばならない、逆に言えばなんでもできるということも魅力です。もっと多くの弁護士が法律事務所とビジネス界を軽やかに行き来することで、この世の中はさらに良くなると思っています。〝得られる情報〞には鮮度がありますし、法律事務所・ビジネス界、それぞれで得た経験で、やれることがあると思うからです。私はやればやるほど楽しくて既に出向期限を2回も延長していますが(笑)、私が法律事務所に戻る際には、〝ひと回り大きくなった自分〞で、事業会社で培った知見を周囲にも広めていけたらと思います。いずれにしても、どちらの立場も経験・理解してみたい、〝決断すること〞にやりがいを感じられそうなら、ベンチャー企業のインハウスローヤーは働きがいが得られる仕事だと考えます」

■企業概要

  • 株式会社スペースマーケット
  • 設立日 2014 年1月8日
  • 代表者 代表取締役 重松大輔
  • 所在地 〒160-0023
  • 東京都新宿区西新宿6-15-1ラ・トゥール新宿608
  • URL https://spacemarket.co.jp/
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