同社では、2019年にカテゴリー経営体制を導入し、本社と事業会社の役割を明確化し、収益性を大きく改善した。成長をさらに加速させるべく、「中期経営計画2026」のなかで、「Global Integrated Enterpriseへの変革」を掲げ、よりダイナミックな経営を目指し、グローバルで全体最適を進めている。
「法務部も、〝カテゴリー〟ごとの戦略サポートやグローバル最適を進めています」と、和泉氏。同部では、廣田康人代表取締役会長CEO直下の、「Cプロジェクト」(トップランナー向けに〝勝てるシューズ〟を開発する、〝パフォーマンスカテゴリー〟の中核施策)を推進するにあたり、知財部と連携して無形資産としての企業価値を保護する。さらに、事業成長が著しい〝ラグジュアリーライフスタイルブランド〟の「オニツカタイガー」には専属の法務メンバーを配置し、ブランド価値の維持・強化を図るなど、カテゴリー戦略を法務面から支える体制を整備している。
「また当社には、エンドユーザーに向けた『OneASICS』というデジタル戦略の中核を担うプラットフォームがあります。お客さまに会員となっていただき、価値ある製品やサービスなどの提供を通じて、ブランド体験価値の向上に貢献する仕組みです。ランナー向けには、レースへの参加・登録、トレーニングなどを包括的にサポートする『 ランニングエコシステム』を展開しています。これらのサービスから得られた個人情報の利用にあたっては、世界各国・各地域のデータプライバシー規制遵守のための体制構築が重要となっています」(和泉氏)
同部では、和泉氏を中心として19年にグローバルプライバシーチームを立ち上げ、各国の法務メンバーを巻き込みながらデータプライバシー規制への対応、および体制づくりを進めてきた。24年からは、和泉氏の役割を引き継ぐかたちで、データプライバシー専任のルクサンドラ・ヘラストラウ氏が、グローバルプライバシーチームをリードしている。
ルクサンドラ氏に、印象に残る仕事について聞いた。
「一つは、プライバシーデータ処理契約書のグローバル標準化です。従来は地域ごとに契約様式やレビュー基準が異なり、交渉のたびに調整が必要でしたが、共通指針を策定したことで、どの地域でも同じ基準で契約を確認できるようになりました。ある地域でレビュー済みの契約を、ほかの地域にも共有し、整合性を保って再利用する。この〝知の共有〟により、契約交渉の精度とスピードが格段に高まりました」
「知見を資産として循環させる。それが当社のグローバルプライバシーの文化です」と、ルクサンドラ氏。「インシデント対応のプロセスづくりも印象深い」と、続けて話す。
「インシデント発生時に世界中の拠点が同じ手順で動けるよう、グローバル・インシデント対応フローを構築し、報告から対策までをデジタルプラットフォーム上で共有しています。各地域の法務・情報セキュリティ・マネジメントが即座に連携できる体制を整えたことで、GDPR(一般データ保護規則)の72時間ルールにも確実に対応できるようになりました。時差も文化も超えて一斉に動くその瞬間は、ワンチームとして機能していることを強く実感します。地域や言語の違いは障壁にはならず、多様な専門性が重なり合うことで、より強い信頼のネットワークが生まれていく。世界中の仲間とともに消費者と企業、双方を守るための強い基盤を築けていると感じます」