Vol.80
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PIONEERS

弁護士の知見×最新技術の融合。最先端のリーガルテック分野で“法務開発”という新たなキャリアパスの構築に挑戦中

奥村友宏

株式会社LegalForce
法務開発-マネージャー 弁護士(日本・ニューヨーク州)

#35

The One Revolution 新・開拓者たち〜 ある弁護士の挑戦 ~

企業法務部、法律事務所における電子契約やAI契約書レビューなど、リーガルテックサービスの活用は年々浸透・拡大しつつある。同分野の進化に伴い、インハウスローヤーでもなくプラクティスローヤーでもない、新たな活躍の場を獲得した弁護士がいる。それが、奥村友宏弁護士だ。同弁護士が見いだした“弁護士の新しいキャリアのつくり方”とは――。

組織と一体感を持ってビジネスを創造

私が所属するLegalForceは、AI×SaaSによる契約書レビューや、クラウド契約管理システムを開発し、企業や法律事務所における法務業務の効率化や品質の平準化などを支援するサービスを提供しています。

当社開発部門には、AI関連技術の研究開発、製品開発、コンテンツ制作の3つの機能があり、私がマネジメントする法務開発部門はコンテンツ制作を担っています。エンジニアやデザイナーと密接にかかわり、一定程度の技術知識も求められる、開発部門の一セクションというわけです。

法務開発部門の業務は、AI契約書レビュー「LegalForce」のレビュー機能における指摘項目の設計や修正文例の作成、機能改善・新機能の提案と開発、600点以上あるひな形の管理、オウンドメディアの法務コンテンツ監修など。それらが法改正に対応できているか、より実務的かといった“弁護士らしい仕事”はともかく、指摘項目の設計や顧客の声を聞いて反映していく機能改善・新機能の開発は、エンジニアとデザイナーの力が不可欠です。この仕事に就くまで、技術的な知識やデザインの知見がゼロだった私は、社内の様々なメンバーに声をかけ、一から教えてもらいました。また、顧客の声を聞くにあたっては、営業部門の協力も重要です。営業の顧客訪問に同行して、顧客に一番近いバックグラウンドを持つ私たちが顧客のニーズや課題をヒアリング、エンジニアやデザイナーにフィードバックし、製品を練り上げていきます。そういった意味で、私の役割は、エンジニア、デザイナー、営業、社内のあらゆる部門の“ハブ”の一面もあると思っています。

もちろん弁護士としての私の知見を社内の各部門の業務に役立ててもらうことが基本です。しかし、単なるアドバイザー、コミュニケーターで終わることなく、各部門やチームと一体感を持ちながら、ビジネスの第一線でサービスを主体的に創造していくことが求められる。それが一般的な弁護士の仕事にはない醍醐味といえます。

私は入社直後にまず、弁護士とパラリーガルからなる英文契約書分析の専任チームを組成し、英文契約書自動レビュー機能を着手から約3カ月で正式版リリースまでこぎつけました。「いい製品・サービスをつくりたい」という他部門の仲間の熱意と協力があってこそできたことです。この英文契約書自動レビュー機能に限らず、私たちが世の中に送り出すサービスは1500を超える企業や法律事務所の法務プロフェッショナルの業務に影響を与えるため、責任は重大ですが、そこに大きなやりがいを感じてもいます。

大手法律事務所で学んだすべてを生かす

私が当社に転職した理由は、前職で弁護士としての業務の進め方に課題感を持っていたこと、米国留学中に目の当たりにしたリーガルテックの将来性に魅せられたこと、大きくはこの2つです。

法律事務所勤務時代、コーポレートローヤーとして、主に企業法務・クロスボーダーM&Aなどの案件に関与しました。M&Aでは、企業法務部の方とともにプロジェクトが動き出してから加わることも多く、「スタート段階から入れたらスキームのアドバイスやリスクの洗い出しなども効果的に行えるのに」と思うことがありました。しかし、多くの企業法務部は契約書レビューなどの日常業務に追われ、M&Aや新規事業立ち上げなど経営の意思決定に強くかかわる機会を多く持つことは難しい。このままでは法務組織の存在意義や重要性の認識を持ってもらいにくいということも、よく伺いました。一方で弁護士の仕事を振り返ると“職人気質”もあってか、知見が属人化され、それらの共有が十分でないことが常。特殊な契約・案件の場合、詳しい弁護士を所内で探し歩き、教えてもらったことが多々あります。また、契約書レビューも、ベテラン弁護士と新人弁護士では回答が違うこともあり、そうした業務における“ばらつき”を日々感じながら、何かしらの改善方法を模索していました。

