基幹業務は、交通事故、債務整理、そして顧問先の法律相談などである。交通事故と債務整理は、Webマーケティングでの集客が主となる。西川弁護士は、この背景を、次のように説明する。
「まずWebマーケティングで経済的基盤を堅固にして、そこで得たリソースを様々な社会的活動や憲法的価値を実現する活動に投下し、全員一丸で取り組んでいこうというのが当法人の考え方。社会的活動を続けていくには先立つものがどうしても必要ですから。僭越ですが、これまで多くの憲法訴訟などを担ってこられた諸先輩方の志を若い世代で引き継いでいくための方法を私たちなりに考えた結果、Webマーケティングでの地盤づくりに行きつきました」
そんな西川弁護士には、若手の育成においても熱い思いがある。
「せっかくこの業界に希望を抱いて飛び込んできた若手弁護士のために、弁護士としての本分を全うできる環境、いろいろな意味で安心して活躍できる場を提供したい、そんな思いで今の運営形態を選択しています。安定して仕事が回る状態、弁護士が弁護士業に注力できる場を提供したいからです。また、もはや“私の背中を見て学べ”は通用しない時代。ですから一般企業と同じように、教育体制を整え、目標設定や評価方法を明確にし、若手世代も納得して働ける環境を構築しているつもりです」
同法人では、新卒の弁護士の場合、3カ月間の研修期間を設ける。弁護士としての心構え、社会人としての身だしなみ・マナー研修、相談から受任に至るための営業研修・ロールプレイング、案件の進め方に関する業務研修、終了した案件などの記録をもとにした起案や業務に関するロールプレイングも独自のプログラムに則って行う。なお、メンター制も採用しており、研修期間以降も先輩弁護士がサポートするそうだ。
「私たちは“己を正しく自覚し、早く成長していけること”を重視しています。そのために1週間ごとに目標を設定し、到達度と原因分析、翌週からの課題・行動改善を書き出すという振り返りを毎週全員で行っています。そうすることで、短期間で、弁護士としての成長実感を得てもらえるのではないかと考えます」
つまり、何をどこまでやればどう評価されるかが明確なのだ。
「ここまで具体的な評価基準を設けている法律事務所はあまりないと思います。しかし、何をどこまでやればどう給料やポジションが上がるのかが明確であれば、弁護士ももっと働きやすくなるはずです。そこさえしっかりやれていれば、あとは自分のやりたい活動に時間を使ってもらってよいのです」
新卒弁護士が“すべきこと”は、Webマーケティングによって用意されることになる。
「仕事がふんだんにあるため、何をして売り上げを?どこに営業に?といったことで悩む必要もありません。ここ数年、多くの司法修習生と接してきて、弁護士のカルチャー、働き方などに関する考え方が全体的に大きく変わってきているように感じています。それがよいか悪いかの議論ではなく、この業界に入ってくる若い人たちを受け入れる側の私たちも変化し、対応していくことも大事ではないかと思っています」
若手人材をきちんと受け入れ、育成していくために、試行錯誤しながら、新たな手法もいとわず取り入れる。「それが結果的に自分を育ててくれた法曹界への恩返しになるのでは」と西川弁護士は言う。そうして規模の拡大=増員を行うことも、同法人の目標である。
「数だけの問題ではありませんが、それでもたくさんの力・人材が集まれば、それだけ大きな力が出せるし、様々なことを成し遂げられます。私たちは『人権型ロー・ファーム』というコンセプトを掲げ、『世界を変え、歴史を作る』ことを経営目的としています。その価値観を共有していること、その気概を持っている人材が集まっていることが特徴です」