前述の高度な業務を担うため、人材育成には特に注力しているという。
「LRCでは『ツーステップトレーニング』『リーダーシッププログラム』『LRCカレッジ』などの研修を用意し、新人レベルからディレクターにまで常にスキル向上の場を与えます。研修では法務にとどまらず、他部門の業務、会社の方向性、広義のリスク管理までを広範かつ段階的に学び、幅広い視野と見識を身に付けるのです。『人が宝』という視点は外にも向けられており、企業法務に必要なバランス感覚、英語力、金融の経験を持つ人材には絶えず門戸が開かれています。現在バンキング業務を中心に重要な責務を担う高畑弁護士も、こうした視点で外部から迎え入れた人材です」
はぐくんだ人材がうまく定着しているという法務部の「働きやすさ」とは?
「よい意味でローカライゼーションが進んでいることが大きなポイントでしょうか。外資系企業でありながら『日本のことはできるだけ日本に任せる』風土があり、本店や他拠点からのコントロールが適度。クロスボーダー案件の処理における判断も基本的には現地のメンバーに任されるなど、日本が本国の強力な管理下におかれる仕組みではありません。適切な権限委譲と責務を全うできる業務プロセスが魅力であり、大きなやりがいにつながっています。また法務の意見が尊重される社内風土もメンバーの士気を向上させています」
組織が向かう方向に、法務部長はどんな展望を持っているのだろうか。
「メンバー一人一人のスキル向上を図りながら、グローバルにおける日本の法務部のプレゼンスを上げることが目標。日本には独特な規制や法律があり、『わかりにくい国』と言われることがありますが、その多くは知られていないために起こる誤解。海外から見えにくい点を明確にし、こちらから積極的に情報発信をする必要性もグローバル企業の一員として実感しています。私は昨年、日本はもちろんアジア人としてただ一人、グローバル・エグゼクティブコミッティのメンバーに選ばれました。これを機に日本のメンバーがさらなる活躍をするための土壌を整備していきたいと考えています」