多様かつ多数の弁護士がノウハウや知見を共有するための体制について、渡辺弁護士はこう語る。
「所属弁護士が多い新潟事務所が中心となりますが、事故賠償、相続・後見、離婚、企業法務といった業務分野に特化したチームを構成し、各チームが専門性を高めています。都市部の法律事務所では当たり前かもしれませんが、地方都市でそうした体制を敷くことができる事務所は多くはないと思います。新潟以外の拠点の弁護士も、月1回開催の勉強会に参加して、判例や最新情報、専門的な知識を身につけています」
仕事の進め方については、今井慶貴弁護士が教えてくれた。
「当事務所では、企業などで活用されているCRMツールを導入しており、顧客情報の一元化や、弁護士同士のコミュニケーションもこれを使っています。どの拠点の弁護士も、担当事件で困っていることや知りたいことがあれば、このプラットフォーム上で質問をして、ほかの弁護士から回答を得られるかたちです。特に若手弁護士は頻繁に利用していますね。もともと、風通しの良い風土ではありますが、そのように気軽にコミュニケーションがとれる環境も整備しています。また、CRMツールと連携したクラウドストレージも導入し、事件資料を一元的に管理。年間1000件ほどの案件に関与しますが、記録はすべてそこに保管し、起案の際などに各弁護士が活用しています」
こうしたツールの導入はもとより、効果的なWebマーケティングの土台づくりに尽力してきたのは、東京事務所所長を務める大橋良二弁護士だ。某リーガルテック企業の取締役(共同創業者)も兼任し、同事務所のDX化に貢献している。
「新型コロナの影響を受けて、地方裁判所もデジタル化が進みつつあります。それを受けて私たちも、記録のペーパーレス化促進や、即時対応が可能なように、弁護士にタブレット端末を支給しています」と、和田弁護士。
40年超の伝統があり、創設以来のカルチャーを大切にしている同事務所だが、案件の獲得手法や仕事の環境面において“常に一歩先”を見て手を打っている点が印象深い。渡辺弁護士は言う。
「私が入所した12年頃、ホームページを通じた集客手法や、専門特化型のWebマーケティングを行っている法律事務所は地方都市では珍しかったと思います。実際、入所してみると、新しい取り組みに躊躇がなく、柔軟性が高い事務所だと感じました。加えて、弁護士数が多いことは、蓄積できる知見の量、情報共有の機会が多いということ。ベテラン弁護士の事例はもちろん、私より期が若い弁護士で大きな成果を出した案件があれば、それもすぐに参考にさせてもらう。自分一人が体験できる事件数は限られていますが、弁護士が30名いれば30倍の追体験ができる。それも当事務所の大きな強みだと思います」