同事務所では、アソシエイトは特定のパートナーにつかず、本人の希望や業務量をパートナーが勘案し、仕事を割り振るスタイル。「入所3年目までは幅広く案件を担当し対応力をつけるとともに、注力していきたい分野や案件を見出してもらう。だいたい6年目以降で、パートナーになりたい弁護士は手を挙げてもらい、パートナー会議で検討しています」と、和田弁護士。なお、多様な経験も持つ弁護士が集結した事務所だからこそ、“すり合わせ”を大切にしている。パートナー会議と弁護士会議をそれぞれ2週間に一度、半日かけて行っているという。
司法修習後に入所した杉谷聡弁護士に、同事務所で働く魅力をうかがった。
「私は出身県の愛知で働きたいと思い、東京の大学卒業後、設立まもない当事務所に入所しました。印象に残るのは、入所面接時に原弁護士と和田弁護士が語った、『名古屋の経済規模なら、四大法律事務所と同じスケールの事務所があっていいと思う。私たちはそういう事務所をつくりたい』という熱い言葉。こんなパートナーがいる事務所なら、自分も弁護士として大きく成長できるのではないかと、感銘を受けました。入所時はまだ、自分がどんな分野に興味を持てるか明確ではなかったものの、先輩弁護士から、事件の扱い方、依頼者との接し方、方針の決め方などについて間近で学ぶうち、自分なりのスタイルや得意分野を見いだせるようになりました」
実際、杉谷弁護士は、著作権などの知的財産権分野、ITビジネス法といった“事務所の新たな軸”を確立しつつあるという。
さらに、所内の先輩弁護士と協働した案件の例についてもうかがった。
「労務分野に強く、多くの労働審判に関与している原弁護士と手がけた案件が印象深いです。愛知県の半導体関連メーカーで、退職した従業員が製造ノウハウを持ち出し、直後、競合企業に転職したため、同メーカーから、原弁護士が相談を受けたものです。刑事告訴も含めて対応策を多角的に検討しましたが、最終的には不正競争防止法違反で、営業秘密の使用差し止めと、その使用による損害賠償を求める民事訴訟を提起しました。証拠を収集して、そこから裁判の見とおしを立て、訴訟を起こした際には大学の教授に依頼して意見書を書いてもらい、クライアントの技術職の方に話を聞いて資料を作成するなど、訴訟をしながら進めた部分が多かった事件です。1年半ほどの時間を要しましたが、先日、勝訴判決が得られたところです。こうした事件は、メーカーが多い名古屋および中部エリアで起こりがちな事件かもしれません」
原弁護士は言う。
「この事件は、最初は『退職者が何かを持ち出した』といった程度の情報しかありませんでした。それほど“とっかかり”の少ない事件でしたが、最終的にクライアントにも喜んでいただける結果となりました。あきらめずにやり続けること、『頑張ってみよう』と奮起すること、そうしたことの積み重ねがあって、最後までたどりつけた事件でした。それは杉谷弁護士をはじめ、議論できる仲間がいたから成し得たことです。周囲の仲間と率直に意見を交わし合える環境であることは、素晴らしいことだと思います」