同事務所では、クロスボーダーM&Aと国内M&Aを合わせて、常に約50案件が並行して進行している。これらを動かすのは、12名の弁護士による少数精鋭チームだ。国内外の法律事務所でM&Aを得意としてきた弁護士、金融系事業会社でインハウスローヤー経験がある弁護士など、多様なメンバーが揃う。若手弁護士にとっては、経験豊富なそういったパートナーの仕事を間近で学ぶことができる。仕事の進め方について、水落一隆弁護士にうかがった。
「海外案件の場合は、現地法律事務所との協働が基本です。マンパワーが必要なデューディリジェンス(DD)などは現地法律事務所が行うため、私たち日本サイドは、パートナー1名とアソシエイト1、2名の少人数で対応できます。国内案件の場合は、私たちがDDを行うわけですが、小・中規模M&Aなら2、3名、大規模でも4、5名で回します。1年目の弁護士であっても海外・国内問わず案件を担当しますし、パートナーと同様に案件全体を見ますから、かなり早いペースで成長できることは間違いありません。3年目の弁護士も、実質的な主担当として国内案件を動かせるようになります」
若手弁護士に積極的に案件を任せる理由を、水落弁護士は次のように説明する。
「アソシエイト全員に、パートナーを目指してほしいと考えているからです。ゆえに、案件を通じてパートナーの仕事を早い段階から見せるようにしています。また、当事務所主催の対外的なセミナーでは、アソシエイトに協力を要請するケースを増やしています。セミナー開催やフォローアップにかかわることで、営業活動を行う方法を実地で学ぶことができます。私たちパートナーは、持てる知見を惜しみなく伝授しますし、場合によってはアソシエイトの営業活動のサポートも行います。そのようなかたちで、一日でも早くパートナーになってもらえる環境を整えているのです」
一方で、若手弁護士がオーバーワークにならないための目配りも怠らない。
「各アソシエイトにメンターとしてパートナーが1人つき、定期的に面談をしながら、直近の状況について相談に乗るなどしています。そして、アソシエイト一人ひとりの仕事状況を全パートナーと共有し、全員が均等に仕事を担当できるように配慮しています」(水落弁護士)
M&Aに特化していることで、同領域に早く深く精通できることはもちろんのこと、もう一つ利点があると、中田弁護士は言う。
「M&Aを扱っていると不思議なことに、案件が一斉に動き、ある時期には一斉に静かになる、という傾向があります。特にそうした〝静かな時期〟は、休暇を取るなどして『勤務時間をセーブしよう』と全員に伝えています。通常業務においても、在宅勤務を活用して、プライベートと仕事の時間を上手に調整することができているようです。各自の裁量に任せ、自由に働いてもらうことが当事務所の基本方針です」