Vol.91
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前列左から、山崎真理弁護士(71期)、辻裏光希弁護士(72期)、中井直子弁護士(71期)、太田香弁護士(63期)、春山莉沙弁護士(74期)、名古屋秀幸弁護士(70期)。後列左から、関口尊成弁護士(60期)、副田達也弁護士(59期)、中田順夫弁護士(37期)、水落一隆弁護士(49期)、井上俊介弁護士(62期)

前列左から、山崎真理弁護士(71期)、辻裏光希弁護士(72期)、中井直子弁護士(71期)、太田香弁護士(63期)、春山莉沙弁護士(74期)、名古屋秀幸弁護士(70期)。後列左から、関口尊成弁護士(60期)、副田達也弁護士(59期)、中田順夫弁護士(37期)、水落一隆弁護士(49期)、井上俊介弁護士(62期)

STYLE OF WORK

#188

日比谷中田法律事務所

M&Aを専門領域として、ビジネスの実態を踏まえた高度な知見とサービスを提供

クロスボーダーなど複雑な案件にも対応

日本企業による海外企業の買収案件で、トップクラスの実績を有する日比谷中田法律事務所。ロンドンに本拠を構える、Allen&Overy東京オフィスのM&Aプラクティスを創設した中田順夫弁護士が、2012年に開設した法律事務所である。その強みを、中田弁護士にうかがった。

「当事務所の1つ目の強みは、M&Aに特化しているために圧倒的な専門性を有し、M&A案件に求められるスピードに対応できること。2つ目は、所属弁護士全員が対象ビジネスの内容を十分に理解し、ビジネスの実態に即して、課題解決のソリューションを柔軟に提供できること。3つ目は、クロスボーダー案件を通じて培ってきた、世界100カ国以上にわたるグローバルネットワークを有することです。各国に複数の提携先法律事務所を有し、案件の規模や内容に応じて、ベストな現地法律事務所を選んで協働しています。これら3つの強みがあるからこそ、日本企業が真に求めるサービスが提供できるのです」

近年は、国内M&A案件や国内外での売却案件の依頼も増加している。最近、同事務所で増えているのは、メーカーが特定事業部門を一括売却・買収するカーブアウト案件だ。典型的な案件例を、太田香弁護士が教えてくれた。

「私がアソシエイトだった当時、中田弁護士のもとで関与した案件の一つに、自動車部品の製造・販売企業によるカーブアウト買収案件がありました。これは、同業他社が有するNVH事業(防振・防音等部品の製造・販売事業)を、依頼企業が一括買収した案件です。同事業はアメリカ、中国、メキシコなどに工場を展開しており、そのビジネス一式を、従業員も含めて依頼企業が買い受けました。案件自体は大手企業の一事業部門のカーブアウトですが、買収側が競合企業であったことや、事業が複数国にまたがっていたこと、検討・交渉にあたり、必要な情報について、一部海外事業に関して適時入手に困難を伴う事情があったことなど、乗り越えるべきハードルがいくつもある案件を担当することができました。そのような複雑かつ高度なクロスボーダー案件の全体をサポートできることも、当事務所の特徴であり、強みです」

日比谷中田法律事務所
「当事務所は、アソシエイト同士の仲がとてもいいです。そんなアソシエイトたちの食事会の費用を支援する補助金支給も制度化しています」(水落弁護士)

〝少数精鋭〟ゆえに早く成長できる

同事務所では、クロスボーダーM&Aと国内M&Aを合わせて、常に約50案件が並行して進行している。これらを動かすのは、12名の弁護士による少数精鋭チームだ。国内外の法律事務所でM&Aを得意としてきた弁護士、金融系事業会社でインハウスローヤー経験がある弁護士など、多様なメンバーが揃う。若手弁護士にとっては、経験豊富なそういったパートナーの仕事を間近で学ぶことができる。仕事の進め方について、水落一隆弁護士にうかがった。

「海外案件の場合は、現地法律事務所との協働が基本です。マンパワーが必要なデューディリジェンス(DD)などは現地法律事務所が行うため、私たち日本サイドは、パートナー1名とアソシエイト1、2名の少人数で対応できます。国内案件の場合は、私たちがDDを行うわけですが、小・中規模M&Aなら2、3名、大規模でも4、5名で回します。1年目の弁護士であっても海外・国内問わず案件を担当しますし、パートナーと同様に案件全体を見ますから、かなり早いペースで成長できることは間違いありません。3年目の弁護士も、実質的な主担当として国内案件を動かせるようになります」

