Vol.43
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PIONEERS

日本の入管行政に国際法、国内法の遵守・尊重を求む。日本で困難に直面している外国人を支え続けたい

駒井 知会

マイルストーン総合法律事務所
弁護士

#27

The One Revolution 新・開拓者たち~ある弁護士の挑戦~

入国管理局の施設には、例年延べ40万人近い外国人が収容され、今日も1000人ほどが収容されている。様々な背景を持って収容される人たちの中には政治思想や宗教・民族などの理由で祖国を追われ、日本に逃れてきた外国人たちも含まれる。しかし、そこで彼らがしばしば非人道的な扱いを受けていることはあまり知られていない。そんな彼らを劣悪な環境下での長期収容から解放し、正式に在留できる支援をしているのが駒井知会弁護士だ。2014年、関東弁護士会連合会「外国人の人権救済委員会」委員長に就任した駒井氏の、難民救済・外国人支援にかける思いとは――。

難民問題に興味を持った原点は、「ベルリンの壁」

私が難民問題に興味を持った最初のきっかけは、小学生時代に遡ります。当時、父が西ドイツのデュッセルドルフ大学で客員教授をしており、家族で西ドイツに暮らしていました。その時、ベルリンの壁を見に行ったのですが、壁の近くにいくつもの十字架が。父に聞くと、東ドイツから壁を乗り越え亡命しようとしたけど、失敗して撃ち殺された人たちの墓標ということでした。それが子ども心にすごくショックで……。その時に強い衝撃を受けてから、難民問題にかかわりたいという気持ちが芽生え、東京大学と同大学院、さらにオックスフォード大学で国際難民法を研究することに。

その後、大学で難民問題を研究するか、国連機関で難民支援に取り組もうかと思ったのですが、日本における難民認定申請者の過酷な状況を知るにつけ、日本で困っている方々を直接支援したいと思うようになりましたそれでもう1年、ロンドン大学(LSE)で法学を学び帰国。2007年に弁護士資格を取得し、横浜の小長井雅晴法律事務所に入所したのです。

初めて知った入管収容の実態に衝撃を受ける

小長井雅晴法律事務所では、民事・家事・刑事事件と並行して、難民案件や、やむを得ない事情による非正規滞在者の入管関連訴訟などに取り組んできました。

茨城県牛久市にある東日本入国管理センターをはじめとする入管収容施設にも何度も通いました。そこには、様々な事情で法的な手続きを踏まずに入国したり、超過滞在になってから難民認定申請をしている方々も多数収容されているのですが、病気になってもすぐに医師に診察してもらえないことも多く、外部との接触・連絡も極端に制限され、時に極めて非人道的な扱いを受けていることがわかりました。刑務所なら刑期がありますが、入管からはいつ出してもらえるかもわかりません。強度の身体的・精神的ストレスにさらされるなかで心身を病む被収容者や、最悪のケースとして亡くなる方も少なくありません。

彼らも私たちも同じ人間です。必要性が認められない収容をしたり、いたずらに強制送還するのではなく、その人固有のやむを得ない事情を正当に斟酌するべきだというのが私たちの主張です。

祖国での過酷な環境から逃れてきた方々が、見知らぬ異国にあって、時に外気も吸えず空も見られない部屋に何人もの人と一緒に長時間閉じ込められ、いつ解放されるともわからない状況は、まさに真っ暗闇の中に放り出されたようなもの。私が面会に行き、「支援します」と言っただけで泣き出す方もいます。「昨日まで私たちに弁護士はいなかったけど今日からはいる。ありがとうございます」とご家族に感謝されたこともあります。

以前、長い時間をかけて在留特別許可を勝ち取ったある難民認定申請者の方は「収容されていた時、駒井の一言が私の命を救ってくれた」と言ってくれたそうです。こういう言葉をいただけるととても嬉しいし、もっと頑張ろうという強い思いも湧き上がってきます。

彼らは、「いわれない逮捕・脅迫・暴行を受けて逃げてきた」「家族を目の前で殺された」など、壮絶な経験をしています。にもかかわらず、つらさや悲しみを乗り越えて、今を一所懸命生きている。穏やかな環境で過ごしてきた私とは、人間としての幅や厚みが違うんですね。そんな彼らから学ぶことはあまりにも多い。このような経験をさせてもらっている、私の方こそありがたいと思います。

被収容者の処遇改善と長期収容からの解放は、今や難民支援と並んで私のライフワークです。日本の難民認定の実態や入管被収容者の処遇は国際標準からかけ離れすぎているので、海外と同じレベルになるまで頑張りたい。今後も、一人でも多くの依頼者と一緒に歩いていきたいと思っています。

敬意を持って依頼者に寄り添う

依頼者が人生でもしかしたら一番困っている、弱っている時に、人として敬意を持って寄り添うことが弁護士として一番重要な資質で、それができないのなら、少なくとも難民・入管案件を手がける資格はないと思っています。正直いって楽なことばかりではありません。依頼者の話を聞いて、この人は明日からどうやって生きていくのだろうと考え、涙することもたびたびですし、とにかく「生きてください、死なないでください」と一所懸命伝えなければならないこともあります。

そんなつらさもありますが、その分、やってよかったとやりがいを感じることもたくさん。厳しい人生を生きてきた人たちと交流できることはとてつもなく大きな人生経験になり、自分自身も成長できます。この分野の弁護士は横の連携が強く、とても仲がいいので、若い弁護士たちにもどんどん、私たちの輪の中に入ってきてほしいと願っています。