Vol.76-77
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法務室の陣容は、齋藤茂樹室長とメンバー。本社を含む国内外の事業所の法務サポートを行う

法務室の陣容は、齋藤茂樹室長とメンバー。本社を含む国内外の事業所の法務サポートを行う

THE LEGAL DEPARTMENT

#111

三菱鉛筆株式会社 法務室

法務の枠を超え、積極的に現場の声を聞く。全社から頼られる少数精鋭の法務室を目指す

現場ファーストに徹する法務

「uni(ユニ)」ブランドの筆記具で知られる三菱鉛筆株式会社。そのコーポレートブランド名の由来は、“ただ一つの/ユニーク”に由来する。1887年に日本で初めて鉛筆の工業生産を開始、創業130年超の歴史を誇る。

現在は、筆記具事業のさらなる進化および同事業で培った技術力・開発力をもとに、医療・電子・自動車・化粧品などの新分野へも事業を拡大している。例えば、シャープ芯の製造技術を応用して独自のカーボン加工技術を開発し、医療機器分野や自動車分野に製品を提供。顔料を微細化するインク技術を応用し、電子分野で絶縁材料を展開。ほかにも、ペンやペン先の容器・機構設計技術および精密加工技術などを用いて、グループ企業において化粧品事業もスタートしている。“書くことの科学”を追究し、たゆまぬ技術革新を続ける、まさに“ユニーク”な企業である。

多様な事業を展開する同社の法務を支えるのは、現場経験豊かな少数精鋭のスタッフだ。法務室室長の齋藤茂樹氏に、法務室メンバーのバックグラウンドなどについて聞いた。

「当社では多様な事業を展開しておりますが、突き詰めれば技術的なセグメントは一つだけ。それは“社会から求められる筆記具の開発”です。ちなみに、筆記具はヒットすると、だいたい20~30年、あるいはそれ以上のロングセラー商品となります。よって、全社的な人材配置の戦略としては、一人を長く特定の部門に固定するのではなく、生産部門や営業部門など様々な部門の職務を経験させ、幅広い知識を身につけてもらう。これが基本となります。新卒で入社したメンバーの場合は、30代なかばくらいまでに数部門の業務を経験することもあります。それによって、意識的に社内人脈を広げることも目的としています」

法務室のメンバーもそれぞれ、商品開発、国内営業・海外営業、広報、あるいは国内販売会社への出向などを経験しており、各部門の業務フローに精通し、人脈も得ているという。

「つまり法務室には、“現場と同じ言葉で語れる”メンバーが揃っているということ。私たちは1本数百円の筆記具を何億本もつくり、売って、利益を出しています。だからこそ、開発・製造現場ファースト、販売現場ファーストを大切にしています。現場の思いや視点を共有し、的確にニーズをくみ取り、スピード感をもって対応する力が、当社の法務には絶対に必要なのです。現在の法務室のメンバーは全員、その力を備えていると考えます」

新型コロナ禍となる以前、法務室のメンバーは横浜・群馬の事業所へ積極的に出向き、契約書の作成上の注意点や、下請法、独占禁止法などの勉強会・相談会を自発的に開いていたそうだ。

「工場もしかりですが、社内の各部門と積極的に交流し、情報をとってくる動きを加速してくれることを期待しています。一昨年からリーガルテックツールを導入して、契約書レビューや締結にかかる時間をかなり削減できました。その分、積極的に人と会って情報を得て、新たな案件を掘り起こす活動に使ってほしい。法務という部門の枠組みにとらわれず、営業など様々な部門に“首を突っ込んで”、事業再編や新規事業といったプロジェクトの芽を発見し、常にスタート前の段階から頼りにされる存在でありたいですね」

  • 三菱鉛筆株式会社
    本社5階の多目的スペース。食事・休憩、打ち合わせや作業に集中したい時などに社員が利用する
  • 三菱鉛筆株式会社
    取材時は、在宅勤務の社員が多かったため、利用者は少数

