現在、法制局に所属する任期付職員は弁護士を含む法曹有資格者3名。そのうちの一人、濱中麻実子弁護士は、一般民事・刑事を扱う法律事務所から、子育て総合支援を行う民間企業のインハウスローヤー、内閣府の男女共同参画局を経て現職に。法制局では少年法、出入国管理及び難民認定法(入管法)、刑法、児童買春・児童ポルノ禁止法、不払い養育費問題、氏(うじ)・戸籍、同性婚等に関する政策などにかかわってきた。濱中弁護士は、現在の仕事をこう語る。
「様々な面で非常にダイナミック。例えば、政策構想・法制度化の段階においては、現行法制だけではなく過去に遡れるだけ遡って古い資料を調査・分析することもあれば、国内での地域ごとの特性・実情や、諸外国の法令やその現状・課題を調査・分析することもあります。そうした作業を進めるなかで、“国政の中心”ゆえに、事態の急変による対応を迫られることもあり、判断や事務処理のスピード、臨機応変に対応する力が要求されます。法律事務所での職務内容は個別具体的な案件ごとの“主張・立証”、“法解釈・適用”に関する司法の領域のものでした。民間企業では、事業目的達成に寄与するため、法務の枠にとらわれず現場を理解して伴走し、サポートすることに努めました。行政府での政策の企画立案・総合調整等では、関係府省、地方自治体、有識者、関係団体などステークホルダーと国内外で連携しつつ、多種多様な取り組みに携わりました。今の職務遂行に、それらすべての経験を活かすことができています」
ほかの任期付職員2名も、先の国会で成立した「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」や、「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」などの立案に携わった。二人も仕事のやりがいを教えてくれた。
「建設石綿給付金支給法は、今年5月に最高裁が国の責任を認める判決を出したことを契機に法制化されました。最高裁判決の内容を分析すること自体は弁護士業務でもありましたが、給付金制度をつくり、制度として機能させるには、類似の給付立法の構成の分析、請求から審査、支払いまでの手続全体の設計など通常の弁護士業務では行わない調査・検討が必要。『被害者のためのよりよい法案にするには、何が必要か』という基本から考え、気になった点を調査し、アイデアを出しました。それが法案の“血肉”となり、国会で成立した時はやはり感動しました」
「宇宙資源法について、依頼者である議員と政策内容の打ち合わせを重ねて法律案の方向性を定め、有識者や民間事業者などの関係者からヒアリングを行い、依頼議員や関係省庁と何度も協議しながら、法律案をつくり上げました。その後も、各政党の党内手続での対応や衆・参議院での質疑対応の補佐を行い、法律ができる過程の最初から最後まで携われました。こうした経験は、ここでしか味わえない貴重なものだと思います」
濱中弁護士を含む任期付職員3名は「議員立法の立案に特化した法制局での仕事は、これまで“所与のもの”として扱ってきた法規範を新たに“立案する対象”としてとらえる、まさにクリエイティブな仕事です。何よりも、議員へのサポートを通じて、社会課題の解決に携わり、国民全体さらには将来の世代の一助となれることが、大きなやりがいです」と語る。