「uni(ユニ)」ブランドの筆記具で知られる三菱鉛筆株式会社。そのコーポレートブランド名の由来は、“ただ一つの/ユニーク”に由来する。1887年に日本で初めて鉛筆の工業生産を開始、創業130年超の歴史を誇る。
現在は、筆記具事業のさらなる進化および同事業で培った技術力・開発力をもとに、医療・電子・自動車・化粧品などの新分野へも事業を拡大している。例えば、シャープ芯の製造技術を応用して独自のカーボン加工技術を開発し、医療機器分野や自動車分野に製品を提供。顔料を微細化するインク技術を応用し、電子分野で絶縁材料を展開。ほかにも、ペンやペン先の容器・機構設計技術および精密加工技術などを用いて、グループ企業において化粧品事業もスタートしている。“書くことの科学”を追究し、たゆまぬ技術革新を続ける、まさに“ユニーク”な企業である。
多様な事業を展開する同社の法務を支えるのは、現場経験豊かな少数精鋭のスタッフだ。法務室室長の齋藤茂樹氏に、法務室メンバーのバックグラウンドなどについて聞いた。
「当社では多様な事業を展開しておりますが、突き詰めれば技術的なセグメントは一つだけ。それは“社会から求められる筆記具の開発”です。ちなみに、筆記具はヒットすると、だいたい20~30年、あるいはそれ以上のロングセラー商品となります。よって、全社的な人材配置の戦略としては、一人を長く特定の部門に固定するのではなく、生産部門や営業部門など様々な部門の職務を経験させ、幅広い知識を身につけてもらう。これが基本となります。新卒で入社したメンバーの場合は、30代なかばくらいまでに数部門の業務を経験することもあります。それによって、意識的に社内人脈を広げることも目的としています」
法務室のメンバーもそれぞれ、商品開発、国内営業・海外営業、広報、あるいは国内販売会社への出向などを経験しており、各部門の業務フローに精通し、人脈も得ているという。
「つまり法務室には、“現場と同じ言葉で語れる”メンバーが揃っているということ。私たちは1本数百円の筆記具を何億本もつくり、売って、利益を出しています。だからこそ、開発・製造現場ファースト、販売現場ファーストを大切にしています。現場の思いや視点を共有し、的確にニーズをくみ取り、スピード感をもって対応する力が、当社の法務には絶対に必要なのです。現在の法務室のメンバーは全員、その力を備えていると考えます」
新型コロナ禍となる以前、法務室のメンバーは横浜・群馬の事業所へ積極的に出向き、契約書の作成上の注意点や、下請法、独占禁止法などの勉強会・相談会を自発的に開いていたそうだ。
「工場もしかりですが、社内の各部門と積極的に交流し、情報をとってくる動きを加速してくれることを期待しています。一昨年からリーガルテックツールを導入して、契約書レビューや締結にかかる時間をかなり削減できました。その分、積極的に人と会って情報を得て、新たな案件を掘り起こす活動に使ってほしい。法務という部門の枠組みにとらわれず、営業など様々な部門に“首を突っ込んで”、事業再編や新規事業といったプロジェクトの芽を発見し、常にスタート前の段階から頼りにされる存在でありたいですね」