Vol.97
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前列左から、浅原弘明弁護士(65期)、田浦 一弁護士(64期)、山本飛翔弁護士、山内達也弁護士(67期)、尾西祥平弁護士

前列左から、浅原弘明弁護士(65期)、田浦 一弁護士(64期)、山本飛翔弁護士、山内達也弁護士(67期)、尾西祥平弁護士

STYLE OF WORK

#206

OLD NEW THINGS法律事務所

事業会社の新規事業・成長戦略支援における“ファーストコールパートナー”を目指す

意思決定層のよき相談相手として

企業は日々、携わる事業の強化や投資判断、組織設計など、実に多様な意思決定を繰り返している。なかでも新規事業や成長戦略の構想段階においては、論点が明確でない段階から検討が進むことが多い。「新規事業・成長戦略支援」でエッジを立てた、OLD NEW THINGS法律事務所(以下、ONT)は、こうした“手前の領域”からの関与を得意とする。設立者は、事業会社の法務部や大手法律事務所、ブティック系法律事務所などで経験を積み、M&A・投資・知的財産・金融・ヘルスケアなどに強みを持つ弁護士5名。そんな同事務所では、定型化された業務ではなく“非定型な業務”が多い。相談者は法務部だけではなく、経営者や執行役員、CLOといった意思決定層や経営企画部門が中心となる。尾西祥平弁護士は言う。

「弁護士は、相談内容やゴールが整理されたかたちで依頼を受けることも多いです。しかし、私たちの場合は、アジェンダが明確でなくとも、定例会議の時間を設けて相談をいただくケースが多い。そのように、『まずは“壁打ち”に付き合ってほしい』という意思決定層のニーズは相当数あるのです。私たちは、そうした方々から最初に声をかけていただける、“ファーストコールパートナー”でありたいと考えています」

特徴について、尾西弁護士と山本飛翔弁護士は、次のように語る。

「大きく4つあります。コンセプトでもある、新規事業や成長戦略支援に最適化されたカバレッジを有することと、意思決定層に近接したところで業務を担う機会が多いこと。さらには、大企業とスタートアップ双方のカルチャーを理解していること、AIを積極的に活用した効率的なスモールチームであることです」(尾西弁護士)

「案件の必要性に応じて、所外の弁護士、公認会計士や弁理士などの士業、コンサルタントといった外部の専門家とも柔軟に連携しています。その際、私たちはプロジェクトマネジメントの立場で関与し、目的に応じた人選と体制の設計を行います。そのうえで、意思決定層との対話を通じて企業の優先事項やリスク認識を共有し、それを各専門家に適切に伝え、お客さまにとって頼れる専門家・仲間を増やしていく――そうした役割も担います」(山本弁護士)

“入り口”は純粋な法務マターでなくとも、議論を重ねるうちに、知財や投資などへ関与範囲が広がっていくケースも多い。

「こう説明すると、とらえどころがない事務所に映るもしれません。弁護士の数が多いわけでもなく、知財や独禁法など特定分野が強みのブティック型でもない。しかし、私たちが打ち出した“新規事業・成長戦略支援”というコンセプトと特徴を踏まえて『この案件は“ONTらしい”と思うので連絡しました』というありがたいお声がけやご紹介をいただく機会が増えています」(尾西弁護士)

雑談も含め情報交換は頻繁。週次の定例会議に加えて四半期に一度、「戦略会議」を設けて、互いの案件内容や売上をオープンにし、業務改善や付加価値向上のためのアイデアを出し合う

オーダーメード型で顧客に寄り添う

例えば尾西弁護士は、上場企業によるスタートアップ投資・M&Aといった成長戦略案件のみならず、上場前後のガバナンス・有事対応案件にも幅広く従事している。

山本弁護士は、大手企業の中央研究所におけるシーズ創出の段階から、ビジネス化まで伴走している。

「個別の知財対応にとどまらず、事業化の可能性を高める観点から、社内フローの設計や関係部門の巻き込み、体制整備までを支援しています。カウンターパートが法務や知財担当者ではなく、研究所所属の方である点が特徴的です」

浅原弘明弁護士は、あるスタートアップ企業を支援し、大企業へのイグジットをサポートした。

「お客さまにとって初めてのM&Aだったので、『M&Aとは?』『買い手の探し方は?』『買い手へ提示する条件は?』など幅広く“壁打ち”しながら伴走し、デューディリジェンスや契約対応など実務まで一貫して行いました。買収後も、そのお客さまとの関係は継続しています。買収先の企業で新規事業やデジタル領域の責任を担う立場が加わったこともあり、法務とは関係のない“よろず相談”にも応じています(笑)。そのお客さまは比較的若い方なので、何かと頼りにしてくれていることも嬉しいですね」  