若手弁護士に積極的に案件を任せる理由を、水落弁護士は次のように説明する。

「アソシエイト全員に、パートナーを目指してほしいと考えているからです。ゆえに、案件を通じてパートナーの仕事を早い段階から見せるようにしています。また、当事務所主催の対外的なセミナーでは、アソシエイトに協力を要請するケースを増やしています。セミナー開催やフォローアップにかかわることで、営業活動を行う方法を実地で学ぶことができます。私たちパートナーは、持てる知見を惜しみなく伝授しますし、場合によってはアソシエイトの営業活動のサポートも行います。そのようなかたちで、一日でも早くパートナーになってもらえる環境を整えているのです」

一方で、若手弁護士がオーバーワークにならないための目配りも怠らない。

「各アソシエイトにメンターとしてパートナーが1人つき、定期的に面談をしながら、直近の状況について相談に乗るなどしています。そして、アソシエイト一人ひとりの仕事状況を全パートナーと共有し、全員が均等に仕事を担当できるように配慮しています」(水落弁護士)

M&Aに特化していることで、同領域に早く深く精通できることはもちろんのこと、もう一つ利点があると、中田弁護士は言う。

「M&Aを扱っていると不思議なことに、案件が一斉に動き、ある時期には一斉に静かになる、という傾向があります。特にそうした〝静かな時期〟は、休暇を取るなどして『勤務時間をセーブしよう』と全員に伝えています。通常業務においても、在宅勤務を活用して、プライベートと仕事の時間を上手に調整することができているようです。各自の裁量に任せ、自由に働いてもらうことが当事務所の基本方針です」

当事者の意識で課題解決に臨む

同事務所が日々取り扱っているМ&Aは、クライアントサイドにとって頻繁にあることではなく、重要案件といえるだろう。

「私たちは常に、クライアント内の〝M&Aプロジェクトチームの一員〟になったつもりで仕事に臨んでいます。事業領域の拡大などのM&Aの直接的な目的の理解は当然として、『会社全体におけるプロジェクトの位置づけは?』『リスクについてどのようなスタンスを取るのか』といった社内の方針を十分把握しつつ、〝自分事〟として案件に携わることで、クライアントを支えます。〝弁護士の仕事だから〟と自分の仕事の範囲を限定せず、私たちもビジネスマインドを持って、チームの一員としてかかわるというスタンスが、結果的によりよいサービス提供につながっていると信じています。パートナーが大切にしているこうしたスタンスは、各案件を通じて、アソシエイトも自然と習得してくれているのではないかと思います」(水落弁護士)

クライアントのビジネスに寄り添いながら案件を積み重ねてきた結果、多様な業種・業界事情、慣習にも精通する弁護士が躍動する。M&Aという〝プラクティス軸〟と、〝インダストリー軸〟をかけ合わせ、より深化したリーガルサービスの提供が実現している。

23年1月からは、パートナー5名による共同経営体制がスタートしている。

「これまで個人事務所として運営してきたので、所内外の新体制への期待は大きい」と中田弁護士。これからの事務所運営について、水落弁護士にうかがった。

「私たちが一番大切にしているのは、『クライアントの事業を理解する』『クライアントの事業に貢献する』というマインドセットです。これを前提に、全弁護士で〝M&Aを基軸に周辺領域に専門性を拡大していく〟という目標を掲げています。すでに、表明保証保険の分野で独自のプラクティスを確立した弁護士や、JV・CVC、マージャーコントロールファイリング、TOB、MBO・LBOファイナンス、米国・欧州・アジア各地域などの案件を専門に取り扱える弁護士も誕生しています。そのように周辺領域を広げて緩やかに事務所を拡大していく計画ですが、現在の働きやすく心地いい職場環境を失ってはなりません。この環境は、ベテラン・若手にかかわらず、お互いに自然とリスペクトし合う風土があるからだと、私は考えます。そのような風土を絶やすことなく、今後も事務所経営を継続していきたいと思います」

Editor's Focus!

同事務所がオフィスを構えるビルからは、日比谷公園の緑が一望できる(写真は井上俊介パートナーの執務スペース)。なお、“新経営陣”は、アソシエイトのために留学支援制度を新設。「働き方の自由度が高く、事務スタッフを含めて和やかな雰囲気の、気持ちよく働ける環境です」と太田弁護士が笑顔で語ってくれた。

日比谷中田法律事務所