Vol.84
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左から、鈴木佑一郎弁護士(67期)、窪田英一郎弁護士(43期)、中岡起代子弁護士(61期)、乾裕介弁護士(56期)、今井優仁弁護士(57期)、矢野恵美子弁理士、堀内一成弁護士(69期)、山田康太弁護士(72期)。10名の弁護士(うち6名が弁理士資格保持者)と、2名の弁理士が所属

左から、鈴木佑一郎弁護士(67期)、窪田英一郎弁護士(43期)、中岡起代子弁護士(61期)、乾裕介弁護士(56期)、今井優仁弁護士(57期)、矢野恵美子弁理士、堀内一成弁護士(69期)、山田康太弁護士(72期)。10名の弁護士(うち6名が弁理士資格保持者)と、2名の弁理士が所属

STYLE OF WORK

#171

窪田法律事務所

多様な経験・知見を有する弁護士が集結。知財戦略・知財紛争のブティックファーム

国内はもとより海外企業も多く支援

知的財産権に関する法務、および訴訟を強みとする窪田法律事務所。代表の窪田英一郎弁護士は、中村合同特許法律事務所を経て、1994年に前身となる窪田法律特許事務所を設立。その後、グローバルファームのロヴェルズ法律事務所(現ホーガン・ロヴェルズ法律事務所外国法共同事業)のパートナーとなり、自身の事務所メンバーを中心にジャパンチームを編成。2015年に同チームメンバーとともにファームを離れ、窪田法律事務所を再稼働させた。

「日本のクライアントのお手伝いをしっかりやっていきたいと考え、ファームを離れて独立したのですが、外資系法律事務所で活動していたおかげで、海外からのご相談もかなり増えています。現状、取り扱い案件のうち、約半分が海外のクライアントの案件となっています」(窪田弁護士)

現在は、国内外のクライアントの知的財産権にかかわる業務・訴訟を核として、独占禁止法、景品表示法、個人情報保護法などに関するアドバイスや、インターネット関連の法律問題の対応など、企業活動全般の法務業務にも活動の幅を広げている。これまでどのような案件に取り組んできたか、窪田弁護士にうかがった。

「09~12年にかけて、ワイモバイルの前身であるイー・アクセスが、ドイツの企業から複数の特許侵害訴訟を提起された際に、我々はイー・アクセス側の代理人を務め、原告の請求棄却で終わりました。相手方は、モバイル通信技術関係の特許ポートフォリオを管理する、ある種のパテントトロールでした。パテントトロールを相手にした事件を多々解決していることが、当事務所の特徴の一つです」

クライアントの業種は多様で、近年は、医薬・製薬企業や、バイオ関連企業の案件が増えている。

「日本のある製薬企業が保有するHIVインテグラーゼ阻害薬に関する特許についてアメリカの製薬企業と争った事件では、我々はアメリカの製薬企業側の代理人となり、特許庁審判部から、日本の製薬企業の特許が無効であるとの審決を得ました。ちなみに、当該クライアントは先発医薬品メーカーでした。我々は小規模事務所ではありますが、そうしたグローバル企業や海外の大手メーカーをクライアントとして多数有しているのです」

国内外のクライアントと密接にやり取りし、交渉など訴訟の前段階から、深く入り込む。

「とはいえ、当事務所のメンバーは全員、“切ったはった”や“勝ち負け”をはっきりさせる訴訟が大好き。戦略策定、鑑定、交渉などの前段階も、もちろん全力でサポートしますが、訴訟になると一層燃えるんですよ」と笑顔を見せる、窪田弁護士だ。

窪田弁護士は、過去に商標権侵害で、アパレル企業がほかのアパレル企業を訴えた訴訟で、原告側の代理人として戦った。

「相手方が証拠として提出した帳簿に『大豆油インキ使用』と書かれていたことに違和感を覚え、帳票関係のクライアントに尋ねたところ、その帳簿が作成された時期に、大豆油インキはまだ使用されていなかったことが判明し、帳簿が証拠提出のために新たに作成された不正なものであることを突き止めました。結果として、数億円の損害賠償が認められたことが印象深いです」

窪田法律事務所
乾弁護士(左)は、前身となる事務所時代から、海外案件を窪田弁護士のもと、けん引してきた。矢野弁理士(右)は薬学部卒業後、大手製薬企業の知財部で長く部長職などを務めた

ビジネスと技術に精通する弁護士が揃う

同事務所には、多様な経歴の弁護士・弁理士が所属する。大学時代の専攻は、工学部、農学部、理学部、薬学部などの理科系出身者、電機・製薬など国内大手メーカーの知財部出身といったメンバーが勢揃いしている。

例えば、中岡起代子弁護士は10年間、企業の知財部で、特許出願や半導体分野の特許交渉・侵害訴訟などを担当しつつ弁理士資格を取得。その後、ロースクールを経て弁護士となり、ホーガン・ロヴェルズに入所して活躍した。

