常時25〜30名の陣容で構成される国際法局経済条約課。うち任期付職員として勤務する弁護士を含む法曹有資格者は現在5名。経済連携協定の交渉・締結で重要な役割を果たす彼らの仕事について、河津邦彦経済条約課長が答えてくれた。
「経済条約の中で、経済連携協定(EPA)、投資協定及び租税条約の3つが、当課のフラッグシップ案件です」
各種条約の政策的な判断を行う省内の主管課や担当部局および関係省庁と協働して、その政策判断が法的に成り立つかを徹底的に検討する。具体的には、日本が他国と交渉を行う際に用いる対処方針について、事前に法的な論点を洗い出し、ルール化した時に現行の国内法で実施できるかを確認する。実施できないなら既存の国内法にどう手を加えたら可能になるかなどを検討する。交渉にも参加し、対処方針が適切に発動されているかを確認。交渉中に条文の文言修正が行われる場合には、現場で法的な問題を検討する。
「そうして交渉の進展を支援します。交渉後は、国家間の誤解や紛争の芽を排除すべく合意内容が条文にきちんと反映されているかを確認・精査(リーガルスクラビング)。ここまでが条約締結に先立つ交渉に関する対応で、条約が完成すると、内閣法制局の審査・閣議決定・国会提出といった、条約の発効に必要な国内の一連のプロセスを主導します。条約の実施・運用段階で問題が生じた場合は解消を目指し、条文の意味するところを解釈・精査する――これらが当課の主な仕事です」
つまり経済条約課は、交渉のための準備、交渉への参加、締結、実施という一連の過程において法的観点から適切な助言を行う責務を負う。投資協定を例にとれば、エネルギー、金融、通信分野などの国内法令が絡み、新たなルールと既存法令との整合性の確認が必要となる。
同課が弁護士からの公募を始めたのは2003年だ。
「以来、35名の法曹有資格者に任期付職員として勤務してもらいました。弁護士として培った知見、強みを生かしてもらうことはもちろんですが、『弁護士だから』『任期付だから』と業務範囲を制限することはいっさいなく、立場と責任は他の外務省員と同等です。基本的に、課員それぞれが省内の職員や他省庁の担当者と協働して業務を進めます。例えばTPPには30もの章があり、分野ごとに当課の担当が必要となりました」