出資先や取引先が加速度的に拡大するなか、本社常駐で法務を担うメンバーの確保が急務となり、17年に柳氏、19年に池田氏がジョインし、現体制が整った。池田氏に、法務部のミッションと、業務について伺った。
「九州大学発の有機EL技術を基にして、これを実用化していくのが当社の事業。世界規模の企業を目標としているので、それに合わせて法務の観点からサポートすることが、私たちの使命となります。カバーする国は、アメリカ、日本、韓国、中国、台湾、カナダ、ドイツと多国にまたがります。法律は国ごとに、アメリカなら州ごとに異なりますが、それら多国の法律を下敷きとする契約書を、法務3名でハンドルしていくわけです。また、当社は九州大学の持つ特許の譲渡や独占的なライセンスを受けているため、大学との連携も必須。そのように、おそらく一般企業にはない法務の特性がいくつもあります。私たちが作成・レビューする契約書は、およそ年間100件。これまでの累計では、おそらく500~600件ほどあるのではと思います。そのほとんどが英文契約書というのも当社ならではです」
一つの有機EL素子をつくる際、同社の材料以外にも20種類以上の他社の有機材料が使われるそうだ。現在、同社技術に合わせた材料開発を、韓国、中国、日本の材料メーカー12社と連携して行い、量産化に向けて動いている。
「私たちは自らが材料を合成して大量生産するのではなく、アウトソースのビジネスモデルを採用しています。ですから各国大手メーカーとのコラボレーションが多く、ここでもハードなネゴシエーションがあり、そこで法務の力が大変重要になります。そうして、私たち経営層が考える方針を文章にして、契約書というかたちに落とし込んでくれるところまでが法務の役割。当社においては、まさに経営と直結する非常に重要なポジションです」(安達氏)
法務の池田氏と柳氏は二人とも海外生活経験があり、TOEICスコアは満点。両氏にとっての英語は、日常のコミュニケーションツールに過ぎないわけだ。ただ、専門的な技術知識・用語が満載の英文契約書の解読と作成は、さすがに難題だったという。
「入社当時は、技術的な知識の習得に苦労しました。有機ELに関する書籍などを熟読しましたが、ジェフをはじめ、事業開発や研究開発、知的財産部門のメンバーなど、様々な部署の方に実務を通して教えてもらうのが一番でしたね。社員75名のベンチャー企業ですし、お互いの顔が見える環境。ジェフも含めて海外にいるメンバーともオンラインミーティングなどでよく話しますし、社内はカジュアルな雰囲気で、気軽にメンバーに相談したり、アドバイスをもらえるのが、ありがたいです」(両氏)
池田氏に、この仕事のやりがいを尋ねた。
「当社は、創業当初から米国ナスダック上場を目標に掲げています。日本の大学発ベンチャーをナスダックで上場させるのは、私個人にとっても人生の夢。法務としてそれをサポートできることは、これから、仕事の最大のやりがいとなっていくでしょう。今からすでにワクワクしています!」