Vol.95
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「法務・リスクマネジメント統括部」の下、「法務・知的財産渉外部」は約80名、「リスクマネジメント・経済安保戦略部」は約50名、合計約130名の陣容。そのうち弁護士資格者は約10名

「法務・リスクマネジメント統括部」の下、「法務・知的財産渉外部」は約80名、「リスクマネジメント・経済安保戦略部」は約50名、合計約130名の陣容。そのうち弁護士資格者は約10名

THE LEGAL DEPARTMENT

#171

三菱電機株式会社 法務・リスクマネジメント統括部 法務・知的財産渉外部/リスクマネジメント・経済安保戦略部

経営層と事業部門のパートナーとして、リスクテイク&チャンスメイクにコミット

エッジの効いた法務部門でありたい

三菱電機株式会社は、社会システム、エネルギーシステム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、デジタルイノベーション、半導体・デバイスといった事業を展開している。グローバルでの事業拡大に伴い、輸出入管理、データ越境、環境・脱炭素といった規制が複層的に絡むため、法務には高度な専門性と組織横断的な貢献が求められる。同社では2024年4月以降、関連する機能を再編。「法務・リスクマネジメント統括部」の下、会社法務やビジネス法務など9グループで構成される「法務・知的財産渉外部」と、インテグリティ推進や新領域リスク対応など6グループで構成される「リスクマネジメント・経済安保戦略部」の2部門を新設した。再編の背景を、法務・知的財産渉外部部長の原田英一氏に聞いた。

FA機器製品連携ソリューション

「以前は、知的財産にかかわる係争・訴訟・契約を担当する部と、それ以外の法律案件を担当する2部門体制でしたが、AI・データといった新領域が拡大するなかで、『知財か、それ以外か』という線引きでは対応しきれない複雑なケースが増えています。これらの新領域は法制度が未整備で法的不確実性が大きく、事業判断に際しては〝法務の先読み力〟と、規制・技術・ビジネスを横断的に捉える〝総合的な判断力〟が不可欠です。これらの課題にワンストップで対応できる組織を目指し、『法務・知的財産渉外部』としてワンチーム体制へ再編したのです」

同社は、「イノベーティブカンパニーへの変革」を掲げ、事業横断でデータを連携・活用する基盤「Serendie(セレンディ)」を中核に、新たなビジネスモデルの創出を進めている。長年培ってきた、電力機器、昇降機、空調機器、鉄道電機品やFA製品などのコンポーネント(製品・システム)から生まれるデータを活用した社外パートナーとの共創や、事業間シナジーの最大化を重視する。この変革を支えるため、同部は3つの視点を部門方針として掲げる。

「第1に、経営判断・事業判断に積極的に関与する。第2に、法務部門もリスクテイク・チャンスメイクを行い、結果にコミットする。第3に、全社および連結グループ全体を俯瞰し、個別最適に偏らず、〝全体最適〟の視点で取り組む。なかでも、我々自身がビジネスの当事者としてリスクテイクしていくことが最も大切です」

原田氏はさらに、こう続ける。「社内外から『三菱電機の法務は〇〇に強い』と言われる、エッジの効いた専門家集団でありたいと考えています。そのエッジは、まずオープンイノベーションに強いこと、価値観の異なる相手と共創できる建設的かつフレンドリーな強いこと。1990年代以降、当社はグローバルで多くの訴訟を経験し、その過程で培った〝戦闘力〟が受け継がれており、問題が生じた際の対応力は高いと自負しています。我々はこの2点で存在感と魅力を発揮できる法務部門を目指しているのです」

ルームエアコン霧ヶ峰「Zシリーズ」(提供:三菱電機)

〝現場〟とともに価値を創出

「法的不確実性が大きなオープンイノベーションの推進に関しては、先を読んでリスクコントロールし、チャンスに変えていくためのインテリジェンス向上が重要」と、原田氏。そのカギを握るのが、リスクマネジメント・経済安保戦略部の新領域リスクグループだ。大山浩子氏に、仕事について聞いた。