そんなモヤモヤを抱えていた頃、「AIでレビューできる。誰がやっても同じような結果が出せる」と、私自身が課題に感じていた不満に対して、ストレートに解決策を示してくれたのがリーガルテックだったのです。リーガルテックは将来性もあり、絶対にエキサイティングな仕事ができる――そう考え、海外勤務から帰国してすぐ、当社の門を叩いたという流れです。

私が一弁護士としてアドバイスしたり、契約修正したりできる案件数には限界があります。しかし、今の仕事ならば、1500を超える企業や法律事務所の法務プロフェッショナルの方々の役に立つことができます。その影響力は、計り知れません。その分、法務開発として作成するコンテンツは細部まで気を配り、正確に発信する必要がある。前勤務先では、パートナーや先輩方から、弁護士のリサーチメソッド、リサーチ結果の依頼者への伝え方、ノーと言わずに選択肢を提示してゴールに導く手法など、本当に様々な勉強をさせていただき、しっかりとした指導を受けました。ドラフトを細かく見ていただき、真っ赤になって戻ってくることもしょっちゅうでしたが(笑)。その経験こそが、今の私の礎。慎重すぎるくらい慎重に、一言一句の表現にもこだわる。そんな弁護士のあるべき姿を学ばせていただいたからこそ、この仕事ができています。

弁護士 奥村友宏
法務開発部門は、和文ユニットと英文ユニットがあり、約40名の陣容。弁護士は全社で8名。事業会社のインハウスローヤー、省庁出向経験者など多様

法務プラクティスの変革を支えていく

これからの目標は2つあります。当社のミッションは「全ての契約リスクを制御可能にする」です。全世界における、契約書作成から締結まで契約のリスクを制御し、発見・認識してコントロールする役目を果たすことです。さらに契約案件発生から締結までリスクマネジメントできるよう、機能を強化していく。それがまず1つ目の目標です。2つ目は、海外展開。私は米国とタイで勤務していましたが、外から見ても日本の弁護士のクオリティは高いと感じました。具体的にいえば、細やかなドラフティング力、行き詰まった時にクリエイティブな思考でゴールに導く力などです。そうした能力はグローバルでも日本の弁護士は勝負できる。まさにその優れたプラクティスを、私たちは製品に搭載するわけですが、これを海外展開し、世界に通用することを証明するというのがもう一つの目標です。

法務プラクティスにテクノロジーの力を活用して変革を支える。私たちの業務の社会的価値は、そこにあります。弁護士も企業法務部員も、日々、目の前の案件に必死に取り組んでいます。私たちが提供するサービスによって、業務改善、品質向上が実現され、日本の法務プロフェッショナルが世界と伍していく力を持つことができるのであれば、本望です。

今後も、法務プロフェッショナルの経営への関与強化やDXの推進など法務業界の変革は待ったなしで進むことは間違いないです。その未来に貢献できることや、私と同じ夢を持ってくれる仲間が増えていったら、これほど喜ばしいことはありません。

もしも今、弁護士のキャリアで悩んでいる方がいるなら、お伝えしたいことがあります。

私のキャリアは、計画して成り立ってきたものではありません。法律事務所でのコーポレートローヤー、留学を含む海外経験、そして法務開発と歩んできていますが、そのつど分岐点があり、その時々に応じて自分が挑戦してみたいこと、惹かれたことを選んできた結果、今があります。私は「弁護士だから法律事務所。弁護士だからインハウスローヤー」という、いわば“弁護士という檻”にとらわれずに生きていくべきだと思います。法律は社会活動のすべてに影響するもので、どんな場でも必ず役に立つ知識です。法律を熟知し、使える弁護士はもちろん優位です。ただ、弁護士という肩書にとらわれて自分自身の可能性を狭めるのはもったいない。私自身のキャリアパスが、弁護士の無限の可能性を示す一つの証となるよう、挑戦を続けていきます。

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。