ところで、赤松氏はもともと研究畑出身。二十数年前には、同社の特許第1号「細胞質雄性不稔技術」を開発している。部員のうち2名も、やはり研究開発部隊からの転身だ。
「当社は典型的な研究開発型企業。加えて、植物という特殊な世界を対象にしています。知財管理をしっかりやろうと思ったら、技術に対するある程度の専門知識が、必要になるのです」
例えば同社の研究本部が大学との共同研究を行う場合などには、法的な契約を担当する部員と知財のエキスパートが協力してフォローする。
「もっと大きな企業では、知財部門が独立して置かれているところが多いと思います。ただ両者が一つの組織にいることで、現場のニーズに対して柔軟に対応できるし、何よりもお互いに学習し合えるというメリットがあります」
法務の役割を「サービス業であるべき」と赤松氏は言う。
「研究の現場が結果を出すために、あるいは営業の仕事がスムーズに進むためにお手伝いする。当然、リスクについてのマネジメントは必要ですが、頭ごなしに『それはやめろ』というスタンスでは、業務を停滞させるだけですから」
今後ますます加速が予想されるグローバル化への対応も、法務にとって重要な課題になる。
「当社の場合、日本で開発した品種や技術を海外で権利化する、というパターンが圧倒的に多い。そうした権利をしっかり守っていかなくてはいけません。同時に相手側の権利を侵害しない、という姿勢も大切です。研究開発を目的に途上国から素材を持ってこようとすると、『生物多様性条約違反』を理由に拒否されるような事例が最近聞かれるようになりました。そうした新たな動向も踏まえつつ、グローバル時代にふさわしい法務部として、いっそうのレベルアップを図りたいと考えています」