Vol.90
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法務部は、魚住氏を含めて12名の陣容。統括グループ4名、国内法務グループ4名、国際法務グループ3名の配置。リモートワークやフレックス制度の活用で、出社率は30~40%程度(新人は出社中心)

法務部は、魚住氏を含めて12名の陣容。統括グループ4名、国内法務グループ4名、国際法務グループ3名の配置。リモートワークやフレックス制度の活用で、出社率は30~40%程度(新人は出社中心)

THE LEGAL DEPARTMENT

#159

ライオン株式会社 法務部

“事業部門のよき伴走者”として組織力を強化し、グローバルでの成長も牽引する法務部

事業部門のよき伴走者として

「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」を掲げ、多岐にわたる生活用品を提供するライオン株式会社。同社法務部のミッションを、部長の魚住拓也氏にうかがった。

「企業法務の役割・機能は、単なる法的判断のみならず、事業部門と目標を共有し、その達成に資する代替案を提言していくこと。いわば”事業部門のよき伴走者”であるべきと考えます。この行動指針に基づき、”事業活動の計画推進における法的助言と提言の充実””各種紛争・トラブルの未然防止と最小化””新法・改正法などのタイムリーな情報発信と教育の充実”が、私たちの使命です」

その組織構成は、次のとおり。

「企業倫理、コンプライアンス事案、訴訟、行政対応などの”非定型的”な案件と人事・総務・経理を担当する統括グループ、契約審査や法務相談といった”定型的”な案件を担当する国内法務グループ、そして国際案件を担当する国際法務グループで構成。ブランド・事業・企業のM&Aといった事案に関しては、グループ横断で対応しています」(魚住氏)

ライオン株式会社
グループ間ローテーションは国内法務→国際法務→統括。日本法に基づく法的知見を身につけ、外国法領域を学ぶ。その後、非定型・秘匿性を伴う事案を取り扱う

社内での高いプレゼンスを獲得

これまで同部が手がけてきた案件について、統括グループのマネジャ白井潤氏が教えてくれた。

「2023年11月に、ラクトフェリンシリーズほか機能性表示食品事業を、吸収分割の方法で日清食品株式会社へ承継しました。当社事業ポートフォリオの改善を目的に行ったM&A案件で、プロジェクトの立ち上げ段階から法務部の統括・国内法務各グループのメンバーも参加し、経営企画部や複数の関連事業部門とワンチームで初期検討及びスキーム策定などに携わりました。初期段階からかかわり、DD、契約内容の精査、契約交渉、契約締結まで見届けられたことは、法務としての喜びが大きかったです」

同社では、中長期経営戦略フレーム「Vision2030」で、海外事業の拡大を重要なテーマに掲げる。既存進出の国・エリアでの事業強化を進めるとともに、新たな国・エリアに参入することで、ライオングループ連結売上高における海外事業構成比の引き上げ(50%)を30年までに目指す。国際法務グループのマネジャ福永誠氏に、近年手がけた案件をうかがった。

「一つは22年のバングラデシュへの事業進出です。現地で有名なファブリックケアブランドを持ち、バングラデシュ全土をカバーする流通網と販売力を備えたKallolLimitedをパートナーとする合弁会社、Lion Kallol Limitedを設立しました(出資比率75%)。2つ目は、23年のベトナムへの事業進出。医薬品・医療機器の製造販売を中心とした企業グループのMERAPHOLDING CORPORATIONの株式(36%)を取得しました」

これらはいずれも、新規国・エリアへの事業進出案件だ。福永氏は、やりがいを次のように語る。

「海外部門に伴走して合弁や出資の契約交渉を行い、”当社製品をお届けする国を増やす取り組み”に貢献できたこと、なおかつ中計で定めた”新規2カ国進出”を、1年前倒しで実現できたことは達成感が大きかったです」

