Vol.18
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十数社の顧問先を持ち、企業法務を手掛けるほか、多数の刑事事件を受任しています。昨年は、大学在学中に司法試験に合格した優秀な弁護士が入所してくれました。後進に私の経験やノウハウを伝え、独立準備を支援することも大切な役目だと思っています

十数社の顧問先を持ち、企業法務を手掛けるほか、多数の刑事事件を受任しています。昨年は、大学在学中に司法試験に合格した優秀な弁護士が入所してくれました。後進に私の経験やノウハウを伝え、独立準備を支援することも大切な役目だと思っています

PIONEERS

地縁なし・顧客ゼロからの開業は弁護士会が特筆するモデルケース

大山 滋郎

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表
日本・米国ニューヨーク州弁護士
横浜弁護士会所属(55期)

#19

新時代のWork Front 開拓者たち―その先へ―

勤務先で得たチャンスを生かし日・米の法曹資格を取得

「大学卒業後、司法試験を目指していましたがなかなか結果が出せない中、一般企業での経験も将来にプラスになるだろうと思い、電機メーカーに就職しました。それが27歳の時です。配属された法務部で5年こつこつと法務業務を担当するうち、社内初という海外ロースクール留学のチャンスが巡ってきます。そして米国のロースクールに留学し、ニューヨーク州の弁護士資格を取得しました。その後は現地法人で1年間仕事をするのですが、資格取得で自信もつき『もう一度、日本の司法試験に挑戦しよう』と勤務のかたわら勉強をして、帰国後に司法試験に合格。日本の弁護士資格を取得しました。それが39歳の時でした。メーカーには司法試験合格後も社内弁護士として在籍し計15年勤務しました。契約業務や海外合弁法人設立のスキーム検討など企業法務一連を経験し、日本の弁護士資格取得後は部長待遇のポストで取締役会にも出席。部下を7名ほど持って後進指導も担当しました。会社には感謝しています。入社前、決して堪能といえなかった英語は、同僚の米国人弁護士や海外拠点とのやりとりで土台を作り、留学でさらにブラッシュアップ。一方で企業窓口として外部法律事務所に案件を依頼し、理解度・処理スピードが時に企業の希望に合致しないことも知りました。そして『朝10時に事務所にいない・なかなか返答がない』多数の弁護士を見て、企業の常識が通用しない世界があることも痛感。多くの教訓と経験を与えてくれた企業法務時代でしたが、2006年に退社。当時は『企業法務はやり尽くした』という気持ちでした」

地縁なし・既存顧客ゼロからの開業にあたり考えぬいた戦略

「メーカー退職後は外資系の大手法律事務所に入ります。法律事務所で担当した業務は知財、独禁法、薬事法、証券化のサポートなどでしたが、部分的な業務が多く、直接クライアントと会うことも少なかった。『事務所で顧客と向き合う仕事をするには、少し時間がかかる』と感じ、それならば開業しようと決意しました。法律事務所には約1年しか在籍しなかったので、開業にあたっての既存顧客はゼロでした。2007年4月1日、退職から1日のブランクもなく横浜パートナー法律事務所を開設。横浜で事務所を開設したのは、ワーク&ライフバランスの実現に一番適した地域というのが理由ですが、地縁がない場所で開業するにあたっての戦略は練っていました。その一つが、やり尽くしたと思うほど経験のある『企業法務』を柱にし、海外事案をこなせることも同時にアピールして周囲と差別化を図ることです。また、メーカー時代に国選弁護で100件ほど経験した刑事事件も積極的に扱うことにしました。次にホームページを作って、これら事務所の特徴を『企業の常識にかなったサービスをします』とアピール。数の少ない『刑事事件の私選弁護』を訴求するページも設けました。ホームページの効果は意図していた以上でオープン初日から問い合わせや依頼が入りました」

ニュースレターなど草の根的な活動でも顧客獲得

「起訴前の弁護活動が重要な私選弁護には、企業内弁護士時代に経験した国選弁護(起訴後)との違いに多少の戸惑いがありましたが、すぐに経験を積み、顧問・私選弁護の依頼とも順調に増加。顧問先はみな東京・横浜の会社で、上場企業もあります。顧問は実際の業務が少ないケースもあるので、『ウチは掛け捨ての顧問料ではありません』という差別化を打ち出そうと、定期的なサービスを始めました。もちろんリレーションを密にする狙いもあります。具体的には『ニュースレター』と『企業法務・ワンポイントアドバイス(メール)』を月2回配信。前者は軽い法律エッセーというものですね。ニュースレターの最後に『弁護士より一言』というコーナーを設け、私や家族のエピソードも紹介する読み物スタイルになっています。後者はより企業法務に役立つ実践的な内容です。ニュースレターは構想し原稿を作るのに相当の時間と労力を使いますが、読者から『楽しみにしている』と言われ、また面白い弁護士がいるということで仕事の紹介にもつながっているので、なかなか手が抜けません。また債権回収や未払い残業代など企業経営に大きな影響をおよぼすテーマを取り上げたセミナーも今年の8月から毎月実施します。これらの施策で顧客満足と新規開拓を図っています」

独立開業のエピソードで講演も行う弁護士が描く将来展望とは

「昨年、開業エピソードを弁護士会で講演しました。東京弁護士会から出版される弁護士研修の本に入れてもらえるそうです。既存顧客ゼロからの経験が後進の役に立てばうれしいですが、私自身も目の前にいるお客さまの満足にこだわりながら、未知の顧客を取り込んでいきたいと意気込みを新たにしています。具体的には、顧問先を増やして企業法務の業務割合を高めたい。それに伴って事務所も弁護士7人ほどの規模に拡大できたらと考えています。企業法務と刑事事件は弁護士マター中心で、事務局で処理することは意外と少ない。それらの分野に特化する当事務所はパラリーガルや事務員を最低限の人数に抑えることができます。少し大げさに言えば弁護士だけの法律事務所。それも、これからのスタイルの一つではないでしょうか」