同室の仕事の面白さは、なんといっても新しい“ルールの明確化・制度の推進”にかかわれる点だ。蜂須弁護士と金山弁護士は、仕事の魅力について、それぞれ次のように話す。
「公益通報者保護法の解釈にあたっては労働法や行政法のみならず、民法、会社法、民事訴訟法、刑法など多数の法令を参照する必要があるので、“法律を総合的に使いこなす力”をお持ちの方にとって、やりがいを感じる職場といえるかもしれません」(蜂須弁護士)
「役所の一員としての私たちの解釈が公式見解となるため、発言一つひとつの影響力に強い責任とプレッシャーを感じますが、それも大きなやりがい。外部機関から見解を求められた際、参考となる過去の見解がない場合は、この法律がきちんと運用されていくためにどこまで何を示していくべきか、熟考して議論を重ね、発信するプロセスに充実感を覚えています」(金山弁護士)
そうした庁内の仕事では、“弁護士共通の力”を発揮できる場面や、期待される場面が多々ある。
「法律を解釈する時に、一貫した筋を立てられる論理的思考力、庁外の方々とのコミュニケーション力、調整力、企画立案力、やるべき業務を期限までにやり抜く力、法律を総合的に使いこなす力などが様々な場面で求められるように思います」(蜂須弁護士)
金山弁護士は都内法律事務所からいわゆる任期付弁護士として出向中のため、1年間の任期終了後(22年7月以降)は所属法律事務所に戻る。出向経験は今後、どのように仕事に役立ちそうか、うかがった。
「法律事務所入所当初は、争訟・紛争解決、事業再生・倒産案件を中心に関与していましたが、IT企業への出向や海外留学なども経て、現在は危機管理案件を多く取り扱っています。入庁理由は、危機管理や第三者調査委員会などの仕事に携わるなかで、不正の端緒を見いだす内部通報の重要性を感じたから。入庁後の日々の仕事において、弁護士の業務ではなかなか経験できないような幅広い利害関係者間の調整や意見の集約が必要になるので、多面的に利益衡量し、想像力をフルに働かせることが常に求められていました。それは、自分自身の“頭の体操”にもなり、新たな気付きがたくさんありました。公益通報者保護法について深い理解を得られたことは今後の弁護士業務に生かせることはもちろんですが、弁護士の業務ではなかなか経験できないような幅広い方々とのコミュニケーションは、自分の弁護士としての“幅”を広げてくれたと思っています」