同社は『2021年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング 中規模部門』(Great Place to Work® Institute Japan)で2位に選出され、今年で8年連続のランクインとなった。在宅勤務、人事評価といった制度、バーチャルオフィスや自社サービスを活用したITツールを、“多様な個性を重視する/公明正大である/議論を大事にする”といった風土のもとに活用し、スタッフは多様な働き方を実現。“働きがい”とは、働き方だけでなく、当然“仕事のやりがい”が伴ってこそ高まるもの。同部では一人ひとりが責任を持ち、しかし孤立することなく、チームで進めることを基本とする。
「各本部から依頼される日常的な法務相談については、マネージャーとリーダーが1日1回話し合い、一次担当、二次担当と役割分担をした2人1組のメンバーに割り振ります。初動段階で、2人で方針を決めたあとは、一次担当が窓口となって相談者から詳細を聞き取り、回答案を作成。二次担当は、その内容をチェックし、OKであれば一次担当が相談者に回答をするという流れです。一次担当、二次担当、それぞれが担当した業務に強い責任を持ってあたる意識が醸成されています」(三浦氏)
法務知識に関する教育方針について、我妻氏が教えてくれた。
「法務のベーススキルの向上については、“一次ソース”に触れることを最も大切にしています。学びたいと思う法分野について著名な弁護士がいれば、面識がなくともコンタクトを取り、助言をいただく。当部向けに勉強会を開いていただくこともあれば、ディスカッションをさせていただくこともある。やはり、その道の第一人者が持っている最新かつ生の情報や見識は、多くの学びが得られ、非常に貴重です。新型コロナ禍により、法律事務所に直接訪問する難易度が上がってしまいましたが、それ以前は積極的にお伺いし、ご指導いただいていました。もちろん、セミナーや最新の書籍購入なども本人が業務に必要と思うものは遠慮せずに購入してもらってOK。知への投資はケチらないというのが私の信条です(笑)」
そんな同部では、20年から、「Code of Conduct(行動指針)」を社内向けに発表している。我妻氏が、その目的と効果を次のように説明する。
「営業、開発、運用など、他本部に“理解する/想像する/提案する/ビジネス感覚を持つ”という4点を大切にして活動しているチームであることを周知する目的で発表しました。一方、部内のメンバーには紋切型の法務にならず、謙虚な気持ちで務めることを忘れないでいてほしいという思いを伝えています。この行動指針を社内へ向けて発信して以降、各本部から当部に対してポジティブ・ネガティブ両面で、多くのフィードバックがもらえるようになったと実感しています」
法務から社内に向けて、その存在価値・意義を明確化することにより、営業、開発、運用本部などとの信頼関係が深まり、各本部がプロジェクトの早期段階から法務を巻き込むケースが増えたそうだ。
「例えば、海外展開の際には、『拠点をどこに置くか』という調査段階から相談してくれます。営業であれば、『新しいスキームを使って企業連携・事業拡大する方法について、契約書や法律事務を含めて相談に乗ってほしい』といったようなことです」(我妻氏)
そのように全社から頼られる存在となった同部が、今後、必要とする能力はどのようなものか、三浦氏が教えてくれた。
「当部では、データプライバシーをはじめとしたコンプライアンス体制の構築など、複数もしくは全本部にかかわるような規模のプロジェクトが増えてきているので、それをリードしていくような動きが必要になってくるでしょう。法律に関する専門知識はもちろん大切ですが、それ以上に今後は、プロジェクトマネジメント・スキルが、私たちに強く求められていくだろうと考えます」
※取材に際してはマスクを外していただきました。