「会社員時代の仕事は『どうやって特許をとるか』という特許出願が主でしたが、弁護士になってからは訴訟で、『特許を無効にしたい』という逆側の仕事も経験してきました。弁護士照会をかけるなどの地道な立証活動を通じて特許を無効にできたことは、貴重な体験でした。侵害訴訟や審決取消訴訟などにおいては、海外訴訟の代理人とも連携し、考え方や意見を集積・鳥瞰して議論を構築する作業が必要ですが、日本との考え方の違いなどがあり、面白みを感じます」(中岡弁護士)

また、鈴木佑一郎弁護士は工学部出身で、前事務所では特許紛争に加えて特許出願も多く行っていたという。

「印象に残るのは、ある企業が権利を行使して特許侵害訴訟を起こそうとしたものの、その権利範囲に重大な誤記があったため、特許庁に訂正審判請求を行った案件です。法律上の根拠を示すにあたり、興味を持って読んでいた自然科学の論文に解決の糸口を見つけ、それを証拠として特許庁に説明し、訂正を認めてもらうことに成功しました。小さな事件ではありますが、やりがいも面白さもあった、思い出深い仕事です」(鈴木弁護士)

窪田弁護士は、「特許権の範囲や明細書の作成など、弁理士としての実務経験も豊富な鈴木弁護士ならではの結果でした。その知見・視点は非常に頼りになります」と語る。

鈴木弁護士は、事務所の支援制度を活用して留学し、昨年カリフォルニア州弁護士資格を取得した。

「当事務所は、海外企業からの依頼が多いこともあって、所属している弁護士・弁理士の英語力のスキルが非常に高い。私自身、ここに入所してから、英語はもちろん日本語の表現力も以前と比べて格段に向上したと自負しています」(鈴木弁護士)

窪田法律事務所
鈴木弁護士(右端)は、留学支援制度を活用して米国留学し、カリフォルニア州弁護士資格を取得。「弁護士はやはり“自分の看板”で仕事できるのが理想。そのために、様々な経験を積める環境を用意する。そうして自ら成長していってほしい」と窪田弁護士

ディスカッションを重視する風土

仕事はチーム制を基本として、契約書のレビューなら2名1組、訴訟なら3~4名1組で業務にあたる。窪田弁護士は言う。

「当事務所は、弁護士・弁理士合わせて12名ほどの小規模所帯です。最近では『誰かこの案件やりたい人』と聞いて手をあげてもらい、できるだけ本人の希望に沿った案件を割り振っています。そのように、弁護士一人ひとりに目が行き届く環境なので、仕事の品質を十分に担保しつつ、迅速に進めていくことが可能なのだと思います」

また、同事務所が大切にしているのは“ディスカッションできる環境”だ。ベテラン、若手にかかわらず、様々な視点で話し合うことで、案件内容を磨き上げていく。

「中岡弁護士はじめパートナーは、本当によく話を聞いてくれますし、意見を言いやすい環境です。そうした環境をより生かしていくために、日頃から率先してドラフトしたり、訴訟であれば『私はこう主張したいがどうでしょうか』など、先回りで動くことを心がけています。先に先輩弁護士の話を聞くと、どうしても引っ張られることがあるので、“まずは自分から”ということですね」(鈴木弁護士)

窪田弁護士に、今後の事務所の運営目標についてうかがった。

「長く『知財のブティックファーム』の看板を掲げてきましたが、特許侵害訴訟の案件数の減少を見てもわかるとおり、市場としては実は先細るのではないかというのが私個人の見解です。特に、当事務所のクライアントの、割合として高い外資系企業にとっては、日本は中国ほどマーケットが大きいわけでもなく、英語で裁判ができるわけでもない、あまり魅力的ではない市場に映っているのではないでしょうか。ですから今後は、知財という絶対的な強みを持つ、総合事務所へと緩やかに変容させていくことも視野に入れています。事務所の継続的な発展を鑑み、会社法など、当事務所として新規分野にあたる取扱分野を『開拓してみたい』、『弁護士の幅を広げてみたい』と言ってくれるような弁護士が、所内で自然発生的に現れる、あるいはそうした弁護士が仲間に加わりながら、事務所が発展していけたらうれしいですね」

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。

窪田法律事務所
勉強会は毎月1回、知財の判例を中心にディスカッションしながら実施。また日本語・英語のニュースレターを3カ月に1回、弁護士全員が持ち回りで発信している

Editor's Focus!

エントランスに飾られるのは、特許庁と関連団体の親睦野球大会「パテント杯」の優勝旗。「一昨年の58回大会から2連覇中。私が中村合同特許法律事務所時代から出場していて、退所後は自分でチームをつくって出場しています。今年は3連覇を狙っています!」(窪田弁護士)

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