山内達也弁護士は、フィンテックスタートアップとともに、日本では前例のない、新たな金融事業の仕組みづくりに携わっている。

「現行制度のもとでは実現が難しかったので、規制当局や業界団体などと対話を重ね、どのような枠組みであれば成り立ち得るかを検討し、法改正の議論にも加わっています。現在も改正法に基づくライセンス取得に向けた支援を行っており、規制のあり方や運用まで踏み込んでいます。規制当局や業界団体などとの対話の場では、クライアント企業に代わって事業内容の説明や論点整理など前面に立ったサポートを行い『ここまでやってくれる弁護士はいなかった』とありがたいお言葉をいただきました」

田浦一弁護士は、「北海道スタートアップスタジオ」(スタートアップ創出プロジェクト)が提供する、事業開発支援プログラムの法務戦略メンターを務めるなど、地域発のスタートアップ支援を行う。

「大学発ベンチャーなどに対し、起業初期の法務や経営上の留意点について助言を行い、地域における新規事業創出の基盤づくりを支援しています。法律を超えた相談・議論もあって、地域経済を盛り上げ、事業イノベーションに貢献できる業務として、大きなやりがいを感じています」

これらの事例からわかるのは、全員が事務所のコンセプトどおり、特定の法分野に閉じず、顧客の機微なニーズや潜在的課題にまで踏み込んだ対応を行っている点だ。

「私たちには、定型的な仕事を大量に処理することで、事務所を拡大していこうという考えはありません。クライアントとともに学び、考え、悩み、行動し、創造的かつ戦略的なコンサルティング機能を発揮すること、一人ひとりが一つひとつの仕事でしっかり頭を使って考え、行動することを何よりも大切にしています」(田浦弁護士)

先達の築いた道程を自分たちなりに探る

同事務所の弁護士は、顧客から「〇〇さんと仕事がしたいから、仕事をどうつくろうかと考えている」といった言葉を頂戴することが少なくないという。期待していた“ONTのファン”が増えているというわけだ。尾西弁護士は言う。

「『不安を抱えて相談に来られたお客さまが少しでも笑顔になって帰ってくださるなら、それが直接の報酬にならなくとも、自分たちの仕事には十分価値がある』という、私の“弁護士の師匠”の言葉を、今でも大切にしています。結果的に案件化しなくても、信頼関係を築けた方からは、いつかまた声をかけていただけたりするものだと経験則で知っていますから」

そうした思いや事務所のコンセプトにつながる価値観を、共有できている5人。互いの仕事、人脈、顧客などに関する情報は、チャットツールを用いて日常的にやりとりしている。

「弁護士は、油断するとすぐに自分だけのコミュニティやネットワークにこもりやすいので、事務所運営に関することや案件内容はもちろん、プライベートに関することも意識的かつカジュアルに情報交換をしています。『こんな面白い人と会った』など、いつ誰と会ったかも共有し、“無形の資産”を、所内にどんどん蓄積することを心がけています」(尾西弁護士)

事務所名に込めたのは、「世代を超えて受け継がれてきた法律家としての本質的な価値観や倫理観を当然の土台としつつも、既存の枠組みや固定観念にとらわれることなく仕事に挑む」姿勢だ。

「『新しいことに挑む』と言うと、過去を否定していると受け取られがちですが、そうではありません。私たちは、弁護士業務の本質は不変であると考えています。なぜなら、“レジェンド”と呼ばれる弁護士ほど、今の私たちが目指していることを当たり前に行っていたはず。法務にとどまらない広い視点で助言を行い、経営者を支えてきたからこそ、大企業の社長から直接相談されるような信頼関係を築けていたのではないのか、と。今は弁護士の専門化・細分化が進んでしまって、レジェンド弁護士がかつて行っていたような、“大企業の意思決定層と直接信頼関係を持つ”といったコミュニケーションが取りづらくなってきた。だからこそ、私たちはそのあり方にあえてチャレンジしていきたい。偉大な弁護士の先輩たちが築いてきた道程をなぞり、私たちなりの新しさをそこに加えていく――その繰り返しが、社会に変革をもたらす挑戦者のための“ファーストコールパートナー”への近道であると信じています」(尾西弁護士)

Editor's Focus!

初期的な構想段階から4年以上の準備を経て、2025年4月に設立された同事務所。写真は、開所記念で配ったノベルティ。定番の文具(付箋)、“消えモノ”でチョコレート。そして、事務所名を刷った手ぬぐいがワンセット。「『お客さまと(仕事を通じて)旅をしよう』というストーリーのもと、『旅の途中の宿泊施設に置いてある手ぬぐいはどうか』とみんなで考えて用意したものです」(尾西弁護士)