同事務所の業務割合は、大手損害保険会社側の交通事故対応が多くを占め、顧問を含む中小企業の企業法務、行政・自治体法務、ほかに顧客の紹介による一般民事・刑事事件などとなっている。
なお顧問先としては、各種金融機関、学校法人、建設企業、派遣企業などで、宇都宮市を本拠地とする企業・機関が多くを占めている。先述のとおり、顧客自身が弁護士の良し悪しを容易に判断する情報をもっていない状況で、例えば交通事故対応ではどのような点に留意しているのか。
「当事務所の主要なお客さまに交通事故の当事者の方がいらっしゃいますが、当事者の方に対し、事件解決の見通しのみならず、損害賠償保険の利用の仕方も含め、 “メリット・デメリット・リスクをわかりやすく説明し、選択肢を提示すること”が重要なポイントとなります。時に、『勝ち目はない』という“見立て”も、率直に伝えます。もちろん“見立て”と“結果”に大きな差を生じさせないことがプロとしての腕の見せどころですが、まずは誠心誠意・誠実にわかりやすく、という姿勢を大切にしています」
顧問先は、宇都宮市を基盤とする中小企業が多い。社内に法務部門を持つ顧客企業は少なく、経営者と直接やりとりすることが多いという。
「中小企業において、企業の経営判断、意思決定に直接かかわれることは、やはり醍醐味です。企業の未来、経営者の悩みに至るまで腹を割って話し、信頼関係を深める。お客さまと熱く議論することもよくあります。宇都宮市における法律事務所の選択肢は、都心部に比べると少ないこともあり、一度ご縁ができたお客さまとは長くお付き合いすることになりますね」
そうした中小企業から寄せられる相談には、一定の傾向があるそうだ。契約書においても、「元請けから出された契約書に不利な条項があったのに、よくわからないままサインした」「従業員の雇用契約に必要な条項を入れていなかった」など、基本的な法的対応が不十分であるために経営者が窮地に立たされるというケースが多い。
「例えば就業規則の必要性、36協定、個人情報保護法についての知識など、会社に関係する法律の基礎を十分に把握していない企業が少なくないように思います。中小企業の方に、企業経営に必要な法律知識を周知し、徹底していただくための、“中小企業向け法務サービスパッケージ”のような仕組みを当事務所独自でつくり、提供していきたいと考えています。つまり、どんな企業にとっても必要である法的サービスを、手軽に理解しやすい形で提供し、中小企業のリーガルパワーを一律に強化する。そのうえで、当該企業特有の法的問題への対処、事業発展に必要なアドバイスを行える法律事務所――そうした存在になっていきたいのです。
また、債権回収やクレーム対応など、中小企業に必要であろう法的分野はある程度決まっているので、そうした分野に向けたサービスパッケージもゆくゆくは増やしていけたら。中小企業のお客さまが企業経営を不安なく続けるうえで、知るべき法律・法分野について、少しずつでも啓蒙していけたらいいですね」