自分の意見や考えが事業に直接届く喜び

同社法務室ならではの仕事のやりがいはどのようなものか、齋藤室長が教えてくれた。

「法務にいると全社的な情報を幅広く得ることができる。その情報を生かして、ポジションにとらわれることなく、役職者とも対話や議論できる機会がある。自分の意見や考えが、事業に直接届いていると感じられることが、醍醐味の一つです。大所帯ではなく、小さな法務室だから得られる経験なのかもしれません。法務室メンバーのそうした経験をもっと増やしていくために、法務の部門長である私自身が、経営陣や他部門のトップと意識的にコミュニケーションを取り、どんどん仕事のニーズを探ってこないといけないと思っています」

同社の法務室は、新型コロナ禍以前からテレワークをトライアルで進めていた。そのため昨年4月に全社でのテレワークがスタートした際も、メンバー全員で話し合い、出社時間を調整したり、交替で1人ずつ出社するなどして、混乱なく業務が進められたそうだ。

「ただし、この1年間そうした働き方を経験して感じたことは、どうしても“待ちの姿勢”になってしまい、法務としてのベストなパフォーマンスが出しきれていないというもどかしさです。古臭いといわれるかもしれませんが、法務はやはり、営業部門や生産部門に自ら出向いてその場の空気を感じながら話を聞いて初めて、生み出せる価値があると感じます。昨今の状況では『積極的に出社しよう』とは言いづらいですが……。いずれにせよ、どんな状況下であっても、どうやって現場とのコミュニケーションを深め、メンバー個々のパフォーマンスを高めていくか――法務室メンバー全員で解決すべき課題だと思っています」

三菱鉛筆株式会社
品川区東大井の本社ビル(2018年完成)。建物の東側には、鉛筆の製造工程を表現したベンチを配した桜並木の歩道が伸びる。「えんぴつロード」と称し、地域の方々に憩いの場を提供している

法務のプレゼンスを高めるために

同社に法務室ができたのは、十数年前のこと。その立ち上げメンバーの一人として入社したのが、齋藤室長だ。「法務室が社内で認知されるまでに10年以上はかかった」と、振り返る。

「当初は、当たり前ですが社内では法務という部門の認知度は限りなくゼロで、『何をする部門なのか?』、はたまた『何階にあるのか?』と聞かれることもありました。ここ数年で、法務室の存在は、ようやく社内で認知されつつあると感じます。しかし、『自分たちのために何をしてくれる部門か』という理解の浸透は、まだまだ。“契約書を見てくれる人たち”“契約書をつくってくれる人たち”だけでは足りません。社内の期待値を超える提案力、解決力をさらに強化し、法務室の存在感を高めていかなければ、リーガルテックやAIの発達などによって、私たちの価値はいつかなくなるのではという危機感すら抱いています」

リスクを未然に防ぐなどして、「法務がいてくれてよかった。助かった」という他部門からのコメントは当たり前のことで、「それは法務という“役割”に対しての言葉」と、齋藤氏は言う。

「法務は、その働きに感謝してもらえる、素晴らしい仕事。しかし、メンバーには『それは、あなたの役割に対しての言葉であるから、あなた自身にやってもらってよかった、あなたと仕事ができてよかった』と言ってもらえることが大事だと、よく話します。メンバーの多くが法務未経験で異動してきて、『成長を感じられる』と言ってくれることは嬉しいのですが、せっかく法務という専門性を身につけたのだから、自分自身で個の価値をさらに高めていくことを、私はメンバーに求めます」

最後に、今後、どのような法務室を目指していくかを聞いた。

「法務室全体としては、いわゆる戦略法務の面でプレゼンスを高めていくことが大事。“リスクを見つけて”ではなく“チャンスを見つけて”、現場の人たちをその気にさせ、その働きを後押しできる、発信力ある法務室として、個々のメンバーを成長させていきたい。経営にいい意味での影響を与えられるような部門であるべきだし、そうでなければ法務の存在価値はないと、私は考えています」

  • 三菱鉛筆株式会社
    エントランスに設けられた商品展示スペース「uni-Lounge」。本社近隣の飲食店のランチメニューなどを、社員が手描きのイラストで紹介したリーフレットなども置かれている。
  • 三菱鉛筆株式会社
    “書く楽しさ”が伝わってくるスペースだ