「海外の法律事務所に勤務していたときインハウスロイヤーとして誘いを受けました。そろそろ帰国して留学前に所属した法律事務所に復帰するつもりだったのですが、留学中によく耳にしたイギリス最大手の証券会社からの誘いだったので、話だけは聞いてみようかと…。そうしたらとんとん拍子に話が進み入社が決まってしまいました。当時の日本では外資系証券会社でも社内弁護士がいるところは少なく、一人で法務を担当することに違和感はなかったのですが、振り返ってみると未知の世界に飛び込み、ましてや日本拠点の法務部を一人で担うという無謀に思える決断は、30代前半の若さゆえ下せたのだと思います(笑)。入社後しばらくは戸惑いの連続でしたね。それ以前に勤務していた東京、ロンドン、シンガポールの大手法律事務所では、相談相手がいくらでもいた。でも会社では直属の上司すら海外に居るので、頻繁にアドバイスはもらえない。ベンチマークの無いところから仕事のやり方を自分で考えていかなくてはなりませんでした」
試行錯誤しながらも仕事に慣れたと思った1998年、画期的な案件に携わる。
「国内大手金融機関との提携交渉に法務責任者として参加しました。時期的に当社自身の本国での合併とも重なり、自分が在籍する会社と他の2社を結び付ける複雑なストラクチャリングや交渉が必要になりました。そこに日本の金融危機の影響を受け、その対応にも追われました。約1年は午前2時・3時まで仕事をする毎日が続きました。でもおかげで、どのような案件のプレッシャーにも耐えられる自信はつきました」
この時期以降、国内の外資系証券会社を巡る環境は大きく変わる。日本企業の国際的資金調達や、国境を越えた大型企業買収など、外資系証券会社が関与する案件が格段に増え、氏自身もそれらに深く関与した。また、金融機関への規制が見直されていくなか、金融機関における法務部の存在がますます重要視されるようになった。江島氏は、これらを背景に法務部体制を強化していく。
「現在の法務部の総勢は14名で、日本の弁護士資格を持つ者が5名。そしてイギリス、アメリカ、オーストラリアの弁護士もいます。弁護士資格を持たないメンバーも、国内金融機関で法務を長年経験したエキスパートがそろっています。スタッフの国籍は日本、アメリカ、オーストラリアと分かれていますが、全員、仕事は日本語でも英語でもこなせます」