同部には、インハウスローヤーが2名所属している。一人は福永氏で、もう一人は法律事務所から消費者庁(表示対策課)を経て今年4月に入社した、統括グループの石塚幸子氏だ。
「インハウスローヤーとして法務には精通していますが、やはり事業の詳細、商品やビジネスの仕組みなどはまだまだ知識不足。入社後に各事業部門のメンバーとやりとりして感じるのは、皆さん”知らないことを前提に、丁寧に教えてくれる”こと。わからないことは徹底的に解消して、そのうえで法務として検討に臨める安心感があります。事業部門の方々と、そうした関係性が築けることがありがたいですし、これが当社の社風だと実感しています」(石塚氏)
「部内も、フラットで気兼ねなく相談し合う組織風土です」と、福永氏も話す。
「それは、グループに縛られず横断的に業務を行うケースが多いこと、部員の半数が石塚のようなキャリア入社者であること、キャリア入社者や他事業部門から異動してきたメンバーの多くが、法務以外の様々な部門・分野を経験していることなどが要因だと思います。多様なバックグラウンドや属性のメンバーで構成されているからこそ、この風土が醸成されたのだと思います」(福永氏)
実は部長の魚住氏も、研究開発本部や経営企画部を経て、国際事業本部で海外事業進出などの業務に約10年従事し、今に至っている。
「魚住は長く事業側にいたので、私たちが当たり前に使う法律用語を、どのように”翻訳”して事業部門に伝えるべきか、どのように助言すると現場の事業が推進しやすいかを理解しています。法務部長が”社内クライアント”の立場を熟知していることも、我々の強みだと思います」(福永氏)
そのうえで福永氏は、法務部の一員としてあるべき姿を次のように語る。
「どうしても解消できない法的な問題がある場合、ためらわずにノーと言える芯の強さ。法的な問題を発見した場合、乗り越えるための代替案を依頼元(事業部門)とともに考えて提案できる柔軟性と粘り強さ。本来は依頼元が判断すべき問題も、交渉の機微を踏まえて、よりよい方針・方向性を提案できる”当事者意識”を持つこと――常にそうあらねばと考えます」
最後に、法務部の”課題”について、魚住氏にうかがった。
「ライオンの法務機能を高めるべく、社内外から優秀な人材を獲得し、育成することが喫緊の課題です。とりわけ海外事業の拡大に伴い、国際法務人材の必要性が高まっています。とはいえ語学面でいえば、英語に長けている必要はありません。なぜなら当社の海外事業展開先は、アジアの新興国が主。母国語が英語の国は少なく、交渉時に早いスピードで英語が飛び交うケースもほとんどありません。むしろ”クセのある英語”を理解してコミュニケーションできる人のほうが重宝されます。”契約カルチャー”も欧米とはだいぶ異なるので、当事国のビジネスや契約の慣習に臨機応変かつ柔軟に対応できる人のほうが向いています。そうした素養がある国際法務人材を増やし、育てていきたいですね。一方で、社内人材交流の一環でこの10月から新たに『短期留学制度』が始まります。これは当社の研究所のメンバーが、最長1年間、法務部や知的財産部、購買本部などの部門で業務を学ぶ制度。こうした制度を契機に、法務部の仕事に関心を持ってくれる人が増えることを期待しています」