「AIガバナンスとサステナビリティリスク対応が主領域です。昨今、AIの利活用が活発化していますが、日本では事業会社への義務を規定するハードローが実質的にない状況であるため、既存法への対応だけでは企業として十分とは言えません。そこで、各国の規制・政策動向、社会情勢を読み解き、当社の経営戦略と照らし合わせながら、AIをどうやって当社事業に実装し、社会にどう説明していくかなどを検討し、経営の意思決定につなげています」

重要なのは、「現場をしっかり巻き込むこと」と大山氏。

「当社は製造業なので、営業はもちろんのこと、開発や製造の部門など様々な現場でAIを用いた事業を検討及び展開しています。AIにはポジティブ・ネガティブ両面のリスクがありますので、AI提供事業者は適切なリスク管理が求められ、なかでも、AIは倫理リスク(公平性、プライバシー等)のコントロールが非常に重要です。そこで、各現場と密にコミュニケーションをとりながら、AI倫理を現場の皆さんの具体的行動に落とし込んでもらうべく、リスク対応策について検討を重ね、言語化・仕組み化して、ガバナンス体制を構築しようとしています」

同社では、オープンイノベーションによる他企業とのアライアンス案件に加え、事業ポートフォリオの再編に伴って、事業売却を含むM&A案件も増えている。そうした会社法関係全般を取り扱うのが、法務・知的財産渉外部の会社法務グループだ。即戦力として入社し、同グループで活躍する相馬壱成氏に仕事のやりがいを聞いた。「入社直後から大型案件のプロジェクトメンバーにアサインされ、財務・税務、交渉戦略、社内調整など、入社前に抱いていた法務の役割のイメージを超えて案件に取り組みました。ほかの案件でも、自分が中心メンバーであるという意識で案件に入り込んでおり、インハウスローヤーの醍醐味を存分に味わっています。海外M&A案件に携わることも多く、現地交渉にも行きますし、案件の最初から最後まで、プロジェクトチームの一員として取り組んでいます」

大型案件では、社内各部門で利害対立が起きることもあり、その調整役となる。外部法律事務所の手を借りる際は、弁護士・事業部門間の〝通訳〟も必要だ。

「中立的な立場で関係各者の調整や〝橋渡し〟を行うことも、我々法務部門がプロジェクトに関与する付加価値といえます」(相馬氏)

大山氏は、法務・知的財産渉外部ビジネス法務グループで、長く経験を積んできた。

「当社の事業領域は、〝家庭から宇宙まで〟と言われるほど幅広いことが特徴です。私は、防衛・宇宙領域や、交通など社会インフラ系の領域も担当しました。ビジネス法務の仕事に、同じ内容のものなどありません。加えて、取引金額の規模が大きな案件、ニュース性がある案件、〝日本初〟の案件なども多く、法務担当者として、多様かつ魅力的な仕事ができる環境だと思います」(大山氏)

部内外ローテーションをおおむね3年ごとに実施。多様な法領域・事業領域が経験できる。月1回、部全体で情報共有会を開き、相互研鑽を深めている

法的思考力と〝当事者〟の自覚

法務部門では「誰もがしっかり意見を述べる」と、大山氏は言う。「我々は皆、正解のない仕事をしています。それこそが、リスクテイク。だからこそ、一人ひとりが主体的に考え、自律的に判断する姿勢が求められます。管理職も日常的に『あなたはどう思う?』と問いかけ、意見を促します。自ら学び、自ら考える行動が自然と根づき、身についているし、それを互いに奨励し合う風土がいきわたっている職場です」

主体性を大切にする組織文化の背景には、「法務が培ってきた思考基盤がある」と、原田氏は言う。

「法務部門に所属するメンバーの多くが持つ強みは、法律知識以上に〝リーガルマインド〟、つまり法的思考に長けている点だと思います。プロジェクト推進には多様な人たちがかかわるため、〝事実〟と〝思い〟が混在しがちですが、法的思考ができる人は、その2つをしっかり分けて考えることができます。複数の〝事実〟を整理して、バランスを見ながら、〝全体最適〟となる判断が下せる――これがメンバーの強みであり得意とすることです。〝我々130名全員〟がその能力と、『リスクテイクをしていこう』という強い気持ちの両方を持てるよう、マネジメントしていきたいですね」