同事務所には現在、木村寛則弁護士と鯉渕健弁護士の2名が所属。前事務所時代、森弁護士のもとで多くの案件に尽力してきた弁護士だ。両氏に森弁護士との仕事で学んできたことについてうかがった。
「当然ですが、紛争案件や労働案件では、必ず利害の対立があります。しかし森弁護士が担当した案件では、適正な内容で和解する、話し合いで決着するケースが比較的多かったように思います。クライアントから『裁判に持ち込みたい』と強く言われても、慎重に依頼者の利益を考えた結果、早期決着を図るという具合です。裁判になったとしても闇雲に自分たちの言い分を主張せず、裁判官が何を重視して判断するか、そのポイントを的確に捉えて進めていく。10年の裁判官経験をもつ森弁護士ならではの〝視点と勘所〞を、自分も身につけたいと思います」(木村弁護士)
「紛争系の仕事の際、相手方の主張にどう反論していくのかという法的分析力もさることながら、全体の戦略の組み立て方、組み立てるにあたっての視点が素晴らしいと、いつも感じます。論点ごとに様々な戦略があるなかで、どんな構成で反論すれば目指すゴールにたどりつけるのか――その過程で出てくるアイデアが非常に豊富なのです。そうした〝戦略構築力〞をいつも勉強させていただいています」(鯉渕弁護士)
木村弁護士は訴訟以外に、調停や執行保全関係、ADRなどの裁判所手続を得意とし、係争金額が数十億から数百億円にのぼるインパクトある案件を多く扱ってきた。鯉渕弁護士は事業再生の経験が豊富で、そこで培ってきた経営者などとの対話力、相手の本音を引き出す力を磨いてきた。
両氏とも、新株発行差止仮処分や林原の倒産案件など森弁護士の〝仕事〞を間近で見ながら、弁護士として進むべき自分の道筋を見いだしてきたわけだ。
森弁護士は、過去の大型案件で、国内外の法律学者はもちろん、システム、金融、失敗学など様々な専門家から意見書を集めた。そのアカデミックな交友関係の広さも森弁護士ならでは。また、M&A契約における表明保証違反に関する裁判では、泥臭い事実調査の積み重ねで成果を収めたともいう。アメリカやイスラエルの〝クラスアクション〞などに関与する国際的な顔を持つ一方、〝現場百遍〞ともいうべき地道な作業を厭わない別の顔も併せ持つ。共に働く弁護士にとって、森弁護士のそんなギャップも、大きな魅力の一つのようだ。
ただ、森弁護士は言う。
「初任でお世話になった裁判長がおっしゃっていたのは、『自分(裁判長)が教えるわけではなく、事件が先生だ』ということ。本当にそのとおりだと思います。私が誰かに何かを教えているわけではなく、その人の学ぶ姿勢の問題だと。ですから、木村・鯉渕両弁護士が何かを学んでいるとしたら、それは二人に、自ら学び、吸収したいという強い意欲があるからでしょう。彼らのような意欲や好奇心に満ちた弁護士をぜひ、採用していきたいと思っています」