ちなみに、白井氏の例(国内M&A)と、福永氏の例(ベトナム進出案件)は、ともに「社長賞」を受賞した。魚住氏は言う。

「プロジェクトチームの一員として、全体スキームや契約内容の説明、契約書の提出、契約交渉の進捗報告・相談などを役員に向けて頻繁に行うので、経営層に対して私たち法務部の”顔が見えやすかった”という点も受賞の背景にあると思います。事業部門からの要請に対する法務部のかかわり方・姿勢が評価された証しと自負しております」

多様な人材の力で組織力を強化

同部には、インハウスローヤーが2名所属している。一人は福永氏で、もう一人は法律事務所から消費者庁(表示対策課)を経て今年4月に入社した、統括グループの石塚幸子氏だ。

「インハウスローヤーとして法務には精通していますが、やはり事業の詳細、商品やビジネスの仕組みなどはまだまだ知識不足。入社後に各事業部門のメンバーとやりとりして感じるのは、皆さん”知らないことを前提に、丁寧に教えてくれる”こと。わからないことは徹底的に解消して、そのうえで法務として検討に臨める安心感があります。事業部門の方々と、そうした関係性が築けることがありがたいですし、これが当社の社風だと実感しています」(石塚氏)

「部内も、フラットで気兼ねなく相談し合う組織風土です」と、福永氏も話す。

「それは、グループに縛られず横断的に業務を行うケースが多いこと、部員の半数が石塚のようなキャリア入社者であること、キャリア入社者や他事業部門から異動してきたメンバーの多くが、法務以外の様々な部門・分野を経験していることなどが要因だと思います。多様なバックグラウンドや属性のメンバーで構成されているからこそ、この風土が醸成されたのだと思います」(福永氏)

実は部長の魚住氏も、研究開発本部や経営企画部を経て、国際事業本部で海外事業進出などの業務に約10年従事し、今に至っている。

「魚住は長く事業側にいたので、私たちが当たり前に使う法律用語を、どのように”翻訳”して事業部門に伝えるべきか、どのように助言すると現場の事業が推進しやすいかを理解しています。法務部長が”社内クライアント”の立場を熟知していることも、我々の強みだと思います」(福永氏)

そのうえで福永氏は、法務部の一員としてあるべき姿を次のように語る。

「どうしても解消できない法的な問題がある場合、ためらわずにノーと言える芯の強さ。法的な問題を発見した場合、乗り越えるための代替案を依頼元(事業部門)とともに考えて提案できる柔軟性と粘り強さ。本来は依頼元が判断すべき問題も、交渉の機微を踏まえて、よりよい方針・方向性を提案できる”当事者意識”を持つこと――常にそうあらねばと考えます」

最後に、法務部の”課題”について、魚住氏にうかがった。

「ライオンの法務機能を高めるべく、社内外から優秀な人材を獲得し、育成することが喫緊の課題です。とりわけ海外事業の拡大に伴い、国際法務人材の必要性が高まっています。とはいえ語学面でいえば、英語に長けている必要はありません。なぜなら当社の海外事業展開先は、アジアの新興国が主。母国語が英語の国は少なく、交渉時に早いスピードで英語が飛び交うケースもほとんどありません。むしろ”クセのある英語”を理解してコミュニケーションできる人のほうが重宝されます。”契約カルチャー”も欧米とはだいぶ異なるので、当事国のビジネスや契約の慣習に臨機応変かつ柔軟に対応できる人のほうが向いています。そうした素養がある国際法務人材を増やし、育てていきたいですね。一方で、社内人材交流の一環でこの10月から新たに『短期留学制度』が始まります。これは当社の研究所のメンバーが、最長1年間、法務部や知的財産部、購買本部などの部門で業務を学ぶ制度。こうした制度を契機に、法務部の仕事に関心を持ってくれる人が増えることを期待しています」

ライオン株式会社
130年以上にわたる歴史のなかで、オーラルケアやファブリックケア、医薬品といった一般用消費財事業、化学品などの産業用品事業、海外にも積極的に事業を拡大(提供:ライオン)